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ノルウェー・オスロのゲイバーで銃乱射事件が発生し2人が死亡…パレードは中止となるも人々は「私たちはここにいる、私たちはクィアだ、私たちは消えない」と訴えました

 ノルウェーの首都オスロの有名なゲイバー「ロンドン・パブ」とその周辺で25日未明、銃乱射事件があり、2人が死亡し、21人が負傷しました。警察はイラン系ノルウェー人の42歳男性を逮捕し、LGBTQを標的にした可能性のあるテロ事件として捜査しています。オスロでは25日にプライドパレードが予定されていましたが、警察の勧告に従い、パレードは中止されました。それでも事件現場近くを数百人が「私たちはここにいる、私たちはクィアだ、私たちは消えない」と叫びながら行進しました。


 事件は、LGBTQに人気の「ロンドン・パブ」の中とその近くのジャズクラブ「ヘル・ニルセン」、もう1軒別のパブで起きました。調べによると、現地時間午前1時15分ごろに銃撃が始まったといいます。目撃者によると、容疑者はバッグから銃を取り出し、発砲しはじめました。その場にいた人たちは、地面に伏せたり逃げ出したりしました。店内に80~100人が集まっていたそうです。銃撃で2人が死亡したほか、21人が負傷、そのうち10人は重傷だそうです。

 「ロンドン・パブ」で現場に居合わせた人たちは、店内に集まっていた80~100人が地下に避難したと話しました。
 ビリ・ブルム=ヤンセンさんはノルウェーのテレビ局に、「パートナーや家族に電話をしている人が大勢いた。まるで、最後の別れを告げるみたいに。おびえる人をなだめようとする人もいた」と話しました。
 ガラスの破片が飛んできたという人は、公共放送NRKに対して、「発砲があったと気づいてすぐ、ガラスの破片が当たった。発砲はどんどん続いたので、できるだけ大勢と一緒に奥のバーカウンターの中に逃げこんだ」と話しました。
 NRKの記者で、事件当時近くにいたオラフ・レンネベルグさんは、「バッグを持って現場に着いた男を見た。銃を取り出して、撃ち始めた」と話しました。
 現場にいた女性は地元紙『ヴェルデンス・ガング』に対し、実行犯は標的をじっくり見定めて発砲していたと話しました。「これはおおごとだとわかった瞬間、自分は走って逃げた。床には血まみれで動かない男性が倒れていた」 
 別の男性は同紙に、頭部を撃たれて倒れている人を大勢見たと話しています。

 警察は通行人たちの助けを得て、数分後に銃撃犯を拘束。現場で武器2丁を押収しました。犯人はイラン系ノルウェー人の42歳男性でした。
 警察は事件について、「これは憎悪犯罪(ヘイトクライム)だと捉えるだけの理由がある」として、「プライドパレードそのものが標的だったのか、ほかに動機があるのか調べている」と述べました。

 ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ首相は同日夜、BBC「ニューズアワー」に対し、容疑者は今年5月に当局の職務質問を受けているものの、当時は危険性はないと判断されていたと話しました。ノルウェーの情報機関PSTによると、容疑者は2015年以来、「イスラム過激派の疑い」があり、精神病の病歴もある人物として、当局が把握していたそうです。
 ノルウェーはテロ警戒態勢を最高レベルに引き上げたものの、同国の情報機関は、攻撃が続くという兆候は得ていないとしてします。

 ノルウェーのハラルド国王は、「私と家族は衝撃を受けている」と語りました。「自由と多様性と互いへの尊重を守るため、私たちは連帯しなくてはならない」と呼びかけました。

 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「罪のない人たちへの卑劣な攻撃にショックを受けている」とコメントしました。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「私たちは連帯すれば、憎悪に対してより強力に立ち向かえる」とコメントしました。

 アメリカでは、国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官が、「LGBTQI+の人たちを標的にしたオスロでの無差別乱射事件に、全員が衝撃を受けている」「被害者の家族全員、素晴らしい同盟国でもあるノルウェーの人たち、そしてもちろん、そこと世界中のLGBTQI+の人たちのことを思っている」とコメントしました。

 オスロでは25日、毎年恒例のプライドパレードが予定されていましたが、事件を受けて、警察の助言により公式には中止されました。それでも、当日、事件現場近くを数百人が行進し、「私たちはここにいる! 私たちはクィアだ! 私たちは消えない!」と連呼しました(※「We are here! We are queer!」はクィアコミュニティの合言葉です)
 50代の女性はAFP通信に対し、「こうして行進しているのは、素晴らしいと思う。そうでないと、犯人が勝ったことになる」と話しました。
 現場近くには、レインボーフラッグや花束が手向けられました。
 
 まだ犯人の動機などは明らかになっていないものの、プライドパレードの前夜に、人気のゲイクラブの中で銃を乱射しているのですから、LGBTQを狙った犯行であることはほぼ間違いないでしょう。
 2016年6月にフロリダ州オーランドのゲイバー「パルス」で起こった銃乱射事件を思わせる悪夢が、またしてもプライド月間に…しかもパレードの前夜に…このひどいニュースは世界のLGBTQコミュニティにショックを与えているはずです。
 26日にはニューヨークやサンフランシスコなど各地で一斉にプライドパレードが行なわれますが、おそらく、参加者は、悲痛な気持ちや亡くなった方への祈りを捧げるような気持ち、ヘイトクライムへの憤りを抱いていたのではないでしょうか。
 
 実はこのプライド月間には、未遂に終わりましたが、もう1件、パレードを狙ったヘイトクライムが計画されていました。
 6月11日、米アイダホ州コーダレーンで開催されたプライドイベント「プライド・イン・ザ・パーク」の会場付近で「ミニ軍隊」並みの装備で暴動を起こそうとした31人の男性が逮捕されました。防護マスクや盾などの装備を積んだトラックに乗り込むところを目撃した方が警察に通報して、未然に防がれたのでした。この集団は白人至上主義団体「パトリオット・フロント」のメンバーでした(詳しくはこちら
  
 チェチェンやアフガニスタンやイランなど、日常的にゲイの命が脅かされているような国だけでなく、同性婚が認められているような国でさえも、プライドパレードやLGBTQのたまり場を狙ったヘイトクライムがいまだに起こり続け、亡くなる方もいます(2009年には、コペンハーゲンで開催された「World Outgames」の陸上競技場で爆弾テロが起こっています)。いったいいつまで、LGBTQは殺され続けなければならないのでしょう…どうしたら世の中からホモフォビア(同性愛嫌悪)やトランスフォビアをなくしていけるのでしょうか。オスロのコミュニティの人々が「私たちはここにいる、私たちはクィアだ、私たちは消えない」と叫んだように、LGBTQをこの世から消し去ろうと目論む卑劣な輩に対し、沈黙するのではなく、LGBTQとアライが力を合わせ、声を上げていくことしかないのだと思います。いみじくもノルウェー国王がおっしゃったように、「自由と多様性と互いへの尊重を守るため、私たちは連帯しなくてはならない」のです。

 日本でも早速、青森レインボーパレードや名古屋レインボープライド、Transgender Japanが、オスロ銃乱射事件に対してメッセージを発しています。

 

参考記事:
ノルウェー 首都で男が銃を乱射 2人死亡 21人けが(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220626/k10013688821000.html
ノルウェー首都で銃乱射事件 23人が死傷 性的少数者を標的か(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000259197.html
ノルウェー オスロで銃乱射 23人死傷、警察当局「過激なイスラム教徒によるテロの疑い」(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/79476
ノルウェーで銃撃、2人死亡 首都中心部のナイトクラブ(共同通信)
https://nordot.app/913285521147232256?c=39546741839462401
ノルウェーで銃乱射、2人死亡 男を逮捕、テロ容疑で捜査(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062500544
ノルウェー首都のゲイバー周辺で銃乱射、2人死亡…テロ事件として捜査(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220625-OYT1T50196/
オスロのナイトクラブで発砲事件 2人死亡14人負傷(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/norway-shooting-idJPL4N2YC05Y
北欧オスロで性的少数者に人気のバー乱射、2人死亡 イスラム主義テロ事件と警察(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/61940496

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