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トランスジェンダーへのアンケート調査で、ホルモン治療や性別変更手続きの中止など様々な困難が明らかに

記事日付:2020/05/25

 新型コロナウイルスの感染拡大で、トランスジェンダーの人たちが必要な診療を受けられないなど深刻な影響を受けていることが支援団体のアンケートで明らかになりました。
 先日、コロナ禍の影響で治療を受けられずにいるトランスジェンダーの苦悩…「治療拒否は『死』と同じ」というニュースで、長崎県在住のGID当事者の方の苦境をお伝えしましたが、今回のアンケート調査で、何ヵ月もホルモン治療が受けられずにいる、休業中で生活が苦しくなり手術のためのお金を切り崩した、性別変更手続きがストップして転職に支障が出ている、など、トランスジェンダーの方たちが様々な困難に直面している実態が浮き彫りになりました。

 
 アンケートは、トランスジェンダー支援に取り組む市民団体「Team Respect and Solidarity」(略称「TRanS」)が実施したもので、5月1~20日、トランスジェンダーを対象に医療へのアクセスについて尋ね、18~67歳の496人から回答を得ました。そのうち新型コロナウイルスの影響について119人が自由記述で回答した分が、24日にYoutubeで公表されました。

 新型コロナウイルスの影響について「受診・治療がストップした」を挙げた人が21人で最多となりました。「外出自粛で職場付近のクリニックに通えなくなり、ここ数ヵ月ホルモン注射を打つことができていない」「注射のため通っていたクリニックが一時閉鎖になった」「休業中で生活費を得ることが難しく、ホルモン療法を中止せざるをえなくなった」との声が上がりました。また、16人が国際便の減少などによる「個人輸入のホルモン製剤が届かない」と訴えているそうです。※
 性同一性障害(GID)と診断され、戸籍の性別の変更を望む人たちの多くが、男性ホルモン製剤や女性ホルモン製剤の注射、経口薬などのホルモン療法を受けています。頻度は人によって異なりますが、注射は約1~3週間に1回、経口薬は毎日服用する必要があります。卵巣や精巣を摘出した後、ホルモンの分泌が止まるのに、ホルモン治療を受けられずにいると、更年期障害や免疫力低下などの体調不良を招いたり、メンタルヘルスの不調にもつながるそうです。
 日本の性同一性障害特例法では戸籍上の性別の変更をするためには性別適合手術を受けることを必須の要件と定めていますが、性別適合手術が2018年に医療保険が適用されたにもかかわらず、ホルモン療法については保険適用外とされ、未だにこの状況が改善されていません。
 TRanSの代表で看護師でもある浅沼智也さんは、「国は性別を変更するために手術を強制しているのに、一生お金がかかるホルモン治療には保険が適用されず、手術後のサポートは何もない状態」だと語ります。
 アンケートでも、まずホルモン治療への保険適用を、と望む声が多く挙がっていたそうです。

※ホルモン療法は保険適用外であるため、比較的高価なものになっており、やむなく海外の安いホルモン製剤を個人輸入している方もいらっしゃるそうです。岡山大学教授でGID(性同一性障害)学会理事長の中塚幹也氏は、新型コロナウイルス感染症の症状として血栓症などの血管障害も明らかになったことと関連し、GID当事者のホルモン療法による血栓症のリスクの高まりを懸念し、「個人輸入をした安価な女性ホルモン製剤を内服している人もいるが、このように医療的な管理下ではないホルモン療法は危険であり警鐘を鳴らしたい」と述べています(詳しくはこちら
 
 性別適合手術を受けた後、裁判所が休廷したため、戸籍の性別の変更手続きが滞っている例もありました。「タイで性別適合手術を済ませ、戸籍の性別の変更のための家庭裁判所での面談の日も決まっていたが、直前に緊急事態宣言が出たことで戸籍変更ができない。転職活動にも支障が出ている」といいます。
 
 このほか、13人が「通院に伴う感染への不安」を挙げました。
 自身が新型コロナウイルスに感染した際の、性別に関する扱いについて不安を訴える意見も4件ありました。「自治体からの発表で、性別について意に反した扱いをされることは堪えがたい苦痛になる」「身体の性で扱われるのではないかと不安がある」といった意見がありました。
 
 浅沼さんは、「特に地方などでトランスジェンダーが診療を受けられるクリニックが少ない現状や、本人の意に反して性別に関する情報が暴かれやすい問題が、より浮き彫りになった。当事者の健康とプライバシー、人権が守られる社会が必要だ」と語ります。
 そして、このアンケートをもとに、国などに対し要望書などを提出していきたいと考えているそうです。
「新型コロナでみんな大変な時に、ホルモン治療や手術を受けられない困難について語ると『わがままだ』と言われることもありますが、必要な時に必要な支援が受けられずにいると、当事者の健康や生活がより悪化してしまう可能性が高くなります。トランスジェンダーの人権は守られていません。根本的に直面している問題を解消しなければ、当事者の生きづらさは続くと思いますので、今回の調査をもとに、行政や社会全体に対して当事者の声や実態を伝えていきたいと思います」

 
 
参考記事:
トランスジェンダー「治療止まった」 感染時の性別発表に不安の声 新型コロナ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20200524/k00/00m/040/101000c
「手術用に貯めたお金を切り崩し生活」トランスジェンダーが新型コロナで直面する医療課題を緊急調査(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20200525-00180136/

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