事例紹介

vol.5 エス・エー・エス

記事日付:2018/07/24


金融・流通・クレジット分野のシステム構築を基盤としたソリューションや、勤怠・給与のクラウド・サービスを提供しているエス・エー・エス株式会社さんでは、採用現場でLGBTアライ(LGBTなどの性的マイノリティを理解し支援する人)を表明することで、採用難となっているSEの採用に成功されています。
インタビューでは具体的にどのように表明しているのか、応募者からの反応は、など、管理本部 企画・管理部 ダイバーシティ&インクルージョン推進リーダーの小野寺むつきさんにお伺いしました。


目次
・「全メンバー」にLGBTの方も含まれていることを想定していただろうか?
・LGBTに関して正しい知識を得てもらうことで理解が広がってきた。
・入社の決め手はLGBTアライであろうとする企業姿勢
・LGBTアライを表明することは採用面でもプラスになる
・今後について



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●「全メンバー」にLGBTの方も含まれていることを想定していただろうか?

-LGBTに関する取り組みを始めようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

弊社は時差Biz(東京都が行う働き方改革のひとつで、通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす活動 https://jisa-biz.tokyo/)に参加しているのですが、そのイベントで知り合った企業の方にアウト・ジャパンさんのイベント(LGBT-Allyサミット)に誘って頂き参加したことがきっかけです。

初めてLGBTについて詳しく知ったので、いろいろと驚くことが多かったです。例えば、職場でセクシュアリティをオープンにしていないことで様々なストレスを感じて、それが原因で本来の理由を伝えないまま退職してしまう人もいること、国によっては同性愛が死刑になることなどです。同じ人間なのにどうして…と思いました。 

弊社の企業理念の中には、「SAS全メンバーの生活水準の向上を図る」という言葉があります。この理念に基づいて、ワークライフバランスの向上も進めているのですが、「全メンバー」の中にLGBTの方も当然、含まれている事を想定していたかな?と考えました。例えば弊社では社内イベントも活発で、家族や恋人を連れてくるのも自由なのですが、もしかしたら「同性のパートナーを連れていきたいけれど無理だろうな…」と考えている人がいるかもしれないと思いました。

そこでまずは自分の管轄業務である新卒採用や労務に関わるところからLGBTの方への配慮をしていく事にしました。採用に関しては特にSEの採用が厳しい状況です。弊社ではワークライフバランスに取り組んでいることをアピールポイントのひとつとしているのですが、同じような企業はたくさんあります。ですがLGBTアライを表明している企業はまだ少ないので、表明することで他社との差別化にもなるのではと考えました。 


●LGBTに関して正しい知識を得てもらうことで理解が広がってきた。

―LGBTに関する取り組みを始めることに対して、社内の反応はどうでしたか?

最初に話をしたときは、ノーではないですが優先的に進めるべきかという意見は出ました。ただ、弊社は以前からSDGsに積極的に取り組んでいこうという考えを持っており、SDGsの中に「ジェンダーの平等」も含まれているので、社長や役員を「LGBTについても勉強しましょう!」とLGBT関連のセミナーやイベントに誘って参加してもらいました。正しい知識を持ってもらったことで、理解が得られたと思います。
最近では全体会議の際に、社長自ら「LGBTに関する取り組みも大切」といった話もしてくださり、取り組みがより進めやすくなりました。 

▼SDGsの17の目標のうちのひとつ、「ジェンダーの平等」のアイコン。

国際連合広報センターより
http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/ 


●入社の決め手はLGBTアライであろうとする企業姿勢

-採用の現場でLGBTアライを表明しているとお伺いしましたが、どのようなことをされているのでしょうか?

「合同企業説明会などでレインボーフラッグを置く」、「レインボーのバッジを身に着ける」、「アンケートの性別欄に『その他』を加える」、「就活サイトでLGBTアライであることを明記する(マイナビの会社情報ページに「ジェンダーレス等の人権課題に正面から向き合い、LGBT-ALLYの活動を着手してダイバーシティ&インクルージョンを推進。」と記載。参照:https://job.mynavi.jp/19/pc/search/corp81963/outline.html)」、などです。
学内合同企業説明会に出展した際にもレインボーフラッグを置いていたのですが、置いていなかった昨年と比較すると学生の接触数が増えたように感じます。 

19卒採用の内々定者のうちの一人が「このような取り組みをしている企業は素敵」と言って入社を決めてくれました。とても優秀な方で、LGBT当事者ではないのですが、大学でSDGsについて勉強していてLGBTについても知識があったそうです。複数内々定を持っていましたが、弊社を選んでくれました。アンケートの性別欄に「その他」が入っていることに対して「感動した」とも言っていました。
他にも同じようなことを言ってくれる学生がいて、LGBTアライであることは採用面にもよい効果があると実感しています。 

▼学内合同企業説明会での様子(机にレインボーフラッグを設置)

▼会社説明会で使用しているアンケート(性別欄の選択肢に「その他」を追加している)


●LGBTアライを表明することは採用面でもプラスになる

-LGBTについてまだよく知らない社員がいる状態でアライ企業と表明する事で、逆に企業イメージを損なうのではないか?と不安を感じる企業も多いのですが、御社の場合はいかがでしたか?

社内全員が理解しているかというとまだそうではないかもしれません。ですが、徐々に理解してもらえればと思っているので私自身はアライを表明することに不安はなかったです。
学生対応を行う社員には事前に説明はしました。アンケートの性別欄に「その他」があることに質問があった場合は、「男女で表せない方のための選択肢と伝えてください」などです。学生に対しては、弊社の現状をきちんと話し、これからアライの取り組みを一緒に進めていきたいと伝えています。

―実際に学生からLGBTに関する質問はありましたか?

19卒採用ではこれまで150名以上の方とお会いしていますが、LGBTに関する質問はなく、自分からLGBTについて話を切り出してきた学生も1、2名でした。レインボーフラッグの意味を知っている学生も思っていたほど多くはなかったですが、説明するとほとんどの学生が「素敵ですね」とか「いい取り組みですね」といったポジティブな反応でした。
アライを表明することでのマイナスはなく、採用面ではプラスになることの方が多いと感じています。


●今後について

-最後に今後についてお伺いできますか?

LGBT当事者の方が働きやすい職場にするためにはLGBTアライを増やすことが重要だと思います。そのためにも社員が正しい知識を学べる場を設けたいと思っていますが、まずは自分ができることからと思い、デスクに「LGBT読本」やレインボーフラッグを置いたり、レインボーのバッジを身に着けるなどしています。そうすると「これって何ですか?」と聞いてくれる人もいて、徐々にアライが増えてきています。できることから少しずつですが、今後も取り組みを続けていきたいと思います。

-ありがとうございました!

▼小野寺さんのデスク。「LGBT読本」やレインボーフラッグを置いているそう。

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