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同性パートナーシップ証明制度が始まってから5年が経ちました

 2015年11月5日に渋谷区と世田谷区で同性パートナーシップ証明制度がスタートしてから5年が経ちました。ちょうど5周年にあたる日、(それを意識してのことか、偶然かわかりませんが)群馬県が県として同性パートナーシップ証明制度の導入を発表しましたが、制度はすでに全国64もの自治体に広がり、同性カップルがパートナーシップ証明を受けられる自治体の人口の合計(カバー率)は全人口の30%を超え、証明書を受け取ったカップルは9月末時点で1300組を超えました。来月にはいよいよ、東北で初めて、青森県弘前市でも導入されます。

 
 世田谷区では、5周年を記念したパネル展「世田谷区パートナーシップ宣誓5年間の歩みとここで暮らす私たち」展が11月13日まで開催されています。「この街に住んでいる性的マイノリティのことを知ってほしい」との思いで、区と当事者団体「世田谷DPR」とが共同で開催しているものです。
 東京新聞の記事によると、手をつないで歩く女性カップルや、笑顔で互いを見る男性カップル。結婚式での一枚や、つないだ手、後ろ姿の写真もあります。「いつか婚姻届を提出しおばあちゃん二人で年を重ねたい」「この街で生きていこうと二人で引っ越してきました」といったメッセージが添えられた18組の姿が並びます。
 パートナーとの写真を展示したゲイの会社経営者の方は、フランスで同性婚をしており、「日本では独身になってしまう。パートナーシップを足掛かりに国内でも結婚できるようになってほしい」と語りました。

世田谷区パートナーシップ宣誓5年間の歩みとここで暮らす私たち
日程:10月31日〜11月13日
時間:8時半〜17時(日曜・祝日を除く)
会場:世田谷区役所第3庁舎1階「くみん窓口」待合スペース壁面


 NHKでは、5周年を記念した特集が組まれました。
 世田谷区で最初にパートナーシップ証明を受けたモンキー高野さんと高島由美子さんらの同性カップルや、有識者のお話を聞き、「制度の広がりとともに生活の環境が改善する面もある一方、法律上は「家族」ではなく、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、生活する上での不安も大きくなっています」としています。
 高野さんは、公的にパートナーと認められたことで、それまで関係を反対していたお母様からも応援してもらえるようになったと語っています(よかったですね)。一方、マンションが高野さん名義になっているため、もしものことがあった場合、高島さんが相続人になれず、住み続けられる保証はないといいます。「5年前、『結婚おめでとう』というみんなの祝福にとまどいました。私たちの関係は、同性カップルの権利が認められるうえでの第一歩ではあるかもしれないけれど、結婚とは違うんです」
 松岡宗嗣さんは、パートナーの方が家族や職場の人にカミングアウトしているわけではないため、パートナーシップ証明を受けるのはまだ早いと考えているそうです。「外で手をつなぐことはまだできない。パートナーシップ制度ができた今も、家探しで差別されたり、街で笑われたりすることはあり、まだ差別や偏見は残っていると感じます」
 春日部市議の差別発言についても取り上げられましたが、性的マイノリティの問題に詳しい早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は、「30年ほど研究している身からすれば、こうした発言が問題視されるようになったことが大きな変化なんです。当事者の人たちが声を上げるようになったことが大きいと思います」と語っています。また、同性婚をめぐる動きなどに触れて棚村教授は、「渋谷区や世田谷区がパートナーシップ制度を導入したことは大きなインパクト、意義があります。5年で瞬く間に全国に制度が広がったんですから。性的マイノリティへの理解が深まり、社会全体として多様性を認める大きな変化が出てきているといえるでしょう」と評価しています。「当事者であることを明らかにすることで不利益を被ることを恐れている人が少なくない。だから制度を利用できないという人たちもいます。当事者への理解をより深めるとともに、積極的に社会の一員として、家族として権利を認めていくということについて議論を同時に進めていく必要があるのではないでしょうか」
 同性パートナーシップ証明制度の創設やその広がりが、当事者の暮らしや社会にどのようなプラスをもたらしたかということを評価しつつ、制度に限界があることや、同性カップルを家族と認め法的に保障することの必要性を的確にまとめている良記事でした。説得力がありました。
 
 
 棚村教授が述べているように、2015年に同性パートナーシップ証明制度がスタートしたことがきっかけで、生命保険の受取人に同性パートナーを指定できるようになったり、住宅ローンを共同で組めるようになったり、航空会社のマイレージを共有できるようになったり、携帯電話の家族割を利用できるようになったり、賃貸住宅にカップルで入居しやすくなるなど、民間のサービスでも家族として扱ってもらえる分野がグンと増えましたし、企業の社内LGBT施策が急速に広がったり、自治体でも同性パートナーシップ証明制度だけでなく、都道府県でLGBT差別を禁止する条例ができたり、同性カップルが里親になることが認められたり、社会が性の多様性について理解を深め、LGBTQを積極的に支援する(アライになる)方向に大きくシフトチェンジしたということは、途轍もなく大きな意義があります。
 毎月のように全国の自治体から少しずつ制度導入のニュースが届くのは、本当にうれしいことですし、公的に承認されるという喜びはありつつも、やはり、そもそも法的な拘束力がなく(相続等が認められず)、同性カップルの権利保障としては第一歩(入口)にすぎない、同性パートナー法や結婚が認められない限り、40年以上連れ添ったパートナーの火葬に立ち会えず、共同経営の会社も親族に奪われるという悲劇や、パートナーを殺されても犯罪被害遺族給付金の支給が認められないといった悲劇が繰り返されてしまうということ、証明制度だけでは不十分なのだということが、もっと世間に認知されてほしいと思います。現在、全国で「結婚の自由をすべての人に」訴訟が展開されていますが、結婚の平等(同性婚)の実現を!という世論のうねりのようなものが(米国のように大手企業がサポートしてくれるなどして)巻き起こるといいですね。
 ともあれ、この5年で実現したこと、変化したこと、前に進んだことを、まずは祝福し、その実現や変化や前進に尽力した方々に、心からの感謝と賛辞を贈ります。
 これからの5年間で、さらに、いろんなことが実現したり、変化したり、前に進むことを期待しながら、できることをしていったり、頑張っている方々を応援しましょう。いつか日本でも結婚の平等(同性婚)が実現する日が来ることを夢見て。



参考記事:
世田谷区「パートナーシップ制度」5年 性的少数者「特別な存在じゃない」 区役所でパネル展(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/65641
「家族だけど家族じゃない」 制度開始から5年 広がりと不安と(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201105/k10012696001000.html

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