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理想の物件の同意書に「LGBTの方は入居お断り」…LGBT平等法の早期制定が求められます

記事日付:2020/12/24

 沖縄県在住の性的マイノリティの方が今月、入居しようと思っていた物件の同意書に「LGBTの方は入居お断り」と書かれていたのを見て契約をやめたという経験を語った動画が反響を呼びました。これをBuzzFeedが記事として取り上げました。
  

「理想の物件で『やっと見つかった!物件探しはもう終わり。ここに住むぞ』と思いました。担当の方から同意書を受け取り、内容に目を通しました。その同意書には『LGBTの方は原則お断り』との内容が記載されていました」
 沖縄県在住のタスクさんは半年ほど新しい物件を探していて、やっと理想的な物件にめぐりあったものの、不動産会社の担当者から渡された同意書を見て、物件の契約をやめました。「LGBT」「外国人」「精神疾患のある方」などの入居を断る、差別としか考えられない内容だったからです。その一文を見て「混乱し、怒りがこみ上げてきた」タスクさん。担当者に理由を聞くと、「このアパートに住んでいる方々のことを考え、そうしています。男どうしで手をつないでアパートの周りを歩いていたりすると、住人が怖がってしまうかもしれません」などと説明され、「驚き、何も言葉が出なかった」といいます。同意書には署名欄があり、「入居後に下記事項に反する事実が判明した場合は解約解除となりますのでご了承ください」とも記載されていました。
 タスクさんは、同意書にサインせずに帰宅しました。
「LGBTの当事者であることを伝えなければ、収入などの審査が通れば入居の契約はできます。でもそれは、本当の自分を隠すことになると思ったんです」
「カミングアウトして、自分に正直に生きてきた自分を誇らしく思うし、自分を大切にして生きたいため、入居の手続きはしませんでした。買い物は『投票』です。お金を払うということで、その会社をサポート(支持)することになります。このような会社には、お金を払いたくないと思いました」
 タスクさんは破り棄てようと思った同意書をテープでつなぎ、動画でこの経験について語ることにしました。「一人でも多くの人に知ってほしい」と思い、英語で話し、日本語の字幕をつけています。「怒りや批判だけでは何も変わらない。まずは事実を知ってほしい」という思いから、起こったことは述べつつも、ポジティブな内容にするよう心がけたといいます。
 入居を検討していた物件は、外国人も多く住む地域にありました。
 タスクさんは「宗教や肌の色、国籍、性自認、性的指向などで他者を判断するのではなく、一人の人として見てほしい」と語りました。
「私は沖縄で生まれ育ちましたが、多様性にあふれていて本当に良い場所です。カミングアウトしてからも、これまで差別を受けたことありませんでした。いろんな人を歓迎する土地であってほしいです」
「私は自分のことを男性とも女性だとも思っていません。そんな私は、『誰でもトイレ』のように、どんな人でもウェルカムな(歓迎されている)場所があるというだけで安心感を得られます。このように、不動産も、みんなを温かく受け入れるような環境になってほしいと思います」
 Instagramに載せた動画は47万回以上再生され、「こんな事実があることに衝撃を受けた」「私たちの世代から偏見や差別をなくしていきたい」など、国内外から400以上のコメントも寄せられました。同性カップルからは「引っ越しの時に同じような経験をしました」という声もありました。


 2018年にSUUMO(リクルート住まいカンパニー)は同性カップルの家探しの実状に迫る調査の結果を公表しており、家探しに苦労したという回答が4割に上っていました。また、同年には「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」を実施し、男性カップルの入居を断ったことがある回答者が8.3%、女性カップルでは5.7%との結果が出ていました。今後も「入居してほしくない」と答えた回答者も20%を超えました(男性カップル27.4%、女性カップル25.9%、トランスジェンダー20.3%、単身ゲイ22.8%、単身レズビアン20.4%)

 例えば2015年に施行された渋谷区の条例では区内の事業者に対してLGBTQへの理解を求める条文もあり、同性パートナーシップ証明書があれば不動産屋でも断られないだろうと期待されますが、特にそのような方針を打ち出していない、同性パートナーシップ証明制度もないような自治体では、あまり期待できません。同性カップルの宿泊の拒否を違法と定める旅館業法のような法律は、不動産に関しては現状なく、大家さん個人が「LGBTお断り」と強固に主張する場合、それを取り締まることはできないようです(ちなみに国籍を理由として賃貸借契約を拒否することに対しては違法であるとの判例が出ています(詳細はこちら
 早稲田大学法学部の棚村政行教授は「LGBTの人たちに入居拒否などの差別的な対応をする業者に対しては、行政が指導できると考えられる」と述べていますが、例えば沖縄県の宜野湾市のように性の多様性条例を議会で否決したような自治体で、行政に指導を求めることが現実的なのかどうか…。
 多くの場合、こうした差別に遭い、住んでいる自治体の支援も期待できない当事者は、泣き寝入りを余儀なくされていると考えられます。
 
 では、このような悲劇が繰り返されないようにするためには、どうしたらよいのでしょうか。
 BuzzFeedの記事で松岡宗嗣さんが強調しているように、早急な法整備(LGBT平等法)と、周知の徹底が必要だと言えます。
「性的指向や性自認を理由とした差別をしてはいけないというルールが日本には今ないので、まずは法律が必要です。法律があればオーナーに(差別をしてはいけないと)周知する根拠にもなりますし、具体的にそのような差別が起きたときも、例えば民事訴訟の根拠にすることもできます」
「法律で差別禁止を明記し、LGBTもそうでない人も平等に扱うための土台を作ったうえで、実際に運用面で変わっていくよう、不動産会社や大家に対しても周知・啓発を進めていく必要があります」



参考記事:
「LGBTの方は入居お断り」同意書にあった一文。その部屋の契約をやめた当事者が動画で伝えたこと(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/lgbt-fudosan

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