お問い合わせ

LGBT関連ニュース

性同一性障害特例法制定から15年間で、性別変更を受けた方が1万人近くに上ったことが明らかになりました

記事日付:2021/01/05

 2004年に施行された性同一性障害特例法に基づき戸籍上の性別を変更した方が、2019年までの15年間で計9625人に上ることが明らかになりました。年間の件数は年々増加しており、もうすぐ1万人に達する勢いです。

 司法統計の2004~2019年の各年報によると、2004年7月16日に施行された性同一性障害特例法に基づき、同年に性別変更が認められたのは97人でしたが、年々増え続け、2010年に初めて500人超に達し、2017年は903人に、2019年は過去最多の948人に上りました。2020年はコロナ禍の影響で性別適合手術の延期が相次いだため、数は減ると見込まれます。


 国内で性別変更するためには現状、二人以上の医師から性同一性障害との診断を受けたうえで、性同一性障害特例法で課された「20歳以上であること」「結婚していないこと」「未成年の子がいないこと」「性別適合手術を受けること」という要件をクリアしなければいけません。この要件を緩和するよう求める声が特例法制定当初から上がっており、近年、多方面で動きがありました。
 2016年には、超党派の国会議員連盟(LGBT議連)が「手術要件」の撤廃を含む特例法改正の検討を始めました。
 しかし、2019年1月には、最高裁が、不妊手術を必須と定める法律の違憲性を問う訴えに対して「現時点では合憲」と判断しました(「憲法違反の疑いが生じていることは否定できない」という補足意見もつきました。詳細はこちら
 同年3月、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」が、性別変更を望む人に断種を強要する現行法を早急に改正すべきだと訴える声明を発表しました。
 2020年、日本学術会議が「性同一性障害特例法」の廃止と「性別記載変更法」の制定を提言しました。
 同年、トランスジェンダーのドキュメンタリー映画『I Am Here』が公開され、「手術要件」を高い壁と感じている当事者の声がリアルに描かれました。
 2021年夏、浜松市でLGBTQ団体を運営しているトランス男性の鈴木さん(46歳)が、身体に負担をかける手術をせずに戸籍上の性別を変えたい(女性のパートナーと結婚したい)として性別変更を静岡家裁浜松支部に申し立てる予定です。もし認められれば、「手術要件」の緩和に向けた大きな足がかりとなります。認められなかった場合は高裁や最高裁まで争う意向です(詳細はこちら
 GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授(生殖医学)も「選択肢として、手術をしなくても性別を変えられるのが望ましい」と述べています。

 国際社会では、アメリカ精神医学会およびWHO(世界保健機関)が「性同一性障害」を精神疾患の分類から外し、トランスジェンダーの性別違和は病気や障害ではないと宣言しています。以前は「性同一性障害」と精神科医が診断したら、ホルモン治療や性別適合手術を受け、性別変更へ、という「病理モデル」に基づいていましたが、すでに「人権モデル」へと移行しています。
 2012年、世界で初めてアルゼンチンで医師や裁判所の同意なしに性別変更できるようになりました。
 2014年、WHOは、人を機能障害にしてしまうおそれのある手術に反対し、手術なしで性別変更を許可するよう、各国政府に呼びかけました。
 2017年、EUの欧州人権裁判所は断種を強要する手術は人権侵害であると判断し、欧州議会でも性別違和を抱える人が手術を受けなくても性別変更できる権利を認める決議をしています。
 2021年現在、欧米の多くの国で、性別適合手術を受けなくてもID上の性別を変更することが認められています。
 
 「性同一性障害」を精神疾患の分類から外すWHOの国際疾病分類(ICD)の最新版は、2022年1月から効力が発します。日本の精神科医は、精神保健福祉法に基いて、日常診療で記載する公文書での病名記載欄にはICDの分類(またはアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」)による病名を記載することになっていますが、2022年1月からは「性同一性障害」と記載することができなくなるはずです(ICDもDSMも「性同一性障害」を外したため)。病理モデルに基づく「性同一性障害特例法」を早急に見直し、「性別記載変更法」のような、欧米型の人権モデルに基づく新法の制定を検討すべき時に来ているのではないでしょうか。
 
 
 

参考記事:
性別の変更、1万人突破目前 特例法15年、増加続く(共同通信)
https://www.47news.jp/5676844.html
手術せずに性別変更を 浜松の鈴木さんが家裁申し立て準備(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/178984

よく見られている情報