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トランスジェンダー映画『I Am Here』が東京ドキュメンタリー映画祭短編部門グランプリを受賞

 12月11日、東京ドキュメンタリー映画祭2020の受賞作品が発表され、トランスジェンダーのドキュメンタリー映画『I Am Here』が短編部門でグランプリに輝きました。


 日本のトランスジェンダーのリアリティを伝えるドキュメンタリー映画が上映中のニュースでもご紹介していましたが、『I Am Here ─私たちはともに生きている─』は、『金八先生』のトランス男子生徒のモデルとなった虎井まさ衛さんというレジェンドをはじめ17人のトランスジェンダーの方たちが、それぞれの過去や悩み、希望を語り、当事者の抱える問題を浮き彫りにするドキュメンタリー映画です。みんなが性別適合手術の費用を稼げるようにとショーパブを切り盛りしてきた方から研究者の方まで、ひとくちにトランスジェンダーと言っても十人十色で、その実存や、経験の質、思い、生き様はみんなそれぞれ違っているということが、生き生きと伝わってきます。そして、2004年の性同一性障害特例法施行の際、子どもがいると性別を変えられないなどの厳しい要件ゆえに、それによって救われる方と制度を利用できずに苦しむ方が出てきて、コミュニティが分断された(なかには自ら命を絶った人もいた)という過去の悲劇や、現在となっては国際社会で性同一性障害という疾病の概念がなくなってしまい(来年、WHOの国際疾病分類が更新されます)、もう精神科医が性同一性障害障害という診断をすることができなくなるが…といった様々な問題も描かれます。日本のトランスジェンダーコミュニティの姿をありのままに映し出したということの意義は計り知れません。
 
 東京ドキュメンタリー映画祭は今年、過去最高となる150本以上の応募があり、長編10本、短編30本が新宿K'Sシネマで上映され、長編・短編それぞれにグランプリ、準グランプリ、観客賞などが選ばれるようになっていましたが、『I Am Here』が見事、短編部門でグランプリに輝いたのでした。
 それはひとえに、この作品が、これまで日本ではほとんど作られてこなかったトランスジェンダーの実像を浮き彫りにするドキュメンタリーとして人々に大きなインパクトを与え、サポーティブな気持ちを喚起した、その意義が評価されたということではないでしょうか。
 日本では(橋口亮輔監督の作品を除けば)LGBTQコミュニティから生まれた映画がこのように賞を受賞するということはほとんどなく、おそらく初めてです。そういう意味でも、たいへん価値ある受賞と言えそうです。



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