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米ナスダックが上場企業に女性やLGBTQ、人種的マイノリティの役員の登用を義務づける新規則を策定

 米国の証券取引所ナスダックは12月1日、上場企業に対し、少なくとも1人の女性と、1人の人種的マイノリティもしくは性的マイノリティの人物を役員に任命し、報告書を公表することを義務づけるという新規則を策定し、SEC(米証券取引委員会)に承認を要請したと発表しました。白人シスジェンダー異性愛男性で占められがちな上場企業の取締役会の多様性を向上させることが目的で、ナスダックは「社会的な正義を求める運動を通じて、企業の活動にも注目が集まっている。投資家などに対しても重要だ」としています。

 
 規則案によると、上場企業は規則の承認から1年以内に、役員メンバーのダイバーシティ・レポートの開示を求められます。そして2年以内に、少なくとも1人の人種的マイノリティもしくはLGBTQの取締役を持つことが義務づけられます。さらに、大企業の場合は4年以内に少なくとも1人の女性と、1人の人種的マイノリティもしくは性的マイノリティの人物の最低2人を取締役に起用することが必須となります(日本を含む外国企業の場合、女性2人の登用となるそうです)。データを公表しない、多様性の要件を満たしていない理由を説明できない企業は、ナスダックから排除される(上場廃止となる)可能性があります。

 ナスダックのアデナ・フリードマンCEOは『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材に、SECがこれと類似した規則を導入することが望ましいと述べました。フリードマン氏によると、今回の決定は、取締役会の多様性を高めることが企業の財務パフォーマンスにプラスの影響を与えることを示すデータに基づいたものだといいます。
 マッキンゼーの最新調査によると、ジェンダーの多様性で上位4分の1に位置する企業は、財務パフォーマンスが少なくとも25%高い傾向が2019年に確認されたといいます。さらに、人種的多様性で上位4分の1に位置する企業は、同じ指標が36%高い傾向があったそうです。

 投資銀行のゴールドマン・サックスは今年1月、取締役会が人種や性別、SOGIの多様性に欠ける企業会社とは取引しないと表明しました。同社のデービッド・ソロモンCEOは、取締役会の多様性は極めて重要で、上場企業のうち取締役に女性を1人以上起用している企業は、そうでない企業よりも業績が著しく向上していると述べています。
 
 カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月30日、企業のダイバーシティ推進の一環として、2021年末までに、上場企業に少なくとも1名の人種的マイノリティやLGBTQの人物を取締役に採用することを義務づける法案に署名しました。
 
 米国では1960年代から、公民権運動と関連し、人種的マイノリティや女性、障がい者などに対して雇用や高等教育の機会を一定数保障するような「アファーマティブ・アクション」が実施されてきましたが、そこにLGBTQ(性的マイノリティ)も含められるようになり、ついに上場企業の役員というところにまで到達したと見ることもできるでしょう。NHKの記事でも言及されているように、今年、Black Lives Matterムーブメントが大きなうねりを見せたことも今回の新規則策定に影響していると見られます。
 今後も人種、ジェンダー、SOGIによる雇用差別をなくす平等のアクションとともに、こうした「ガラスの天井」を打ち破るような施策が進められていくことでしょう。この波は遅かれ早かれ日本にも到達し、取締役が日本人シスジェンダー異性愛男性ばかりで占められる企業に対し、ジェンダーやSOGIの多様性を求める動きが出てくるのではないでしょうか。
 
 なお、ナスダックは今年のプライドマンスに開催されたプライドイベントの中でも最大のものの一つである『Stonewall day』にメインスポンサーとして協賛しています。
 

 
参考記事:
上場企業に女性やマイノリティーの登用義務化へ 米ナスダック(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201202/k10012741801000.html
女性の取締役起用義務付け 企業経営の多様性推進―米ナスダック(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020120200321
米ナスダック、上場企業に女性やLGBTQの役員登用を義務化へ(Forbes Japan)
https://forbesjapan.com/articles/detail/38496

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