NEWS
移転費不支給についての審査請求を棄却された長崎のカップル、異性カップルと同等の扱いを求めて提訴へ
今年1月、事実婚カップルには認められる移転費の支給が認められず、大村市の同性カップルが審査請求へとのニュースをお伝えしていましたが、この審査請求について長崎労働局が請求を棄却したことがわかりました。お二人は「同性カップルも異性のカップルと同じように扱ってほしい」として今後、長崎地裁に提訴する方針です。
「移転費」とは、雇用保険受給者が職業に就くため、または公共職業訓練等を受講するために住居を変更する場合に支給される費用です。結婚している人が親族を伴って住居を変更する場合、その親族分の費用も支給される仕組みで、異性の事実婚カップルも対象に含まれています。しかし、2024年に大村市に転居し、住民票の続柄を事実婚夫婦と同じ表記にしてもらうという画期的な対応を認められた松浦慶太さんさんは、パートナーの藤山裕太郎さんの分の移転費を申請したものの、今年1月、厚労省が「同性パートナーは親族と認められない」として申請を却下したため、判断を不服として審査請求※を行なうことを決めました。
※審査請求は、行政不服審査法に基づいて定められた制度で、行政庁の処分や不作為に不服がある場合に行政庁に対して不服を申し立てる手続です。審査請求の目的は、国民の権利利益を保護し、行政の適正な運営を確保することです。裁判とは異なり、行政庁が処分の違法性や不当性の判断を行ないます。審理員による審理手続、行政不服審査会等への諮問等により公平・中立な審理が行なわれることになっています。書面審理を基本とする手続で、手数料はかかりません。不服のある方は、原則として処分を知った日の翌日から3ヵ月以内であれば、審査庁(各省庁の審査会や自治体の首長など)に対し、審査請求を提起できます。審査請求人は、裁決があった後の処分になお不服がある場合、裁決があったことを知った日の翌日か6ヵ月以内に地方裁判所に、原処分の取消を求めて訴訟を提起することができます。
4月25日、長崎労働局は、ハローワークの判断は雇用保険法や関係する法令に則ったもので「処分は正当」だとし、この審査請求を棄却しました。請求棄却の理由について、同性パートナーが親族に含まれないという解釈は以前から「全国で統一されている」とも記載しました。一方、検討過程で不支給は不当だとする意見も出ていたそうです。
松浦さんは藤山さんの分の移転費の支給を求めて今後、長崎地方裁判所に訴えを起こす方針で、「審査請求が棄却されて非常に残念だ。同性カップルも異性のカップルと同じように扱ってほしい」「移転費をもらえなくて当たり前、と諦めてしまう人も多い。だからこそ声を上げて判断を見直すきっかけにつながれば」とコメントしています。
男女の異性婚カップルであれば支給が認められる犯罪被害者給付金が、パートナーが同性であるがゆえに支給されず、裁判を起こし、最高裁で、同性パートナーも犯給法の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に含まれるとの歴史的な判決を勝ち取った内山さんのように、松浦さんと藤山さんは、同性カップルも異性のカップルと同じように扱われることを求め、裁判を決意しました。松浦さんも語っているように、これまでは諦め、泣き寝入りしてしまう方がほとんどだったと思われますが、誰かが平等を求めて声を上げ、闘っていくことで世の中が変わり、道が切り開かれます(移転費がほしいからではないことは、裁判費用などを考えると、明らかです)。これは、あとに続くすべての(戸籍上)同性カップルのための裁判になるはずです。ぜひお二人を支援しましょう。
参考記事:
長崎労働局 同性のパートナーの移転費不支給で審査請求を棄却(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20250430/5030023912.html
雇用保険の移転費「“親族”と申請の同性パートナー分の支給は?」国が審査請求棄却(長崎国際テレビ)
https://news.ntv.co.jp/n/nib/category/society/nid97ced8947ea43fca38eaf3ffb5a7cfd
大村・同性カップルの「移転費不支給」問題 労働局の審査請求棄却を受け提訴へ(テレビ長崎)
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20250430011
男性カップルへの移転費不支給 長崎労働局が審査請求を棄却 「安心して暮らせる権利認めて」(長崎新聞)
https://www.47news.jp/12521083.html