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『ハリポタ』作者J.K.ローリングのトランスジェンダー差別発言に対し、映画に主演したダニエル・ラドクリフらがトランスジェンダーを擁護する声明を発表

記事日付:2020/06/12

 『ハリー・ポッター』シリーズの作者として知られるJ.K.ローリングがトランスジェンダーを揶揄する発言をして炎上し、映画『ハリー・ポッター』シリーズに主演したダニエル・ラドクリフらがこれを批判し、トランスジェンダーを擁護するコメントを発表しました。
 


 6月6日、人道支援メディア「Devex」が「オピニオン記事:コロナ後の社会を生理がある人々にとってより平等なものにするために」という記事を掲載しました。この記事の「生理がある人々」という言い方は、性別適合手術を受けていないトランス男性も生理に関する保健衛生の問題に関係があることを示すために使われたものです。この記事を引用しながらJ.K.ローリングは「“生理がある人々”とあるけど、そういう人たちを指す言葉があったはず。誰か思い出すのを手伝って。ウンベン? ウィンパンド? ウーマッドだっけ?」とツイート。「ウィメン(女性)」という言葉を忘れたふりをしながら「生理がある人」ではなく「女性」という言葉を使うべきだと揶揄したのです。 
 この投稿に対し、6月9日までに約3万件のコメントがつきましたが、そのほとんどが批判的なコメントでした。

 『フォーブス』誌は「彼女のアカウントは突然“TERF”を批判する言葉であふれた」と報じました。「TERF(ターフ)」とは「trans-exclusionary radical feminist(トランスジェンダーを排除するラディカル・フェミニスト)」の略で、特に「トランス女性は男女平等のための闘いや女性専用のスペースに参加すべきではない」と主張する人々のことを指します。ターフは、トランス排除の理由を「トランス女性は完全な女性ではないためだ」としていますが、LGBTコミュニティからは「トランスフォビアだ」として広く非難されています(日本でもお茶の水女子大がトランス女性の入学を認めて以降、ターフが活発化している現状があります)
 
 J.K.ローリングは10日、自身のブログであらためてトランスジェンダーについての意見を表明し、「生物学的性が存在しないのなら、同性に魅かれることはない。生物学的性が存在しないのなら、世界中で女性が経験している現実が消し去られてしまう」と述べました。
 彼女は、自分はターフではないとしていますが、主張していることの内容はターフと同じです。「生物学的な性別は存在しない」とは誰も言っていません。生物学的な性別も存在するし、性自認や性表現という(社会的な側面を持つ)ジェンダーのありようも独立して存在していること、そして、出生時に割り当てられた性別とは異なる性別で生きたい(本来の自分の性別を取り戻したい)と望む人たちの権利が尊重されるべきである(人権である)ということを理解できていないのです。
 
 過去にもJ.K.ローリングは、「トランス女性はドレスを着ただけの男性だ」と決めつけるツイートに「いいね」をし、その後「中年の危機」に起因する誤解のせいだったとして謝罪したことがあります。また、マヤ・フォーステーターという女性研究者が、トランスジェンダーの戸籍性別の変更に反対するため「トランス女性は生物学的性を変更できない」とツイートし、失職した事件がありましたが、J.K.ローリングはこのとき、フォーステーターを支持する発言をしていました。
 
 映画『ハリー・ポッター』シリーズで長年にわたってハリー・ポッター役を演じてきたダニエル・ラドクリフは(ソーシャルメディアの公式アカウントを持ってないため)LGBTの自殺防止に取り組む団体「トレヴァー・プロジェクト」のblogに寄稿しました。
「僕がJ・K・ローリングと喧嘩状態になっていると思い込みたいメディアの報道をいくつか見かける。そういった報道は別に僕と彼女との仲違いとかいう問題でもなく、今大切なものとは何か、という話でもない。彼女は僕が歩んだ人生において相当の責任を負ってるわけだけど、過去10年間トレヴァー・プロジェクトと活動する栄誉にあずかった人物として、そしてまたひとりの人間として、今回の件について発言せずにはいられない気がしている。
 トランスジェンダーの女性たちは女性なんだ。これに反する他のどんな声明もトランスジェンダーの人たちのアイデンティティと尊厳を消し去ってしまうものにほかならず、こういった問題について彼女や僕よりはるかに経験のあるプロフェッショナルや専門的機関から与えられるどんなアドバイスにも反するもの。トレヴァー・プロジェクトによれば、トランスジェンダーやノンバイナリーの若者の78%がジェンダー・アイデンティティのせいで差別の標的にされている。僕たちが彼らをサポートする必要性はこのことから明らかだ。彼らのアイデンティティをないことにしたり、さらに傷つけたりするのではなく。
 僕はまだより良いアライになるためにまだ勉強中の身だ。だからもし僕と一緒にトランスジェンダーやノンバイナリーのアイデンティティについてもっと学びたかったら、ぜひトレヴァー・プロジェクトの「トランスジェンダーとノンバイナリーの若者たちのアライになるためのガイド」を見てほしい。
 今回のコメントによって傷つき、『ハリー・ポッター』シリーズの読書経験が今回の件によって汚されたり、意味を削られてしまったりする気がしている全ての人たちに対して、真摯にお詫び申し上げたいと思う。あの物語で得た価値観を全て失わないでいてほしいと願う。もしあのシリーズが、愛はどんなものも克服する、この宇宙の中で最も強い力だとあなたに教えてくれたのなら:強さとはダイバーシティの内にあること、そしてシリーズ全体に通底する純粋で教義的なアイデアこそが、弱いグループに対する抑圧を導いたと教えたならば:もしあなたが特定のキャラクターについてトランスジェンダー、ノンバイナリージェンダーフルイド、あるいはゲイやバイセクシュアルだと信じているとしたら:そしてあのシリーズに共感し、寄り添い、人生のある時期において自分を助けてくれたことがあるとしたら - あなたの読書体験は真にあなとその本の間だけのことで、神聖なものなんだ。僕個人の意見だけれど、その経験は誰にも触れる権利がないものと考える。あなたがあのシリーズから感じたものが全てだし、今回のコメントによってそれがあまり汚されないでいてほしいと願っている」(日本語訳はELLE ONLINE「ダニエル・ラドクリフ『ハリー・ポッター』作者のトランス差別発言に反論。声明文を日英全文公開」より)
 さすがは10年もの間、LGBT支援に携わってきただけのことはありますね。アライのお手本のようなコメントです。そして、ファンの気持ちも大切にし、自らが作者に代わってお詫びするという殊勝な態度に、誰もが敬意を抱いたことでしょう。素晴らしい声明です。
 オープンリー・ゲイの俳優ジェシー・タイラー・ファーガソンをはじめとするセレブや、多くのLGBT支援団体も、このダニエルの声明を絶賛しています。

 声を上げたのはダニエル・ラドクリフだけではありません。
 映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズの主演を務めているエディ・レッドメインもまた、声明を発表しました。
「トランスジェンダーの人たちに対する敬意は文化的になくてはならないものだ。僕は何年にもわたって学び、それは今も続いている。ローリングと働いた経験を持ち、トランスコミュニティを支持するものとして自分の立場を明確にしたい。僕はローリングの発言に賛同していない。トランスジェンダーの女性は女性であり、トランスジェンダーの男性は男性だ。ノンバイナリーのアイデンティティは正当なものだ」 
「僕はトランスジェンダーのコミュニティを代表して発言することは望んでいない。でも僕の大切なトランスジェンダーの友達や仕事仲間たちがアイデンティティに疑いの目を向けられることにうんざりしていることを知っているし、彼らのアイデンティティはあまりにも頻繁に暴力や虐待に晒されている。彼らは自分の生活を平穏に暮らすことを望んでいる。今こそ、それを可能にするときだ」 
 エディ・レッドメインは映画『リリーのすべて』で、世界で初めて性別適合手術を受けた実在の画家リリー・エルベを演じています(アカデミー主演男優賞にノミネートされたほどの繊細な演技でした。トランスジェンダー女性に接し、学んだり、共感を深めたりしたうえで演技に臨んだことが窺えます)

 『ハリー・ポッター』シリーズでハーマイオニーを演じ、世界中から愛されてきたエマ・ワトソンも「トランスジェンダーの人たちは彼らが表明している通りの人であり、常に疑問の目を向けられたり、自分の認識とは違うと言われたりすることなく生きる権利があります」「私のフォロワーの中のトランスジェンダーの人たちに、私も世界中の多くの人もあなたの存在をちゃんと見ていること、ありのままのあなたを尊重し愛していることを知ってほしい」とTwitterに投稿しました。そして、トランスジェンダー支援団体に寄付したことを報告し、プライド月間らしく「ハッピープライド2020。愛を送ります」と締めくくりました。
 
 自身のデビュー作、ヒット作の生みの親であり、恩人であるとも言える原作者のJ.K.ローリングにも「忖度」せず、長年にわたって(黒人などと同様に)差別や暴力にさらされ、命を奪われてきたトランスジェンダーの人々を守るために毅然と声を上げた若き俳優たちに敬意を表するとともに、LGBTコミュニティの一員として感謝申し上げたい気持ちです。

 

 
 
参考記事:
『ハリポタ』作者J.K.ローリングが差別発言でまた炎上(クーリエジャポン)
https://courrier.jp/news/archives/201920/
ハリポタ原作者のツイートに非難殺到、主演俳優ラドクリフさんも反論(CNN)
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35155064.html
D・ラドクリフさん、ハリポタ作者の「トランス嫌悪」投稿を謝罪(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3287463
ハリーポッター作者のトランスジェンダー発言受け、シリーズの主役ダニエル・ラドクリフさん「トランスジェンダー女性は、女性です」。(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5edf7473c5b66ad4e110586
【全訳】ダニエル・ラドクリフ『ハリー・ポッター』作者のトランス差別発言に反論。声明文を日英全文公開(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a32818398/daniel-radcliffe-responds-to-j-k-rowling-tweets-on-gender-identity-200610/
ダニエル・ラドクリフがJ・K・ローリングの発言を謝罪。「トランスジェンダーの女性は女性」(VOGUE)
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/daniel-radcliffe-responds-to-j-k-rowling-transphobic-tweets
女性の定義を巡り…ハリポタ著者の炎上発言に主演俳優が反論(COSMOPOLITAN)
https://www.cosmopolitan.com/jp/entertainment/celebrity/a32818193/daniel-radcliffe-responds-jk-rowlings-tweet/
エディ・レッドメイン、J.K.ローリングのアンチトランス発言に声明を発表(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a32827990/eddie-redmayne-transgender-200611/
6月はプライド月間! エマ・ワトソン、トランスジェンダーコミュニティへの支持を表明(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a32830061/emma-watson-transgender-200611/

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