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来春からの中学教科書で「性の多様性」についての記述が大幅に増えることが明らかに

記事日付:2020/03/27

 文部科学省が3月24日に検定結果を発表し、来春から採用される中学校教科書で性の多様性についての記述が大幅に増えることが明らかになりました。

 現行の中学教科書ではLGBTについて触れているのは5社6点ですが、今回合格した来春からの教科書では、9社17点に増えました。科目も道徳だけでなく国語、歴史、公民、家庭、美術、保健体育という6科目に広がりました。新学習指導要領にはLGBTのことは盛り込まれていませんが、昨今の同性婚訴訟や男女別制服の見直しなどの動きで社会的関心が高まっているのを受けて「社会状況を見ると、子どもたちには『性の多様性』を学ぶ機会が必要」として掲載した教科書もありました。3科目で触れたある出版社は「社会の変化を取り入れた結果。消極的な意見もあったが、大事な観点であり、今後定着する話題だと判断した」といいます。
 インタビューなどさまざまな形式で紹介され、理解促進に工夫が凝らされているそうです。
 保健体育のある教科書では、思春期の心身の発達を扱う章の冒頭で、「『普通』『常識』『みんなも言っている』、そんな声を耳にしたら『そうじゃない人だっているかもしれない』という発想をみんなに持ってほしいと思います」という、LGBTも働きやすい職場づくりを支援する団体の代表の方のインタビューが掲載されました。担当者は「しっかり考えてほしいと思い目立たせた」と語っています。
 国語の教科書には、ゲイであることを公表した日本文学研究者ロバート・キャンベルさんの文章が掲載されました。
 公民の共生社会を考えるページでは、同性カップルのホテルの宿泊拒否を違法とする国の見解を示し「多様な性の意識を持つ人々が、社会の中で自分らしく生きるための取り組みも必要」とされています。また、性別に関係なく制服のスラックスをはけるようにした自治体の動きも取り上げられています。
 美術では、同性カップルが描かれた生徒製作のポスターが紹介されました。

 文科省の学習指導要領には現状、「性の多様性」についての記載はありません。一方で、必ず扱うように指導されている項目として、道徳で「異性の理解」、保健体育で「異性の尊重」があります。そのため、道徳では男女間の淡い恋を掲載する教科書が多くなっていて、これを取り上げなかった教科書に「不適切」だと検定意見が付いたケースもあったそうです。この出版社は「生き方を考える道徳でわざわざ『異性の理解』を大きく扱うことに、ためらいがある。生徒のなかにも性的少数者は必ずいる。授業の進め方によっては男らしさや女らしさの強化にもつながりかねない」と説明、性別と関係ない友情を扱ったページに「同性どうしの友情と異性との友情に、違いはあるだろうか」という一文を入れて合格したそうですが、「次の学習指導要領の改定で『異性』はなくしてほしい」と希望しています。

 教科書でLGBT(性の多様性)について触れられるようになったのは、2017年度、高校の家庭科と倫理の教科書で盛り込まれるようになったのが端緒です。(詳しくはこちら
 その後、2019年度から使われる中学校道徳の教科書で8社中4社がLGBTを取り上げたと報じられました。義務教育では初のことです。(詳しくはこちら
 さらに、2020年4月から小学校で使われる保健体育の教科書で、初めて「「体の性と心の性がちがう気がする」と感じる人」や「異性に関心がもてない」と感じる人」といったLGBTについての記述を盛り込む教科書が登場しました。(詳しくはこちら
 
 2017年の学習指導要領改訂の際、「思春期になると、だれもが、遅かれ早かれ異性に惹かれる」という誤った(同性愛を無いものとする)記述を変えようとする運動が起こりましたが、残念ながら採用されませんでした。(この決定に対し、初めてwork with Prideを開催したことで知られる人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、「LGBT生徒への支援の絶好の機会を逸した」と指摘しました)
 ただ、ロシアのように学校でLGBTについて教えること自体を禁止しているわけではありませんので、今回のように、独自に性の多様性のことを教科書に盛り込もうとする出版社も着実に増えてきています。学校でのLGBTへのいじめをなくしていくためにも、2027年の学習指導要領改訂では必ず触れるようにしていただきたいと願うものです。

 なお、性教育に詳しい浅井春夫・立教大名誉教授は、「国際的には、幼児期から包括的に性教育を進めるのがスタンダード」であるとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などが作った多様性やジェンダー、人権を基盤にした『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』を参考に「早急に性教育を再構成する必要がある」と述べています。

 

参考記事:
21年度からの中学教科書 「性の多様性」理解促進に工夫(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57196990V20C20A3CR0000/
中学教科書に「性の多様性」来春から大幅増 でも文科省は”異性”にこだわり 「戦前の価値観」と批判も(東京新聞)
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/education/29092/

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