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性的マイノリティの25%がアウティングされた経験を持つことが、調査で明らかになりました

 当事者約1万人を対象にした意識調査で、性的マイノリティの約25%がアウティング(性的指向や性自認を本人の許可なく暴露する行為)をされた経験を持つことが明らかになりました。実施した宝塚大の日高庸晴教授(社会疫学)によると、これほどの規模でアウティング被害について調べたのは初めてです。

 
 この調査は、ライフネット生命保険の委託を受けて昨年9~12月にインターネット上で実施したもので、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーなど、10~70代の性的マイノリティ1万769人が回答しました。
 被害経験があるのは全体の25.1%でした。個別にみると、トランスジェンダー男性で53.6%と最も割合が高く、トランスジェンダー女性が46.3%、レズビアンが34.9%、ゲイが25.5%となっていました。

 アルバイトなど非正規の方も含めた働く人8690人のうち78.9%が「職場や学校で、性的少数者に対する差別的な発言を聞いた経験がある」と回答しました。
 日高教授は「差別的言動が存在するからこそ『アウティングされたら周囲にどう思われるか』という恐怖が増幅する」と指摘しました。
「カミングアウトしていない当事者にとって、生活が崩壊するのではないかと恐怖を感じる行為だ。最悪の場合は自死につながる」 

 一方、66.9%が「5年前に比べて性的指向や性自認の多様性が尊重される世の中になった」と回答しています。
 日高教授は「社会の空気は変わりつつある。個々の生活の場が安心できるものになるよう、周囲の理解を深める取り組みを自治体や企業は組織的に行う必要がある」と語っています。 

 共同通信の記事では、トランスジェンダーの活動家・遠藤まめたさんが挙げた「身近なアウティングの例」が紹介されています。

<学校>
・部活動の同性の先輩に告白したら、学校中に広まった
・教員に打ち明けたら、保護者や他の教員に伝えられた
<職場>
・相談した上司から、同僚に広まった
・人事書類で戸籍上の性別を知った同僚に暴露された
<行政>
・戸籍上の性別が外から分かる形で行政から郵便物が届き、同居人に見られた



 世間にアウティングの問題が認知されるようになったきっかけは、一橋大学アウティング事件裁判です。
 2015年、一橋大法科大学院の男子学生がゲイであることを同級生にアウティングされた後、精神的苦痛からうつ状態に陥り、学内の相談窓口でも性同一性障害のパンフレットを渡されるなど適切なケアが得られず、校舎から転落死するという痛ましい事件が起こり、翌年、遺族が提訴しました(同級生の方とは一審の途中で和解が成立し、裁判は、大学側の対応に絞られています)
 昨年2月の判決では、「大学側は転落死を予見できなかった」「安全配慮義務や教育配慮義務に違反したとは認められない」として遺族の訴えが棄却され、「アウティングが不法行為であるかどうかという判断すらしていない」「学校や職場における当事者の安全に関わる問題だ」など批判が噴出していました(詳細はこちら)。その後、遺族は控訴し、東京高裁で審理が行われていました。
 今年10月7日、大学側が公表していなかった新事実(転落死の後に職員から説明があったと学友が取材で語っていました)が明らかになったことを受けて、遺族側は、学生の死後、大学組織内でどのような情報共有と意思決定がなされ、具体的にどのような行動がとられたかという一連の経緯は、大学側がどのように認識していたかの判断に必要だとして、控訴審の判決期日を取り消し、弁論を再開するよう東京高裁に申し立てましたが、受け入れられず、11月25日に判決が言い渡されることになりました。遺族側代理人の南和行弁護士は取材に対し、「申し立てが通るかは裁判官の裁量で決まる。事件が知られたことで、社会では新しい動きが出てきた一方、情報の開示が十分でなく、大学が事件をどういう風に受け止め、対応しようとしたのかは最後まで分からなかった」と語っています。
 
 一橋大学がある東京都国立市は2018年1月、アウティングの禁止を盛り込んだ新条例を制定しました(詳細はこちら

 2019年には過去の性別変更を職場でアウティングされたトランス女性が勤務先を提訴しています(詳細はこちら
 また、厚労省委託の「よりそいホットライン」LGBT電話相談に寄せられたアウティング被害の件数が110件超に上ることが明らかとなり、その深刻さが浮き彫りになっていました(詳細はこちら
 
 今年6月に施行されたパワハラ防止法の指針では、SOGIハラと並び、アウティングもパワハラの一類型と規定され、企業に防止策を講じることが求められるようになりました(詳細はこちら
 一方、同じ6月には、上司のアウティングでうつ状態に陥ったゲイの方が職場がある豊島区に救済申し立てを行なっています(詳細はこちら
 
 今回、初の1万人規模の調査で、アウティング被害の実態が、より鮮明になりました。
 企業の皆様におかれましては、法的な要請もありますし、社内でSOGIハラ・アウティング防止策を進めていただけるよう、お願いいたします(どのような対策をとればよいのか、についてお悩みの方は、弊社にご相談ください)
 

 
参考記事:
アウティング、25%が経験 性的少数者1万人調査(日経新聞/共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65578940Y0A021C2000000/
「一橋大アウティング事件」控訴審は11月25日判決…遺族側「弁論再開」の申し立て認められず(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_18/n_11819/


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