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新教皇レオ14世はLGBTQにとってどんな人なのでしょうか
映画『教皇選挙』の影響もあってかつてないほど注目を集めたコンクラーベが8日、バチカンで行なわれ、米国出身のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が選ばれ、レオ14世と名乗ることが発表されました。米国出身の教皇が誕生するのは初めてです。
システィーナ礼拝堂の煙突から教皇の選出を知らせる白い煙が上がり、サンピエトロ大聖堂の鐘が鳴らされ、歴史的な瞬間を見届けようとサンピエトロ広場に集まった人たちは歓声を上げました。イタリア人の男性は「次の教皇に期待することは、平和、平和、平和だ。戦争を回避し、平和を実現するために一層のメッセージを送ってほしい」と、アメリカから訪れた男性は「あまりにも多くの人々が世界で傷つけあうなか、私たちが思いやりをもてるように影響力を発揮できる教皇であってほしい」と語ったそうです。
そんな新教皇レオ14世の誕生が、世界のLGBTQ(性的マイノリティ、クィア)にとってどのような意味を持つのかという点も注目されます。
世界のカトリック信者の数は最新となる2023年の統計で14億600万人に上ります。教皇はその頂点に立つ指導者として、カトリックのみならず世界の趨勢にも影響を与えます。
4月に亡くなった前フランシスコ教皇は、戦後の教皇のなかでも最も同性愛に寛容で、同性カップルの権利を保障する法を認めるべきだと発言し、司祭が同性カップルを祝福することを承認し、(教会内の保守派からの反発も招きつつ)LGBTQのカトリック教徒にとって大きな前進となりました。LGBTQだけでなく女性のために、また、移民や難民のためにも闘い、改革を続けた方です。
一方、新教皇のレオ14世は、教皇庁で司教省長官として前教皇を支え、外遊にも同行していた方で、貧しい人々や移民に寄り添ってきたことで知られ、前教皇からも信頼を置かれていたそうですが、米『ウォールストリート・ジャーナル』紙によると、同性カップルへの祝福の是非など教会内で意見の分かれる問題では発言せず、教会の結束を重んじてきたといいます。
また、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、プレボスト枢機卿が2012年、同性愛者を引き合いに欧米メディアや大衆文化が「教義に反する信念や慣習を助長している」と述べ、批判的見解を示したと報道しています。司教としてペルーで在任中、学校でのジェンダー教育に反対する姿勢を示したほか、同性愛者に対しても一定の距離を置く発言をしたとも伝えられています。
さらに、朝日新聞によると、「前教皇の進めた多様性を重視する改革をめぐっては、同性カップルの祝福を受け入れないアフリカの司教らの意見に理解を示す一方、教義にかかわる重要な問題を議論する世界代表司教会議(シノドス)※の取り組みを支持。今回の候補者の中では中道派とみられていた」とされています。
※世界代表司教会議(シノドス)は女性や同性愛者の包摂をたびたび検討しており、2014年には「同性愛者らはカトリック社会に恩恵をもたらす」との報告書を上げています(教会内からの強い反対で削除されましたが)。2023年には前教皇によってシノドスでの女性の投票権が認められました
このように、現時点では、どうやらレオ14世はフランシスコ教皇ほどLGBTQに寛容ではなさそう…ということが言えそうです。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、(米国の)LGBTQコミュニティは今後の成行きを慎重に見守っていると報じています。
新しい教皇にレオ14世が選ばれたことについて、国際政治史が専門でバチカンに詳しい日本大学の松本佐保教授は、NHKの取材に対し、「弱者に寄り添うという点でフランシスコ前教皇の路線を引き継ぎながらも、女性の助祭への登用などについては保守的な考え方だともみられ、前教皇が推し進めた改革に反発していた保守派を抑えることができるというメリットがある」と述べています。さらに、「レオ14世は、移民を排除するようなアメリカのトランプ政権の考え方とは相いれない部分がある」と指摘し(こちらの記事でもトランプ政権の政策に一貫して批判的な姿勢だったと報じられています)、「国際情勢が少しでもよい方向に向かうようふさわしい資質を備えたアメリカ人の枢機卿を選んだという面もあるのではないか」としています。「国際的な調和、国際秩序を安定させることができるローマ教皇が求められている。レオ14世は、そういう存在としてふさわしい人として選ばれたのではないか、選ばれたということであってほしい」
参考記事:
新ローマ教皇にレオ14世 アメリカ出身のプレボスト枢機卿 選出(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250509/k10014800461000.html
米国から初のローマ教皇誕生 レオ14世、移民に寄り添う(共同通信)
https://www.47news.jp/12553480.html
新教皇に期待、歓迎のメッセージ 性的少数者は慎重な見方 国際社会(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025050900329
ローマ教皇にプレボスト枢機卿 初の米国出身 教皇名はレオ14世(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/AST575G70T57UHBI00PM.html
「対話をもって、出会いを通じて互いに橋を架けましょう」 新教皇にレオ14世、初の米国人(産経新聞)
https://www.sankei.com/article/20250509-BGZG6TDQPFP3FAFYSB5JOXIF64/
ローマ新教皇にプレボスト枢機卿 初の米国出身者(The Wall Street Journal)
https://diamond.jp/articles/-/364512
レオ14世、教皇になる前にSNSでトランプやヴァンスを批判していた?本人とみられるアカウントが注目される(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_681d4a73e4b007ccedafabfa
第267代ローマ教皇にプレボスト枢機卿、教皇名は「レオ14世」 初の米国出身者(クリスチャントゥデイ)
https://www.christiantoday.co.jp/articles/34757/20250509/2025-papal-conclave-elects-pope-leo-xiv.htm