事例紹介

vol.4 ソフトバンク

記事日付:2018/07/17


以前から同性パートナーも携帯電話の家族割の対象としているソフトバンクさん。レインボーリール東京には2011年より6年連続で協賛されています。社内施策としても、同性パートナーを配偶者として認定し社内制度を適用、セミナーの実施、コミュニティ活動など、様々な取り組みをされています。
今回は社内施策に関して詳しい内容や進める上での工夫などを、人事本部 戦略企画統括部 人事企画部 労務厚生企画課 課長の石田恵一さんにお伺いしました。 


目次.
ソフトバンクのこれまでの取り組み
LGBT施策のきっかけは「LGBT当事者の声」を直接聞いたこと
LGBT施策の最初の一歩は管理部門向けのセミナー
同性パートナーに関する制度について
eラーニング教材は漫画を取り入れて読みやすく
職場内アライを増やし、理解・受容の文化醸成のためのコミュニティ活動
東京レインボープライドでのパネル展示・パレード参加・店舗装飾
社外に取り組みを発信する目的・効果
LGBT施策に対する社内の反応は?



無料セミナーも実施中
企業のLGBTの取組み内容などを紹介し、導入する際に気を付ける際にポイントなどを紹介するセミナーなどを開催中
セミナー日程や内容などはこちらから確認ください。



ソフトバンクのこれまでの取り組み

•制度構築

規程改定(同性パートナー・差別禁止)
⇒2016年10月に同性パートナーを配偶者として認定し、社内制度を適用開始
https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20161003_01/
⇒2017年1月にLGBTなどの性的少数者への差別ならびにハラスメント禁止を社内規程に追加
https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20161227_03/) 

•支援体制整備
管理部門向けセミナー(2017年1月に開催)
LGBT支援ポータル設置(掲載内容:会社の取組み、eラーニング、社内コミュニティ、多機能トイレ情報、相談窓口) 

•職場理解・啓蒙
eラーニング(2017年8月に実施。社員の約90%にあたる約16,000人が受講。2018年も実施予定)
コミュニティ(2017年4月に発足)
全社向けセッション(2017年7月実施。LGBT当事者が登壇。社内の様々な部署より数十名の社員が参加し意見交換を行った)
その他啓蒙活動(新任管理職研修、ホームページへの取り組み掲載、キャリアオリエンテーション、社内イントラでのLGBTに関する情報発信、PRIDE指標ゴールド受賞)
社外イベントへの協賛・参加(レインボーリール東京は6年連続協賛中、東京レインボープライドでのパレード参加・パネル展示・店舗装飾)


LGBT施策のきっかけは「LGBT当事者の声」を直接聞いたこと
-御社では社外向けには同性パートナーも携帯電話の家族割の対象とされていますが、社内施策を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

当社は、多様な人材がより力を発揮できる環境を整えることを目的として、ダイバーシティの取組みをおこなっています。LGBTの方に関する施策も、ダイバーシティの取り組みの一環として始めました。私がこの施策に携わったきっかけは、ピアサポーター※向けのセミナーに人事として参加したことです。
私が参加した回ではLGBTをテーマにしており、LGBT当事者の方3名がご自身のライフヒストリーをお話してくださいました。LGBTという言葉について知ってはいたのですが、生活する上での悩みや困っていることなどを当事者の方から直接聞くのは初めてでした。お話の中で「自分は生きていてはいけないのではないかと考えていた」といった話をされている方もおり、そんなつらい思いをされているのかと衝撃を受けました。
ソフトバンクでは社外向けには、同性パートナーの方を家族割の対象にしていますし、社内施策ももっと取り組む必要があるのではないかと考えました。
弊社はこれまで様々な企業と合併・統合を行うことで企業文化を融合し、シナジー効果によって成長してきました。そのため社員の出身構成は様々で、多様性を尊重する企業文化があります。人事ポリシーにも『「挑戦する人」にチャンスを』という言葉があり、誰もが挑戦できる環境を整えるというのが人事のミッションのひとつです。LGBTの方の支援も人事ポリシーを実現するための取り組みのひとつだと考えています。

※ピアサポーター
産業カウンセラーや安全衛生に関する資格をもつ社員が、一定の選考とトレーニングを経た上で、ボランティアで職場での声掛けや相談対応を行う制度。ソフトバンクでは、職場内の身近な「ピアサポーター」に相談できるようにすることで、体と心のトラブルの早期発見やより働きやすい職場環境づくりを図っている。 


LGBT施策の最初の一歩は管理部門向けのセミナー
-LGBTに関する社内施策の最初の一歩は何だったのでしょうか? 

まずは人事が正しく理解することが必要だと考え、管理部門向けセミナーを実施しました。
セミナーではFTMトランスジェンダーの当事者である杉山文野さんにお話をして頂いたのですが、会社、人事として取り組むべき事柄はもちろん、参加者の理解をより深めるために過去に苦労されたことなども説明していただきました。やはり当事者の生の声を直接聞くというのは胸に響くものがあります。頭で理解するだけでなく、感情面でも理解してもらえるようにと考えました。このセミナーを機に管理部門でのLGBTの理解が進み、社内施策を進めやすくなりました。 

▼管理部門向けのセミナー


同性パートナーに関する制度について
-同性パートナーに関する制度の導入を検討する中で、事実婚を含めるかどうか悩まれている企業も多いのですが、御社の場合はどうでしたか?

同性パートナーの制度適用を認めるにあたって、事実婚も同様に制度適用が必要、という考え方で整理をおこないました。実態を踏まえて配偶者認定をしようとした場合、同性パートナーは制度適用を認めるが事実婚は認めないということに違和感があると考えたためです。 

⇒2016年10月に同性パートナーを配偶者として認定し、社内制度を適用開始
https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20161003_01/ 

-同性パートナーの申請要件はどのようにされていますか?

自治体が発行するパートナーシップ証明書、戸籍+同一世帯の住民票(3年以上)、公正証書のいずれかの提出を求めています。事実婚の場合も戸籍+同一世帯の住民票(3年以上)の提出を求めているので、合わせてこの要件にしています。
いったんこの申請要件でスタートし、運営する中で必要に応じて随時見直しをすることにしています。 

-制度の導入が先か、理解・受容の文化醸成が先か、で迷う企業も多いのですが、御社の場合はどうでしたか?

弊社の場合は同時並行です。制度を導入しても、文化醸成ができていなければ制度を利用する社員はいないのでは?という意見もあると思うのですが、制度を導入することが社員へのメッセージになりますし、文化醸成には明確なゴールはないので、同時に進めていくことにしました。
これに関してはどちらが正解というわけでもないですし、企業の考え方次第だと思います。

-制度導入に関して反対意見などはありましたか?

反対意見はありませんでした。社会的な要請であることと、先ほどご説明した通り、もともと多様性を尊重する企業文化があることが理由かもしれません。こちらは人事がリーダーシップを取って進めることができました。
導入にあたり労働組合とも話しましたが、社員のためになることなのであれば、と賛成して頂きました。 


eラーニング教材は漫画を取り入れて読みやすく
-eラーニングはどのように実施されたのでしょうか? 

2017年8月に1回目のeラーニングを実施し、社員の約90%にあたる約16,000人が受講しました。 2018年8月にも実施を予定しており、継続的に行っていく予定です。
内容としては、全社員対象のeラーニングなので、5~10分程度で読めるように基礎知識をまとめ、漫画を取り入れて読みやすくしました。社内に漫画を描ける社員がいるので、お願いして描いてもらいました。

▼eラーニングの一部

-eラーニングを実施する上でどんなことに工夫されましたか?

社内向けには、ハラスメント防止の教材としてマタハラ、パタハラと併せて実施したことです。
マタハラ、パタハラに関しては、2017年1月に男女雇用機会均等法および育児・介護休業法が改正され、職場での妊娠・出産・育児休業等を理由とした嫌がらせを防止するために必要な措置を講じることが義務づけられました。同じく2017年1月にセクハラ指針も改正され、LGBTなどの性的少数者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントもセクハラの対象となる旨が明確化されました。
ちょうど法改正の時期が同じだったこともあり、マタハラ、パタハラとLGBTに対するセクハラをeラーニングの研修として同時に実施しました。

-LGBT施策を行うことに対して社内理解を得られにくいといった悩みを持つ企業も多いのですが、御社のような工夫は参考になりそうですね。

そうですね、企業によって社風も違うと思いますし、その時々の状況によって、進め方に工夫が必要だと思います。


職場内アライを増やし、理解・受容の文化醸成のためのコミュニティ活動
-コミュニティではどのような活動をされているのでしょうか?

「職場内アライを増やし、理解・受容の文化醸成」を進めるために、会社と社員の両輪で活動していこうと考え、社員のコミュニティ「カラフル・プロジェクト(LGBTとアライの会)」を2017年4月に立ち上げました。
まずは人事からピアサポーターに声をかけてメンバーを集め、発足時は人事主導で活動していました。現在はピアサポーターにリーダーを務めてもらって活動しています。
現在は、ランチの時間を利用し、月に1回程度のミーティングをして活動について話し合いをしています。
ミーティングで話し合った内容を元に、社内イントラのコミュニティページの更新やメルマガの配信、LGBT施策を行う他社に話を聞きに行くなどの活動を行っています。
今年の東京レインボープライドのパレードも、コミュニティメンバーが中心となって参加しました。 

▼LGBT支援のシンボルとなるステッカーも作成


東京レインボープライドでのパネル展示・パレード参加・店舗装飾
-2018年5月に開催された東京レインボープライドでは、アウト・ジャパンブースでのパネル展示、パレードへの参加、店舗の装飾などをされていましたが、社内の反応はどうでしたか?

店舗の装飾依頼にも積極的に応じてくれてパレード当日はスタッフが店頭でレインボーフラッグを持って応援してくれていました。社内で参加者を募集したのですが、パレードには約30名が参加してくれまして、とても盛り上がりました。
後日社内イントラに東京レインボープライドに関する投稿をしたのですが、それに対する反応もとてもよかったです。 

▼LGBTに関する取り組み内容を紹介するパネル展示

▼パレードに参加
 

▼表参道店の装飾
 


社外に取り組みを発信する目的・効果
-御社では社外への発信も積極的にされていらっしゃいますよね。

はい、広報と連携して積極的に発信するようにしています。
私としては社外にも情報発信をしていった方がいいと考えています。企業がこういった取組みを発信していくことで世の中の流れを作っていけると思いますし、社員に対しても、人事から言われること以上に、社外発信を見た家族や友人から何か言われたことの方が刺さると思うんです。だからこそ広報との連携は重要だと思いますし、弊社のLGBT施策がスムーズに進んでいるのは広報など他部署との連携をうまく行えていることが大きいと思います。


LGBT施策に対する社内の反応は?
-LGBT施策に対して、社内からはどのような反応がありましたか?

セミナーや社内イントラの投稿などの反応はよく、ポジティブに捉えてくれている社員が多いと思います。
取り組みを進める中でカミングアウトしてくれた社員もいました。たまたま社内イントラでLGBT関連の記事が3つ並んだことがあったのですが、それを見て会社の変化を感じカミングアウトを決意したそうです。その社員は、『「そういう人がいる」と 知ってもらえることは良いことで、 取り組みは非常にポジティブに捉えている』と言ってくれています。
カミングアウトしてくれたことでLGBT当事者と連携して社内施策を進められるようになりました。 

ネガティブな意見もないことはないのですが、2万人近い社員がいるのでいろんな意見が出てくるのは当たり前のことだと思います。
社員全員がLGBTについて理解するというのは個人の価値観の問題も関わってくるので難しいかもしれません。どうしても理解できないという人もいるかもしれませんが、個人的にはそうであっても、仕事をする上で守らなければいけないことはしっかり理解してもらうようにしたいと思っています。 

-ありがとうございました! 

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