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福祉施設でホルモン剤を没収されたトランス男性が権利侵害だと提訴しました

記事日付:2020/07/20

 共同通信によると、東京都新宿区が所管する福祉施設に入所した際、性同一性障害の治療のために使用していた男性ホルモン剤を、同意がないまま施設側に処分されたトランス男性が、新宿区を提訴したことが7月19日、明らかになりました。

 千葉県在住のEさん(34)は性同一性障害の治療のために男性ホルモン剤を使用していましたが、新宿区の福祉施設に入所した際、断りなくホルモン剤を処分されたといいます。Eさんは財産権を侵害されたとして、新宿区に約150万円の損害賠償を求める訴えを起こしていました。現在、東京地裁で審理されています。
 新宿区は準備書面で、没収した理由を「医師の処方でない薬物を寮に勝手に持ち込むことは禁止されていた」と説明しています。事実関係の一部を否認して争う構えです。共同通信の取材に対しては「今後の訴訟に影響するので何も答えられない」としています。

 トランスジェンダーへのアンケート調査で、ホルモン治療や性別変更手続きの中止など様々な困難が明らかにというニュースでもお伝えしたように、性同一性障害(GID)と診断され、戸籍の性別の変更を望む方たちの多くが、男性ホルモン製剤や女性ホルモン製剤の注射、経口薬などのホルモン療法を受けています。頻度は人によって異なりますが、注射は約1~3週間に1回、経口薬は毎日服用する必要があります。卵巣や精巣を摘出した後、ホルモンの分泌が止まるのに、ホルモン治療を受けられずにいると、更年期障害や免疫力低下などの体調不良を招いたり、メンタルヘルスの不調にもつながるそうです。

 新宿区は「医師の処方でない薬物を勝手に持ち込んだ」と主張しているそうですが、ホルモン剤は性同一性障害のクリニックでは(未だに保険適用外ですので、自由診療扱いにはなってしまうものの)性同一性障害の診断に基づいて医師が処方するものですし、たとえ海外から自己輸入しているものであったとしても、福祉施設が性同一性障害の治療のためのホルモン剤を無断で取り上げるというのは、あまりに無慈悲で、人倫にもとる行為だと非難されても仕方がないのではないでしょうか。
 GID当事者がホルモン剤を使用することは治療のための行為であると社会に広く認知されること、保険適用も含め、GID当事者がホルモン治療にアクセスする権利が早く確立することを願います。




参考記事:
ホルモン剤の没収は権利侵害 性同一性障害当事者が提訴(共同通信)
https://this.kiji.is/657473647025980513?c=516798125649773665

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