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5月17日、仏プロサッカーリーグの今季最終戦で選手がレインボーのバッジを着用

 5月17日のIDAHOBIT(国際反ホモフォビア、バイフォビア、トランスフォビアの日)に、フランスのプロサッカー1部リーグ「リーグ・アン」で行なわれた今季最終戦で、選手たちはユニフォームの右袖にLGBTQ支援のレインボーカラーをあしらった特別なバッジを着けて試合に臨みましたが、なかにはレインボーの部分をテープで隠す選手もいました。反ホモフォビアバッジ着用をボイコットした選手に対してフランスのマリー・バルサクスポーツ相は非難のコメントを発しました。
 
 
 例年、IDAHOBITの5月17日の試合に際しては、選手が派手なレインボーカラーのネームプレートやアームバンドを着用してきたそうですが、今季のリーグ・アンはユニフォームの右袖にレインボーカラーをあしらった特別バッジを着けるという控えめなアプローチを選択しました。しかし、途中出場したオリンピック・リヨンのネマニャ・マティッチ選手とル・アーヴルのアフメド・ハッサン選手はそれすらも拒み、右袖のレインボーカラーの部分をテープで隠して出場しました。試合の最中、その行動はほとんど気づかれなかったものの、翌日には大きな波紋を呼びました。 
 ここ数年、フランスリーグはホモフォビアに抗する取組みを行なってきましたが、マティッチ選手らと同じような行動に出る選手はこれまでにもいたため、問題視されてきました。昨シーズンはモナコのモハメド・カマラ選手がキット上のレインボーカラーを隠したことで4試合の出場停止処分を受け、ナントのモスタファ・モハメド選手はここ3年間、反ホモフォビアキャンペーンへの参加を見送っています。
 スポーツ担当大臣のマリー・バーサック氏は、この選手たちの行動に対し激しい非難の声を上げ、「この選手の立場を強く非難します。スポーツ、特にサッカーにおいて、連帯してホモフォビアに声を上げることを怠る言い訳はありません。これはプロとしても道徳的にも許されないことです。このことをはっきり伝えることが重要です」と力強く語りました。
 

 欧州では、サッカー界に根強く残るホモフォビアの問題に厳しく対峙する動きが広がっています。

 ロンドンのプレミアリーグに所属するフラムFCはこの3月、ナイジェリア代表DFカルヴィン・バッシーに対する人種差別的、同性愛嫌悪的中傷に関して、クラブ公式サイトで「非常に憤慨している」「我々は、サッカー界においても社会においてもあってはならないこの忌まわしい行為を強く非難する。このような行為はまったく容認できないものであり、我々はカルヴィン・バッシーを全面的に支持し、今後も全面的に支援する」「我々は関係当局と協力し、これらの卑劣なメッセージの発信者を特定し、彼らに対し最も強力な措置を取るために全力を尽くす」「我々はあらゆる形態の差別に対して断固とした姿勢を維持することに尽力し、敬意と多様性の環境を育むことに専心する」との力強い声明を発しています。

 UEFAはマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督に向かってレアル・マドリーの一部のファンがホモフォビックなチャントを歌ったとして、レアルに罰金3万ユーロ(470万円)の支払いを命じました。レアルはスタジアムの一部閉鎖処分も受けており、本拠地サンティアゴ・ベルナベウで行なわれる次の欧州コンペティションでは最低500席を閉鎖しなければいけないとのこと(ただし、この一部閉鎖処分は2年の執行猶予がついています)

 イングランドサッカー協会は今年4月、リーグ2のトランメア・ローバーズに所属するサム・フィンリー選手に対し、13試合の出場停止処分と2000ポンドの罰金を科しました。フィンリー選手は1月に行なわれたウォルソールとの試合で相手チームのジャミール・マット選手に対して同性愛差別的発言をしていたとのことです。同選手は2016年にも同様の発言を審判に対して行ない、4試合の出場停止処分を受けていました。

 2021年にカムアウトした豪Aリーグのジョシュ・カバッロ選手は、「サッカーの世界は、ゲイであることを公表している選手にはとても危険な場所です。誰もが対処し、乗り越えられるものではありません。この世界で受け容れられるには、まだまだ長い道のりが必要だと思います」と語っています。

 フランス代表でOGCニースのディフェンダー、ジョナタン・クラウス選手は、サッカー界に根強く残るホモフォビアの問題について5月16日、「学校から若い世代に教育を施す必要があります。今の子どもたちに聞くと、10歳や12歳で『ゲイの友達がいても構わない』と言う子は1人か2人で、残りは反対するんです」と早期教育の重要性を訴えました。

 クラブやユースアカデミーを頻繁に訪問し、選手たちと直接対話を続けている元プロサッカー選手で活動家のウィセム・ベルガセムは、「本当の変化は口先だけでは生まれない。選手たちへの研修や意識啓発の場はどこにあるのか? トレーナーが率先して動き、関わり、説明し、理解を促すべきだ」と語りました。若い選手からの「ゲイは大嫌いだ」という衝撃的な言葉にも直面しながら、そのような生々しい対話がしばしば深い意識の変化へつながっていると語り、「なぜこの取り組みを全国のすべてのクラブで継続的なものにしないのか?」と、組織的で包括的な戦略の必要性を強く訴えました。「この闘いは今なお見過ごされがちだ。声を上げることは拍手を浴びるどころか、反発を招くこともある。しかし、声を上げ続けることこそが重要だ。なぜなら、ホモフォビアは人の命を奪うのだから」

 日本だと「ゲイの友達がいても構わない」という子のほうが多そうですが(台湾などはもっと多いでしょうね。ジェンダー平等教育法があるので)、フランスの子どもは意外とホモフォビアが激しいということや、スポーツ相から非難されながらもレインボーカラーの着用を拒む選手もいるという現実を知ることができました。だからこそ、IDAHOBITの取組みがまだまだ必要なんですね。
 

 ホモフォビア以上に深刻なのはトランスフォビアです。(米トランプ政権が追い打ちをかけていることもあり)世界的なバックラッシュが続いています。
 サッカー界でも、英最高裁判決を受けてイングランドサッカー協会(FA)がトランス女子の女子サッカーへの参加を禁止するルール変更を行なうということがありました。FAは「大好きな競技を自認する性でプレーしたいと望んでいるだけの人々にとっては、困難な事態になると理解している。現役の登録済みのトランスジェンダー女性に連絡を取り、この変更について説明し、彼女たちが引き続き試合に参加し続けられる方法を説明している」としています。英国の数百万人のアマチュア選手のうち、登録済みのトランス女性は30人に満たず、プロリーグでは1人もいません。トランスジェンダー権利擁護団体「Football vs Transphobia」のナタリー・ワシントン氏は「この件について話をしている私の知り合いたちは『私にとってサッカーはこれで終わり』と言っている」「ほとんどの人は安全と安心の面から、男子の試合に出てプレーできるとは思っていない」と語っています。
 イングランド6部のハックニー・ウィメンFCでプレーしているフェイ・フルニコス選手は「私はホルモンを服用していて、生まれながらの女性と同じエストロゲンとプロゲステロンの値を示しており、テストステロンはほぼゼロ。普通とされる女性の体と非常に似ています」と語っています。「トランスジェンダーは生物学的女性よりも強く、本物の女性から地位を奪っていると考えられています。しかし研究は逆の結果を示しています。トランス女性のスポーツにおけるテストステロンのレベルにはすでに厳しい制限が設けられています。これは女性らしさという覇権的なモデルに従わないあらゆる女性に対しての攻撃でもあります。もし我々トランスジェンダー女性が本当に問題になるほど有利であれば、みんな英国女子サッカー選手のトップクラスになるはずです。しかし現実には3部以上の女子リーグにトランスジェンダーの選手は一人もいません」
  
 

参考記事:
反同性愛嫌悪のLGBTバッジをテープで隠す選手も…仏スポーツ大臣、試合ボイコット選手を非難 「プロとして過ち」(Qoly)
https://qoly.jp/2025/05/20/1sgc1gb9-iks-1
リーグ・アン選手たちのLGBT旗隠しが波紋を呼ぶ(FOOTBOOM)
https://www.footboom1.com/jp/news/football/2568924-ligue-1-players-spark-controversy-over-lgbt-flag-cover-up

マンU戦で活躍のフルアムDFが人種差別被害、同性愛嫌悪的な中傷被害 クラブが声明発表「忌まわしい行為を強く非難」(SOCCER KING)
https://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20250304/1994304.html

54歳の世界的監督に同性愛差別の歌…世界的強豪チームに罰金470万円の処分(Qoly)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/qoly/sports/qoly-nakvxnnj-iks-1

英4部トランメア・ローバーズMFフィンリー、同性愛差別的発言で13試合の出場停止(超WORLDサッカー!)
https://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=483463

世界で初めてゲイであることを公表したサッカー選手、サッカー界でカミングアウトすることの難しさを語る(Harper's BAZAAR)
https://www.harpersbazaar.com/jp/celebrity/athlete/a64247463/josh-cavallo-first-openly-gay-soccer-player-250321-lift2/

フランス代表ジョナタン・クラウスが語る、サッカー界のホモフォビア問題に立ち向かう思い(FOOTBOOM)
https://www.footboom1.com/jp/news/football/2564742-jonathan-clauss-opens-up-on-homophobia-challenges-in-football

「ホモフォビアは命を奪う」ウィセム・ベルガセムがサッカー界に求める具体的な行動(FOOTBOOM)
https://www.footboom1.com/jp/news/football/2566375-homophobia-kills-ouissem-belgacem-urges-concrete-actions-in-football

トランスジェンダー女性の女子試合出場を禁止 イングランド・サッカー協会(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/articles/c4g7j471y19o
元男性のトランスジェンダー選手、女子サッカー参加禁止判決に猛反論「それならなぜチェルシーに…」(Qoly)
https://qoly.jp/2025/05/02/mhkv4ok3-kgn-1

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