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「BRUTUS、お前もか…」男友達を好きになった中学男子への「性が混乱している」「僕は踏みとどまって立派な女好きになった」との回答が多くの批判を浴びています

記事日付:2020/10/18

「小学生の頃から仲がよかった男友達を、どんどん好きになる自分がいます。それは恋愛として、です。その気持ちに気がついてから絶望する日々でした。今の関係を壊したくないので、あくまでも自然体で振舞っていますし、できればこの感情を沈めたい。どう踏ん切りをつければいいと思いますか?」(15歳中学男子)というお悩み相談に対して、「淡い同性への共感っていうのは、性が混乱している時期にはありますよね。そこで踏みとどまるか、とどまれないか。僕は踏みとどまって立派な女好きになりました」「どれだけその子を思ってオナニーできるか、そうやって肉欲に昇華して踏ん切りがついたりしないかな」「好きな感情をみだらな思いにシフトして乱して汚してしまうとか、踏ん切りつけたいなら、それくらいのことをやってもいいのかなと思います」との回答が掲載されました。


 これは『BRUTUS』のお悩み相談コーナーに掲載されたもので、3人の回答者のうちの1人である劇団『大人計画』主宰の松尾スズキさんが書いたものです(なお、他の2人の方の回答は素晴らしいと評価されています)
 これを読んだ方が、「同性を好きになる気持ちを「気の迷い」だと言わんばかり」とTwitterに投稿し、広く知られるところとなり、「踏ん切りをつけるための処方箋」として一定の理解を示す方もいらっしゃる一方、多くの当事者やアライの方が、批判的なコメントを上げています。
「踏みとどまる、とかいう話ではない」
「1950年代頃のお悩み相談と変わっていない」
「どこを取ってもLGBTQの自己肯定感をダダ下げる内容で、このあまりに時代錯誤な回答には、ただただ呆れ果てる」
「松尾さんの舞台を何度も観に行ってるけど、それこそなんでもありで、もっと考えの広い人だと勝手に思ってました。なんだか、松尾さんを見る目が変わりますし、こんなものを載せるBRUTUSもこの時代錯誤!って思います」
「どうしたマガジンハウス。どうしたBRUTUS。心底がっかり」
などなど。

 多くの皆さんが指摘しているように(これを読んでいらっしゃる方もご承知かと存じますが)、松尾さんの回答は、ゲイが男性への恋愛感情を「踏みとどまって」「女好きに」なることなどできないということを理解していないところが、決定的に誤っていると言えます。確かに思春期の頃に異性を好きになる経験をすることも同性を好きになる経験をすることもあるでしょうし、性的指向が揺れ動く方もいらっしゃいますが(決して「気の迷い」ではありません。クエスチョニングという呼び名があります)、だからといって、人は性的指向を自分の意志で変えられるわけではありません。この15歳の男の子の性的指向は定かではありませんが、もしゲイだとしてもバイセクシュアルだとしても、異性愛者「になる」ことを当然のように勧めるのは、「同性愛者だらけになったら…」という発言と同種の差別を孕んだ発言と見なされてしまいます。
 実は20年以上も前に、同じ劇作家である中島らもさんが「明るい悩み相談室」(朝日新聞大阪日曜版)で、「同性に対しても思いを抱くのはよくあることです。大人になるにしたがって、ちゃんと異性を愛せるようになります」というよくある回答に対して「他人事だと思って、よくこんないい加減なことを言うもんだ」「現実にたくさんあふれ返っている同性愛の人たちは何なのでしょうか」「同性愛は不自然だとか隠花植物だとかいう差別のされ方をよくされますが、有史以前からの存在を示す古代文明の資料や、戦国時代の「衆道」の公然ぶりなどを見ると、自然の摂理に反したものだとは思えません」「無理をして自分は異性が好きなのだ、と自己暗示をかけて、あげくの果てに偽装結婚をして相手まで不幸にする必要はどこにもありません。すてきな彼を見つけてください」という素晴らしい回答をしていることもTwitterで紹介され、反響を呼びました。
 また、著名なゲイ(ドラァグクイーン)のライターであるエスムラルダさんが、「私だったらどう答えるかな?と思い、書いてみた」としてTwitterにお悩みへの回答を上げていて、こちらも素晴らしいと賞賛を集めています。
 
 今年に入って、(これだけ世の中でLGBTQを支援する動きが広まっているにもかかわらず)映画や演劇やメディアにおける、LGBTQへの差別的な発言や行ないが目立っています。特に、個人の差別的な発言をメディアがノーチェックでそのまま掲載してしまうという「事故」が多く発生しており、今回も同様のケースと言えます。
 監督・演出家や脚本家や俳優の方は、世の中に存在する人々を描く表現者として、(たとえ悪意がない場合であっても)誤解や偏見に基づく言動やステレオタイプな表現が当事者を傷つける可能性があるということや、LGBTQについての基本的なことは理解していただきたいですし、メディアの方は、問題がある発言があった際にチェックできる体制を整えていただければ、今回のように人を傷つける事や当事者からの批判が少なくなると思います。
 
 ちなみに、映画『マティアス&マキシム』がまさに、この中学男子と同様の苦悩を描いています。マティアス(30歳)は社会的地位もあり、女性の婚約者もいて、という男性ですが、ふとしたことがきっかけで、おさななじみの同性の親友マキシムに恋愛感情を抱くようになり、激しく葛藤するのです。映画では、だれ一人、同性を好きになることへの嫌悪など示さず(彼の感情に気づいた婚約者がサポートするくらいです)、二人は、惹かれ合いながらも、子ども時代から築き上げてきたかけがえのない友情が、恋愛感情のもつれによって壊れてしまうことを恐れるのです。
 個人的に、お悩み相談を寄せた15歳の彼には、ぜひこの映画を観てほしいな、と思います。

(後藤純一)

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