COLUMN
アウティングとは
2019年、パワハラ防止法の成立に関連し、すべての企業がSOGIハラおよびアウティングの防止に取り組むことが義務づけられました。アウティングとはどういうことなのか、解説します。
性的指向・性自認(SOGI)について、本人の了解を得ずに、第三者に暴露する行為(ハラスメント)のことを「アウティング」と言います。
性的指向がストレート(異性愛)である方や、性自認がシスジェンダー(社会的に割り当てられた性別と自認する性別が一致している)方については、アウティングは意味を成しませんが、LGBTQ(セクシュアルマイノリティ)の方が、公にしたくない性的指向や性自認を暴露されることは、甚大な精神的苦痛を被ることにもなりかねません。
2016年、ゲイであることを同級生に暴露された後、差別を受ける不安から心身に変調をきたし、学校の相談室に相談するも性同一性障害のパンフレットを渡されるなど適切な支援を受けられず、最終的に校舎から転落して自死した一橋大法科大学院の男子学生の両親が、大学に損害賠償を求めて訴えを起こしています。アウティングは、暴露された当事者の命にも関わるような深刻な行為であるということを、ご理解ください。
また、一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営する「よりそいホットライン」には、アウティングを受けたLGBTQからの電話相談が多数寄せられていることが明らかになり、被害の深刻さが浮き彫りになったというニュースもありました(詳しくはこちら)
2019年、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が成立したことに伴い、厚労省が「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「指針」)を策定し、SOGIは個人情報やプライバシーであると明記され、SOGIハラと並んでアウティングもパワハラであると見なされることになりました。
これにより、すべての企業等や自治体がアウティング防止施策の実施を義務付けられることとなりました。これは「措置義務」であり、もし対策を怠った場合、都道府県労働局による助言・指導・勧告等が行われることになります。
指針にパワハラ防止施策として定められた措置義務の内容は、以下の通りです。これらの措置がすべてアウティングにも適用されることとなりました。
(1) パワハラがあってはならない旨や懲戒規定を定め、周知・啓発すること
(2) 相談窓口を設置し周知するとともに、適切に相談対応できる体制を整備すること
(3) パワハラの相談申し出に対する事実関係の確認、被害者への配慮措置の適正実施、行為者への措置の適正実施、再発防止措置をそれぞれ講じること
(4) 相談者・行為者等のプライバシー保護措置とその周知、相談による不利益取り扱い禁止を定め周知・啓発すること
各企業等や自治体は、2020年6月以降(中小企業等は2022年4月以降)の措置の実施が義務づけられています。
また、いわゆるカスタマーハラスメントや、就活生・インターンシップ生・フリーランス等へのハラスメントについても、上記の(1)〜(4)の取組みを行うことが望ましいとされましたが、これらにもアウティングの防止が含まれることとなります。
なお、法の履行確保のため、都道府県労働局による助言・指導・勧告等の規定も整備されました。
今回の指針では「労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」が「個の侵害」に該当するとされており、「機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である」と謳われています。また、「相談者・行為者等のプライバシー」に性的指向・性自認等が含まれると明記され、アウティングが起こらないよう、周知・啓発などの措置が義務づけられています。
また、アウティングに関する訴訟がいくつも起こっています(現在も係争中です)が、職場内でのアウティングの発生は訴訟のリスクも伴うということをご承知ください。
さらに詳しく、具体的な事例や、防止策について知りたいという方は、ぜひOUT JAPANにお問い合わせください。
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