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タイ国会で結婚平等法案が提出されていますが、政府はシビルパートナーシップ法を通す意向です

 5日に首都バンコクで16年ぶりの本格的なプライドが開催されたタイ。内閣が「シビルパートナーシップ法」の導入を進めていると報じられた後、法案がどうなったのか?についてはよくわからないままだったのですが、毎日新聞の記事やタイのニュースの日本語訳など複数の情報が入ってきました。わかる範囲で最新の動向をお伝えします。
 簡単にまとめると、2020年から政府が推進してきた「シビルパートナーシップ法」とは別に、2020年6月、野党・前進党から結婚平等法案(民法改正案)が提出され、今年2月に下院で審議され、高い支持を得ていたものの、再検討が必要とされ(「待った」がかかり)、たなざらし状態になっていました。が、6月8日、再度審議が始まり、提案した議員から国会で熱いスピーチが行なわれました。
 政府はシビルパートナーシップ法を再度閣議承認し、あくまでもこれを通す構えですが、LGBTQコミュニティと前進党は「シビルパートナーシップ法案は同性カップルを二級市民扱いするものだ」と批判し、下院に結婚平等法案をこそ承認してほしいと訴えています。

 
 2019年、タイでLGBTの国会議員(下院議員)が4人誕生したことはこちらのニュースでお伝えしていましたが、毎日新聞がそのうちの1人、野党・新未来党(現在の前進党)から出馬して当選した「カトゥーイ」のタンヤワット・カモルウォンラット議員をフィーチャーした記事を掲載していて、それによると、タンヤワット議員は、2022年2月初旬に下院で結婚平等法案(婚姻に関する民商法典を改正する案)の趣旨説明に立ち、「LGBTの人々が奪われた基本的な権利を求めるものです」と涙ながらに語る姿がタイのソーシャルメディアで話題になったそうです。趣旨説明は下院で3回必要な「読会」と呼ばれる審議のうち最初のステップでしたが、評決により、この法案は再検討が必要とされ(「待った」がかかり)、たなざらし状態になっていました。
 
 そして、Twitterで以前からタイの情報を日本語に訳していた@kullkcuさんという方が6月8日、この結婚平等法案(婚姻に関する民商法典を改正する案)が再び議会で審議された様子を伝えてくれました(記事の翻訳だけでなく、この結婚平等法案の概要や、審議の経緯もわかりやすく表にしてくれています)
 これによると、前進党が2020年6月に提出した結婚平等法案(民商法典改正案)は11月に下院の議題に盛り込まれ、今年2月に下院で審議されましたが、承認されず、政府がこれに「待った」をかけていた、しかし、この6月8日、結婚平等法案(民商法典改正案)が再審議されました。
 前進党の議員の方のスピーチが素晴らしいです。
「私は国会議員として謝りたい。40年、50年と家族として生きて来た人たちに、その人たちは、生きるか死ぬかというときに、配偶者に医療を受けさせる権利を持てなかったのですから。(中略)私は自分と同じ世代に伝えたい。これから家族を持ちたいと思っている世代に、そして家を持ちたい願う世代の人たちに、もっと希望を持たせたい。彼らはここにいる国会議員と同じように、婚約する権利も、配偶者を持つ権利も、家のローンを組む権利も、お互いに財産を管理する権利もある。大切なのは、若者たちに思いを致すことです。少年少女たちに、夕方の食卓でぎこちない会話を子どもたちと交わす親御さんにも、社会は多様性を受け容れるというメッセージを送ることです。子や孫たちはどこもおかしくないんだよと。今回の得票数がメッセージになることでしょう、君たちは他の人と平等に人生も将来も手にしているんだよと。なぜなら全ての人は平等だから。つまり、私たちは差別をしないんだというメッセージです」

 一方、タイ政府は7日の閣議で「シビルパートナーシップ法案」を承認しました。ラチャダー政府副報道官によると、2020年7月の閣議で承認された同法案は、法務省による再検証、公聴会での意見聴取などを経て修正され、国会法制評議会による検証を経て、再び閣議にかけられ、承認されたということです。今後は国会に提出される予定で、同法が施行された場合に影響を受ける関連法の改正作業も進められます。
 同法は、同性カップルにシビルパートナーシップの登録を認め、二人をシビルパートナー(シビルユニオン、シビル婚)として定義するものです。少なくとも一方がタイ国籍であり、双方が17歳以上で合意している同性カップルに適用されます。個人財産と共有財産、養子縁組に関して異性婚と同等の権利を有します。一方が死亡した場合、もう一方は、異性婚と同等に民商法に基づく相続権を有します。
  
 結婚平等法案を提出した前進党のPromsorn Weerathamcharee議員は、シビルパートナーシップ法案は「LGBTQコミュニティを二級市民として扱うもの」だと批判しています。
「私たちが求めているのは、人権です」
「私たちは今、すべての政党、すべての閣僚と下院議員が、この法案を承認し、私たちの人間としての扱いのレベルを引き上げることを期待します。結婚の平等は私たちへのプレゼントだと考えないでください、人間に与えられるべき権利の回復を意味する法制化だと思ってください」
 彼は、LGBTQはそうでない人と考え方や態度において何も異なるところはないと強調し、もしタイのLGBTQが結婚平等法で保護されれば、他の人と同じ人権を有していることの証明になると付け加えました。
「もしタイが結婚の平等を実現すれば、国際社会でタイが完全に市民の人権を擁護した国だと認められるでしょう」

 下院がこの訴えを聞き入れ、結婚平等法を承認するのか、政府のシビルパートナーシップ法で進んでいくのか、いずれにせよ、タイの結婚の平等(同性婚)は歴史的な局面を迎えていると言えそうです。東南アジアで初めて(日本より先に)同性カップルの権利を保障する法が成立する日が近づいているようです。見守っていきましょう。
 
 
 
参考記事:
タイの性的少数者「カトゥーイ」 当事者議員に聞く同性婚法制化(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220607/k00/00m/030/108000c
【タイ】同性カップルの権利を認める法案、閣議承認(NNA)
https://nordot.app/907314063621226496?c=39546741839462401
LGBTQ community rejects Civil Partnership Bill, calls for Marriage Equality Bill(NATION THAILAND)
https://www.nationthailand.com/in-focus/40016442

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