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カナダの男子高校生たちがスカートで登校、ジェンダー平等やトランスジェンダー支援のメッセージとして

 カナダのケベック州の複数の学校で、性差別的な制服のルールへの抗議として男子生徒たちがスカートをはいて登校したことが話題になっています。
 
 
 10月3日、カナダ・ケベック州のトム・デュクレ=ヒルマンという男子学生が、女子学生の服装を規制する校則の是非を問う運動として、「服装規定は僕の知る限り最も意味のないものだよ。だから、変えなくっちゃ! こういうちっちゃなことをすることで、ばかばかしいルールを変えることができる。(中略)服には性別はないんだ」とコメントし、インスタグラムにスカート姿の動画を投稿しました。きっかけは、学校の体育の時間、Tシャツが短すぎて肌が見えるという理由で体育教師が何人かの女子生徒が授業から追い出されたことだそう。「居合わせた男子生徒らはこれに抗議し、自分たちのスウェットシャツの裾を結んで露出度を上げて見せたが、教師はこれには何の注意もしなかった」そうです。
 この投稿は大きな反響を呼び(現在約1万9000超の「いいね!」を集めています)、別の学校の男子からも賛同が寄せられました。たとえばギヨーム・デリーは「僕の学校では(中略)女子はスカートの長さを理由に退室を命ぜられたり、とんでもない言葉を浴びせられたりしている。(中略)たいてい、女子はその服装のせいで男子の邪魔をしていると言われているけど、僕らはそうは思わない。集中しないといけないのは男子であって、女子には責任はないと僕らは考えている。女子への支持と、男もフェミニストでいられることを示すため、僕ら男子はスカートを履く」「性的マイノリティへの寛容のメッセージも伝えたい。スカートが履きたければ、誰だってスカートを履いたらいいんだ」というコメントとともに仲間らと揃ってスカートを履いた写真をインスタグラムに投稿しています(約8万7000人の「いいね!」がついています)
 このギヨームの投稿を、同じケベック州出身のグザヴィエ・ドランが「僕の高校時代にはこんなこと、ハロウィンですら起こらなかった。素晴らしいことだよ」とインスタグラムで絶賛したことで、81万人のフォロワーに伝わり、世界的に知られることとなりました。
 
 ケベック州ラヴァルの私立高校に通う男子生徒ジュゼッペ・コセンティーノは、スカートを履く男子生徒たちの投稿を見て、自分たちのクラスでも何か行動を起こそうと計画しました。この高校には、他の学校と同様に「スカートの丈は、最も短くて膝上10センチまで」というルールが存在する一方、男子学生が着るショートパンツなどの制服には、このようなルールは存在しません。ジュゼッペはCBCの取材に対し、「多くの教師が女子生徒に対し、『気をつけなさい。スカートが短すぎて、男の子たちの気が散るだろう』と注意しています。しかしそれは、女の子ではなく、男の子の問題のはずです」と答え、性差別的なドレスコードや女性の身体の過度な性対象化に異議を唱えています。彼は友人らと連帯し、クラスの男子生徒15人を説得、校内でスカートを着用しました。この抗議に対し、校長らはすぐ止めようとしましたが、生徒と話し合いをした結果、理解を示したそうです。
 なかにはスカートを履いた男子生徒に対して「それはゲイがすることだ」と言う生徒もいたそうですが、「抗議の理由を説明すると肯定的な反応があった」と、発起人の一人であるエリッサ・ファーラは語りました。
 この抗議には、ジェンダー平等だけでなく、性的マイノリティの権利について訴える意図もあったといいます。発起人の一人でノンバイナリーのルカ・ムッソは、「家ではスカートを履いていて、学校でもそうしたいのですが、できなかった」と、今回、複数の男子学生がスカートを履いて登校したことで「安全で快適であると思えた」と語っています。「もっと幼い頃から、たくさんの中傷を浴びてきた」「結局のところ、スカートはただの生地にすぎない。スカートは女性だけのものではない。パンツが男性だけのものでないのと同じです」

 
 実は性差別に反対する男子学生によるスカート着用は、これが最初ではありません。2014年、フランスのルマンにある高校で、男女の不平等な扱いに抗議するため、男子学生がスカートを着用する「スカートの日」運動を始めました。2017年に参加したギャバンという男子学生は、参加者が15人程度しかおらず、「笑いものになるかもしれないけど、これが僕らの「スカートの日」の意見表明さ」と語っています。

 同じ2014年にはブラジルで、トランスジェンダーの生徒を助けるために男子生徒15人がスカートをはいて登校するという感動的な出来事がありました。リオデジャネイロのトランス女性の高校生、マリア・ムニーズが勇気を出してスカート姿で学校に行ったところ、学校側は、校則違反だとしてズボンを強制しただけでなく、罰則まで課しました。その9日後、マリアへの連帯を表明し、クラスメイトの男子生徒15名がスカートをはいて学校に登校しました。この感動的な出来事はインターネットを通じて世界に広まり、「素晴らしい少年たちだ」「よくやった!」「ブラボー!」など、彼らを応援するコメントがあふれました。学校側も態度を変え、スカートの着用が認められたそうです。

 台湾では昨年5月、新北市の板橋高級中学の生徒会がジェンダー平等や同性婚法案への関心を高めるため、創立記念イベントで「男子スカートウイーク」を企画しました。校長は、「ジェンダーの固定観念を砕き、ひとりひとりの違いを尊重します。スカートをはくチームに参加してください」と呼びかけました。スカートをはいた男性教師も、「この格好でサッカーをしていたら、たくさんの生徒が『服がおかしい』と言ってきた。でもこういう格好がしたかったら、ためらう必要はない。みんなでジェンダーの固定観念を壊し、違いを尊重できる」と話しました。この取組みには賛否両論あったそうですが、蔡英文総統も「スコットランドでは男性がスカートをはきます。なぜ台湾ではできないのか?」と語り、この運動を支持しました(国家首脳がこうした運動への支持を表明するのは台湾が初ではないでしょうか)。学校だけでなく、運動は企業にも広がり、モジラ台湾の男性社員がスカートをはいた画像をTwitterに投稿するなどしたそうです。
 

 多くのシスジェンダー・異性愛男性は人前でスカートをはくことに抵抗を感じることでしょうが(社会のジェンダー規範が強ければ強いほど)、世界各地のZ世代の男子学生たちは、それを乗り越えて、ジェンダー平等や性的マイノリティへの連帯のためにスカートをはいて登校してみせました。大げさではなく、このようなアライとしての行動こそが世界を変えていくのだと思います。本当に素晴らしいです。希望を感じさせます。
 
 


参考記事:
男子生徒がスカートで登校。何が起こった?制服への抗議運動が、カナダの高校生の間で広がる(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f83a20fc5b6e5c32000327f
男子生徒がスカート履いて抗議 女性差別を男の問題と捉えるジェネレーションZ(Newsphere)
https://newsphere.jp/national/20201021-1/
男子生徒15人がスカートをはいて登校! トランスジェンダーの生徒を助けるためにクラスメイトが一致団結したストーリーが世界中で感動を呼ぶ!!(Rocket News)
https://rocketnews24.com/2014/09/24/490356/
男性がスカートをはいてジェンダーの固定観念に抗議、台湾(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/48263139

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