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ユニリーバ・ジャパンが履歴書の性別欄を無くし、選考の過程で性別を不問に

記事日付:2020/03/16

 ヘアケアブランド「LUX(ラックス)」などを展開する日用品・食品大手のユニリーバ・ジャパンはトランスジェンダーの方などへの配慮として、3月6日からの2020年度採用選考について、応募フォームから性別欄を無くし、性別を不問とする施策を実施しました。
 同社のWebサイト上の応募フォームにはこれまで「Female(女性)・Male(男性)・Prefer not to say(答えたくない)」という性別欄がありましたが、今回、性別欄自体を撤廃しました。紙の履歴書の場合も、性別欄や顔写真を貼る欄がないものをダウンロードできるようにします。また、ファーストネームで性別がわかる場合が多いため、氏名欄も姓(苗字)のみにするそうです。
 
 同社の取締役人事総務本部長の島田由香さんは、「女だから、男だから、その他だから、ということではなく、その人がどんな人かを知りたいんです」「当然、日本を変えるつもりでやっています」と語ります。「一社でも多くの企業が同じことをすることを目指しています。『より良い社会が作られるように』という思いです」
 企業では男女共同参画推進の一環として、女性の積極的な採用、管理職に占める女性の割合を高めることなどが課題となっています(そのために履歴書の性別欄の撤廃へと踏み出せない企業も多かったという事情があります)が、同社は「最初の採用のところで固定概念を取り除いていくことが必要」だとして、この取組みを進めるに至ったといいます。面接より前の段階で生じるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を排除して優秀な人材を確保することを目指すそうです。
 
 同社は1月24~28日にインターネット上で企業の採用担当者へのアンケート調査を実施しました。
「採用における、無意識に生じる性別への先入観の調査」は、企業で書類審査など採用を担当することがある会社員や会社経営者424人を対象に実施されました。回答者の約4人に1人にあたる26.6%が、自社の採用過程において「男性と女性が平等に扱われていない」と回答、「どちらとも言えない・わからない」が23.6%で、「男性と女性は平等に扱われている」が49.8%でした。そして、応募職種から「男性候補者を優先したことがある」との回答が18%、「写真の印象が採用の有無に影響すると思う」との回答は44%に上りました。
 性別に関する偏見がまだまだ根強いことが浮き彫りになりました。

 こうした性別に関するアンコンシャス・バイアスを取り除くべく、実際に採用の仕組みを変更するにあたっては、現場からの反発も大きく、採用システムの変更を提案した河田さんは「社内会議では心が折れそうになった」と語っています。
 オランダとイギリスに本社を置くグローバルカンパニーであるユニリーバでは、新卒採用の際、全世界で共通するフォーマットを使用していたため、日本だけ自由に変更することができませんでした。
 また中途採用では、応募者はエージェントごとに用意された共通の履歴書と職務経歴書を使用するのが一般的で、ユニリーバ・ジャパンだけ性別や顔写真の記載を禁止することで転職者や転職エージェントから敬遠されるのではないかという懸念もあったといいます。
 最初は「素晴らしいことだけど、夢を見すぎ」と思われていて、人事とぶつかることもありましたが、全世界共通のフォーマットを変えられないか、グローバル本社と何度も交渉した結果、性別の選択欄を廃止できたほか、氏名を記入する欄への苗字だけの記入も認められました。世界各国のユニリーバの中でも、苗字だけの記入という方法に踏み切ったのは、日本だけだそうです。 

 ユニリーバは世界190ヵ国で展開しており、「2020年までにグローバル全体で女性管理職比率を50%まで引き上げる」という目標を2010年に掲げ、この3月3日に達成したそうです(日本だけで見ると38%にとどまるそうです)。今回の採用方式によって社員の男女比率やグローバル目標の女性管理職登用推進にも影響が出ることも考えられますが、それでも「採用基準は能力と可能性であり性別ではない」という方針のもと、取組みを進めるとしています。

 ユニリーバでは、新卒採用のほかに、エージェントや社員を通じた中途採用や工場採用などもあります。
 工場採用では、採用過程でハローワークなどを通すことが多いため、同社の採用担当に情報が来る前に性別などの情報を見えなくする仕組みをとったといいます。
 中途採用についても、ユニリーバの採用パートナーで転職サービス運営・ビズリーチの賛同を受け、採用の過程で性別欄などをなくすことができました。
 ビズリーチ執行役員の古野了大さんは、「このような取組みは、やりたくても実行するのがすごく大変です。ここまでしっかり構築して、実行されたことはすごいと思います」と語っています。ビズリーチの社員採用でも「性別ではなくその人自身を見る」という趣旨で、応募フォームなどの性別欄をなくしているといいます。
「私にも、今月4歳になる娘がいます。子どもが大きくなったときに『こうあってほしい』という社会に向けて一歩を踏み出されたことに、個人としても共感しています」
 
 こうした動きは徐々に広がりを見せています。署名オンラインサイトChange. orgでは3月1日の新卒大学生の就活解禁に合わせ、「履歴書から性別欄をなくそう」という署名が立ち上がりました。就職活動における男女差別やトランスジェンダーの人々への配慮などを理由に、日本で主に使われているJIS規格の履歴書などから性別欄をなくしてほしいと呼びかけています。
 署名を始めたのは、労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」。トランスジェンダーの求職者などからの相談を受けたことがきっかけという。経産省や厚生省などにも署名を提出し、国として性別欄をなくすように働きかけをするよう求めます。POSSEの佐藤学さんは「性別欄に書き込むことで、カミングアウトせざるを得ない人がいることも知ってほしい」と語っています。
 オンライン署名に賛同した人々は、コメント欄にこのように声を寄せています。
「私も性別欄の記入をするたびにモヤモヤしてました。そもそも仕事内容に男女の差が無いなら、わざわざ書かせる必要性を感じません。性別より人間性を見るべきだと思います」
「性自認が体の性と一致している人ばかりではありません。性別欄が2つしかないことで、どちらかを選べない人にとっては、その都度ストレスや苦痛を感じたり、社会の中で居場所がないと思わされたりすることになります。わざわざ、男、女と分けなくても、それをいちいち確認しなくても、問題にならないようにすることが、社会の目指すべき姿だと思います」
 

 以前からトランスジェンダーへの配慮としてエントリーシートなどから性別欄を撤廃するべきだという声が上がっていたものの、女性の採用比率を高めたいなどの理由でなかなか実現には至らないことが多かったと思います。強い信念と熱意をもって社内で(グローバルでも)調整を行い、完全に性別を不問とする取組みを完遂したユニリーバの担当者の方たちに敬意を表するものです。
 今後、多くの企業がこの取組みを参考にして、性別欄の見直しを進めてくださることを期待します。

 
 
参考記事:
「履歴書に性別欄や写真、いらなくない?」ある会社が踏み出した一歩(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/resume-photo-gender-firstname
男か女かなんて、カンケーある? ユニリーバが就活の書類選考から“顔写真”と“性別”を排除したワケ(FNN)
https://www.fnn.jp/posts/00050745HDK/202003131800_FNNjpeditorsroom_HDK
無意識の偏見を排除 ユニリーバ、採用の選考で性別の記載を廃止(NIKKEI STYLE)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO5647762006032020000000/
採用で顔写真と性別不要に ユニリーバ、先入観排除(SANKEI BIZ)
https://www.sankeibiz.jp/business/news/200306/bsc2003062004019-n1.htm
ユニリーバ・ジャパンが採用活動での顔写真&性別記入を不要に 性別への先入観を排除(WWD)
https://www.wwdjapan.com/articles/1053572
ユニリーバ役員に直撃。採用活動で名前も顔写真も不要にした理由とは?(BUSINESS INSIDER)
https://www.businessinsider.jp/post-209217
冨永愛と井原慶子が語る“職業と性別”。「無意識レベルで刷り込まれてきた価値観が、見えない壁を作ってきた」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/luxsdc-1_jp_5e58ac3ec5b6450a30bc7f25

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