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LGBT関連ニュース

三重県でアウティング禁止条例の検討がスタートした一方、他の都道府県ではアウティング禁止の明文化を検討していないことが明らかに

記事日付:2020/09/03

 三重県がアウティングの禁止などを含むLGBT差別禁止条例の制定を目指すとのニュースをお伝えしていましたが、8月、都道府県で初めてアウティング禁止を条例に盛り込むため、有識者検討会議が立ち上げられたそうです。
 5日の初会合では、集まった有識者や支援者から「性的指向はデリケートな問題。言ってはいけないとの一般認識が必要だ」「罰則は時期尚早だが、アウティングの防止に向け行政は支援すべきだ」などの意見が上がりました。
 県の担当者は「LGBTに対する社会的関心は高まり、条例を作ることで社会全体の取組みを後押しできる」と意義を強調します。条例にはカミングアウトの強制の禁止なども盛り込む方針です。2021年2月に条例案を県議会に提出し、年度内の制定を目指しているそうです。
 

 2016年、ゲイであることを同級生に暴露された後、差別を受ける不安から心身に変調をきたし、学校の相談室に相談するも性同一性障害のパンフレットを渡されるなど理解ある支援を受けられず、最終的に校舎から転落して自死した一橋大法科大学院の男子学生の両親が大学に損害賠償を求めて訴えを起こしたことから、第三者にSOGIを本人の同意なく暴露するアウティングが社会問題となりました。
 一橋大学がある国立市は2018年、日本で初めてアウティングの禁止を盛り込んだ新条例を制定しています。

 2019年には、LGBT電話相談に寄せられたアウティング被害件数が110件を超えていることが明らかになり、その深刻さが浮き彫りになりました。
 また、同年、過去の性別変更を職場でアウティングされたトランス女性が勤務先を提訴しました。

 今年5月には、上司のアウティングでうつ状態に陥ったゲイの方が労災を申請、6月には職場がある豊島区に救済申し立てを行いました。

 長崎新聞の記事によると、2017年3月、佐賀県在住の健崎まひろさんが大学合格を報告するため母校の高校を訪れた際、自身が性的マイノリティであることを秘密にしていたにもかかわらず、複数の教諭がそれを知っていたことに驚きました。2月にトランスジェンダーであることを生徒指導教諭にカミングアウトし、教諭は淡々と「わかった」とだけ答え、(健崎さんが髪を長く伸ばしていたため)卒業式前の頭髪検査は免除されました。その際、健崎さんは「担任と学年主任の教諭以外には他言せず、話が広まらないようにしてほしい」と伝えましたが、約束は守られず、複数の教諭が「秘密」を共有していました。「今までいろいろ大変やったとね」
と、気を遣って声をかけてくれた教諭もいましたが、当時の健崎さんはそれを「優しさ」と受け止められず、驚きと不安ばかりが募ったといいます。「先生たちって、怖い。率直に、そう感じた」「カミングアウトした相手には黙っていてほしいのが本音。学校がリスク管理のため情報共有するのは理解できるが、約束した共有範囲は絶対に守ってほしい」
 長崎県内の公立中に勤務する保健体育科の女性教諭は「生徒からのカミングアウトはうれしい。自分を信じてくれたのだから。だからこそ、軽々しくほかの人には言えない」と語ります。これまで3人の女子生徒からカミングアウトを受けたことがあるそうです。「性の問題に限らず、学校としては生徒から相談されたら全員で共有しようという雰囲気がある。ただし、共有範囲や必要性をきちんと生徒に話して確認する必要があるのでは」。
 
 性的マイノリティについて様々な調査研究を行なってきた宝塚大看護学部の日高庸晴教授は、「学校側の情報共有は必要だが、生徒との合意形成が大前提。黙って情報共有するのはよくない。共有範囲を生徒と話せることが理想的」「勝手に情報共有をしていることが生徒本人に漏れると、学校や教諭との信頼関係の構築が難しくなる。中高生期は初めてカミングアウトする人も多く、教諭側の対応の在り方が生徒の今後に決定的な影響を与える」と述べています。
 

 今年6月から施行されたパワハラ防止法の指針では、SOGIハラやアウティングもパワハラに該当すると明示され、大企業(中小企業も2022年4月から)はSOGIハラやアウティングの防止も義務づけられましたが、職場(民間)以外の領域では上記の国立市のような一部の自治体でしか定められていません。

 共同通信が全国の都道府県に調査したところによると、他に条例でアウティング禁止を明記することを検討している都道府県はなく、三重県のみであることがわかりました。茨城、東京、滋賀の3都県は既存の人権条例で対応可能と回答、また、半数超が啓発推進の意向を示しているそうですが、共同通信の記事で「アウティングは性的少数者の生活を壊す行為とも言われ、その危険性を周知し、差別や偏見を容認しない姿勢を明確に示すためにも条例での明文化が求められる」と述べられているように、今後、国や自治体での法制度の整備が求められます。
 
 

参考記事:
性指向暴露禁止の条例は三重1県 全国調査、危険性に明文化が必要(共同通信)
https://www.47news.jp/news/5195230.html
アウティング禁止条例広がる 性的指向「暴露しないで」(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63095130X20C20A8SHJ000/
「どうして、ほかの先生が」 元生徒 守られなかった性の秘密(長崎新聞)
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=673731967952962657

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