LGBT関連ニュース

アベプラで男性の性暴力被害者の貴重な証言が放送されました

記事日付:2020/10/20

 国は今月1日、性暴力やDVへの対策を強化するため、内閣府の「暴力対策推進室」を格上げして「男女間暴力対策課」を設け、また、性暴力被害に遭った人が相談しやすいよう、全国共通の短縮ダイヤル「#8891(はやくワンストップ)」を開設しました。それ自体はとてもよいことですが、「男女間暴力対策課」という名称について、性的マイノリティの被害者が声を上げづらくなるのではないか、などの指摘も上がっています(こちらに、虹色ダイバーシティの村木真紀さんと、ジェンダー問題に詳しい治部れんげさんが語った記事が出ていますので、ご覧ください)
 
 性犯罪の中で最も重い罪である「強姦罪」は、明治以来変わっておらず、男性から女性への性暴力しか想定されていませんでした(男性→女性以外の性暴力は「強姦罪」ではなく、一段軽い「強制わいせつ罪」が適用されていました)。これが改められたのは3年前のことで、「強姦罪」が「強制性交等罪」となり、被害者が男性の場合も女性と同等に扱われるようになりました。(なお、「強制性交等罪」の見直しが進められている現在、「強制性交等罪」に、女性から女性の性暴力など、より広く性的マイノリティの性被害の実情を反映することを求め、市民団体が法相に要望書を提出しています)
 
 以前からLGBTQに関するテーマを積極的に取り上げてきた『ABEMA Prime』では、「LGBT特集ウィーク」として、「バイセクシュアルとは?理解されにくい実態に迫る」など、性の多様性に関する様々な特集を放送していますが、10月13日の「男性の性暴力被害 見えない実態は?当事者に聞く」では、男性の性暴力被害者と、男性やセクシュアルマイノリティの自助グループを主宰する支援者へのインタビューが放送されました。「男性は強く、たくましい」「性被害に遭うはずはない」という思い込み(バイアス)から、男性の被害者が訴え出ることは難しく、顧みられる機会が少ないのが実情で、男性の被害者の方の証言は、たいへん貴重だと言えます。ここで(性暴力の生々しい描写は伏せながら)簡単にご紹介します。
 

 りういちさん(仮名)が性被害に遭ったのは小学6年生の時で、近所に住む幼なじみの男子中学生の家で、被害に遭いました。高校時代にも被害に遭い、このような同性からの性被害を受けた結果、りういちさんは男性そのものを恐れるようになり、男子トイレに入れなくなったといいます(多目的トイレを使うしかないそうです) 
 悩みを友人に打ち明けても、「こいつホモられた」「やっぱり気持ちよかったんだろ?」と笑われ、相談することもできなくなってしまったといいます。また、友人からクラスに「アウティング」され、しばらく女子が口をきいてくれなくなったという二次被害に遭ったそうです。
 りういちさんは現在、福祉施設で働いていますが、男性の利用者とあまり会話をしないことを指摘されました。男性に対する恐怖を感じる一方で、同性愛者かもしれないという考えも頭をよぎり、うつ病も発症。「女性との交友体験もありましたが、男性との性体験というのが頭に染みついてしまって、どうしても男性との性被害体験を消し去りたいかのように、逆に女性に対しても敏感になってしまった」
 りういちさんは今年1月からフラワーデモ(性暴力の根絶を目指すデモ)に出るようになり、スピーチもしてみたそうです。「参加者の皆さんは主に女性でしたが、皆さん笑わず、頷きながら真剣に聞いてくださいました」

 自身も性被害者で、自助グループ「RANKA」を主宰している玄野武人さんは、「前提として、同性同士が互いに同意の上に愛し合うのが同性愛であって、同意を無視して性的接触を行うことは性暴力です。そこをまずはしっかり区別して、理解してほしいと思う」と語ります。
「私たちの社会には『男性は性被害に遭わない』『遭っても傷つかない』『傷ついても支援などいらない』という、“三重の否認”があるため、男性の被害者は加害者から傷つけられた上に社会からも傷つけられるという二重の被害を背負っていくことになります。加害者が男性だった場合、『なぜ、自分が選ばれたのか』『自分が悪かったのか』、あるいは『自分はゲイなのか』といった疑問が共通して出てきますし、被害者が同性愛者だった場合、『性暴力の影響でゲイになったのか』という疑問も持ちやすいのです」
 
 男性被害者と加害者との関係を見ると、職場や学校の関係者も少なくないそうです。
 加害者の性別の内訳を見ると、女性が83%、男性が17%で、男性の被害者は決して少なくありません。
 ファッションカンパニー「ウツワ」代表のハヤカワ五味さんは、「子ども、女の子、かわいい動物の場合は共感されやすいが、おっさんになると『かわいそうランキング』は低いとみなされてしまいがち。本人の気持ちを抜きに、『女性からされたならいいじゃん』と茶化されることも多いと思う。ハラスメントは強い人から弱い人に起こるものである以上、女性の社会進出が増えれば、女性が加害者になることも増えてくると思う」と指摘します。
 玄野さんは、「もともと性暴力被害は腕力や暴力が伴っていると思われがちですが、人間関係を利用し、“NO”と言えない状況で被害に遭うことも少なくない。やはり知り合いや知人の場合は言い出しにくく、顕在化しないケースが多いので、暗数も多い」と語りました。
「司法・行政関係の対応は圧倒的に変わりました。ただ、一般の方への啓発はこれからです。皆さんが被害を信じて聞いてくれるようにならなければ、本当の意味で望ましい状況にはならないと思います」
 
 
 GQ JAPAN「「男だっていうのに、まさか」とはいうけれど……米軍“レイプ”事情」や、クーリエ・ジャポン「「真の男」はレイプされても抵抗できるはず…だから誰にも言えない」「「誰か、僕の話を聞いてくれ」男性の性被害者たちの心の叫び」などの記事で伝えられているように、海外では近年、MeToo運動とも関連して、男性から男性への性暴力の深刻さがクローズアップされています。男性被害者がなかなか声を上げられないという実情も明らかになってきています(被害者の81%が、名乗り出ることができないという推計があるそうです)
 米軍関係者のPTSD診療に携わっている医師は、「レイプ犯はゲイだから男を犯すのだと誤解する人が多いのですが、たいていゲイではないのです。これはセックスの問題ではなく、力と支配の問題なのです」と語っています。こちらの記事でも、「ほとんどの性暴力はストレート男性によるもの」「LGBTQが性暴力被害に遭う確率はシスジェンダー・異性愛者よりも高い」と書かれています。
 
 性暴力は、性欲というよりもむしろ支配欲の表れである、とはよく指摘されるところです。相手が男性だろうが女性だろうが関係なく起こるということ、状況によっては誰もが被害者になりうるということを踏まえ、障害を持った方や性的マイノリティなど、より脆弱な人々への配慮もしながら、予防や支援の施策が進められることを期待します。

 

参考記事:
「男性が性被害に遭うはずはない」「女性からの被害ならいいじゃないか」信じてもらえず、茶化され…声を上げられない男性の性暴力被害者たち(BLOGOS)
https://blogos.com/outline/491374/
男性の性暴力被害 見えない実態は?当事者に聞く(ABEMA TV)
https://abema.tv/channels/abema-news/slots/E8FGSrxfmFRARm
新設の「男女間暴力対策課」はLGBTの性暴力を扱わないのか(NEWSポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20201018_1604945.html

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