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エレン・ペイジがトランスジェンダーであることをカムアウトし、トランス差別と闘う決意表明を行いました

 『ジュノ』や『X‐MEN』、『インセプション』への出演で知られ、2014年にレズビアンであることをカミングアウトしていた俳優のエレン・ペイジが12月1日、トランスジェンダーであることをカムアウトし、エリオット・ペイジへの改名を発表しました。
 
 
 エレン・ペイジは2014年にレズビアンであることをカムアウトして米映画界のLGBTQ俳優を代表する存在となり、2015年には『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』に主演、2018年にはダンサーのエマ・ポートナーと同性婚し、LGBTQの社会的地位向上について積極的に発言もしてきました。
 12月1日(現地時間)、ファンに宛てた長文メッセージをSNSで公開し(Twitterには175万超のいいねがついています)、ジェンダーが男性であると自認し、今後は、エレンではなくエリオットとして活動していくこと、それを発表できるまでに至った自身のジェンダー/セクシュアリティをめぐる旅をサポートしてくれた人々への感謝の言葉を述べました。それだけでなく、米国のトランスジェンダーが日々直面している差別や暴力の問題に言及し、そうしたヘイトを生み出す元凶となっている政治家やメディアを批判し、トランスコミュニティへのエールを贈りました。以下、全文日本語訳をお伝えします。
 
「こんにちは、みなさん。私はトランスジェンダーで、三人称はheまたはthey※1、そして、私の名前はエリオットだということをお伝えしたいと思います。このメッセージを書けること、ここにいられること、私の人生でこの場所にたどりつくことができたことを幸運に感じています。
 私のこの旅に寄り添い、支えてくれた信じられないくらい素晴らしい人々に心から感謝します。ついに私が、本当の自分を追求できるくらい自分自身を認められるようになったことが、どれだけ素晴らしいことか、言葉には言い表せません。トランスジェンダーコミュニティからどれだけ多くのよいものをもらい続けてきたことか。あなたたちの勇気に、この世界をよりインクルーシブで慈悲深い場所にするための休みなしの貢献や寛容さに、感謝します。私はこの社会がもっと愛と平等にあふれるものになるための努力をしつづけ、どんな支援も惜しみません。
 同時に、みなさんにはもう少しの辛抱をお願いしたいです。私の喜びはリアルなものですが、壊れやすいものでもあります。本当のことを言うと、今、本当に幸せで、ここまでやってこれた幸運をかみしめているにもかかわらず、私は恐れを感じてもいます。プライバシーをあれこれ詮索されたり、憎悪が向けられたり、侮蔑的な"ジョーク"や暴力に直面したり、という恐れです。私が祝うこの喜ばしい瞬間をくじくつもりがないのは確かなのですが、ここでトランスジェンダーを取り巻く状況についての全体像について述べておきたいと思います。信じがたい統計が出ています。トランスジェンダーの人々への差別は、夥しく、陰湿で、残酷なもので、恐ろしい結果を招いています。2020年だけで少なくとも40名のトランスジェンダーが殺害されています。その多くは黒色・褐色人種のトランス女性です。トランスジェンダーのヘルスケアを犯罪化し私たちの存在する権利を否定する政治家、そしてトランスコミュニティへの敵意をむきだしにしつづける巨大プラットフォーム(メディア)の人たちへ:あなたたちは血塗られた手の持ち主です。トランスコミュニティに向けられたその下劣な凶暴さと下品な怒りを解放しなさい。トランスジェンダーの成人の40%が自殺を試みたことがあると知っていますか。もうたくさんです。人々を傷つけているあなたたちは決して"キャンセル"※2などされていません。私は、トランスコミュニティの一員として、あなたたちの攻撃に黙っていません。
 私はトランスジェンダーであること、クィアであることを愛します。本当の自分自身に近づき、完全に愛することができるようになればなるほど、私は夢を見、心が成長し、丈夫になっていくように感じます。日々、虐待や脅迫や暴力に苛まれたり、ハラスメントを受けていたり、自己を肯定できずにいる全てのトランスジェンダーの人たちに:私はあなたのことを見ています、愛しています、そしてこの世界をよりよくするためにあらゆることをしていくつもりです。

 読んでくれて、ありがとう

 心からの愛を込めて 

エリオット」

※1 ノンバイナリーの方に対する三人称代名詞としてheでもsheでもなくtheyが用いられるようになっています。欧米では、Twitterなどでプロフィールに「he/him」「they/them」などと書く方が増えていますが、自身のジェンダーをどのように扱ってほしいかを表明し、ミスジェンダリングを防ぐ意味を持っています。エリオットが今回、heだけでなくtheyを挙げたのは、自身のジェンダーアイデンティティが完全に男性であるというわけではない(男性寄りのノンバイナリー)ということを示していると考えられます。

※2 キャンセル・カルチャーとは、著名人や企業による発言や行動が問題視された際、その問題の原因の究明や解決、再発防止などを議論するのではなく、ネットで叩いてその人や団体を「抹殺(キャンセル)」しようとする風潮のこと。最近では、SNSで過去の問題発言を掘り返す動きが加速し、時代状況などを無視してその発言や行動のみを取り上げ、叩くような事例も見られます。
 
 2014年のカミングアウト以降、GLAADメディア賞など多くの場でLGBTQの権利擁護について発言してきたエリオット・ペイジですが、今回のメッセージは、まるで一流の政治家の声明のような重厚さが感じられ、自分も当事者であるとしてトランスコミュニティを全面的に擁護していくという決意表明ともなっていて、本当に素晴らしく、感銘を受けました。
 これからもエリオット・ペイジはLGBTQコミュニティを代表するスピーカーとして活躍していくことでしょう。このカミングアウトと決意表明に大きな拍手を贈ります。
 


参考記事:
『ジュノ』のE・ペイジさん、トランスジェンダー公表(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=20201202040886a
エレン・ペイジ、トランスジェンダーであることを告白「私の名前はエリオット」(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a34837279/ellen-page-come-out-transgender-201202/
『アンブレラ・アカデミー』俳優がトランスジェンダーであることを公表、エリオット・ペイジに改名【声明全訳】(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17413884
エレン・ペイジがトランスジェンダー公表、「エリオット」に改名 ─ 「アンブレラ・アカデミー」出演は続投(the RIVER)
https://theriver.jp/elliot-page/
俳優のエリオット・ペイジ(元エレン・ペイジ)トランスジェンダーを公表(mashup NY)
https://www.mashupreporter.com/elliot-page-comes-out-transgender/

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