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ウクライナの10代のトランス男子が語る希望:「戦争が終わったらみんなでこの国を立て直そう。そして僕は性別変更するんだ」

 ロシアの軍事侵攻から1週間が経ちました。
 世界中からウクライナのLGBTQコミュニティにあふれんばかりのサポートと連帯が示されているそうです。キーウ・プライドのディレクター、レニー・エムソンは、国際LGBTQラジオ局「GlibberBeam」のインタビューで、「山ほどのメール、DM、ソーシャルメディアでの励まし…膨大なサポートに感謝しています。私たちは孤立なんてしていないと思えます」と語りました。
「私たちは2012年にプライドを立ち上げました。今年で10周年を迎えます。国会では今、アンチLGBTQのヘイトクライム法を制定しようとしています。これが成立すれば、私たちはようやくヘイトクライムから解放されるのです…。私たちは結婚の平等を認める法も議会に上げることが可能なのではないかと話し合っているところです」
「私たちは、LGBTQのプライドがロシアの最初のターゲットになることをよくわかっています。しかし、私たちはウクライナ軍が休まずに戦っていることも確信しています。私たちは希望を持ち、世界のコミュニティが立ち上がってこの戦いを支援してくれると信じています」
「私たちはウクライナがロシアになるとは思いたくありません。ロシアには人権がありません。ウクライナもそのような国になってほしくありません。戦っていくつもりです」
 
 3月1日には、キーウの人権団体「LGBT Human Rights Nash Mir Center」の事務所が武装グループに襲撃されるという事件が起こりました。ギャングはドアを壊し、事務所に侵入し、物を盗み、あるスタッフはひどく殴られたそうです。同団体のコーディネーター、Andriy Maymulakhinは最初、彼らをロシアのテロリスト集団だと思っていましたが、今はウクライナ人だったと思っているそうです。

 キーウに銃声が響き、ミサイルが落ちるなか、Zi Faámeluというトランス女性が、周囲の人がみんな国外に逃げたにもかかわらず、一人アパートにとどまっているとTwitterに投稿しました。仮に彼女が国境までたどりついたとしても、パスポートが彼女のジェンダーを正しく表記していないせいで、追い返される可能性が高いからです。18歳〜60歳のID上男性である者は国を離れることを認められていませんが、彼女のパスポートは男性のままなのです。ウクライナでは法的性別変更のハードルが高く、2017年までは精神科医の診断を得るために1ヵ月も精神病院に入院しなければならず、現在は緩和されましたが、それでも堪え難いものがあるといいます。
 Zi Faámeluは「もしパスポートが男性表記なら、国外に出ることは認められないと思います。これは戦争の中の戦争なんです」と記しています。
 

 一方、19歳のトランス男子、オレクサンドラ(仮名)は、自らの意志で国にとどまることを決めたとPink Newsに語りました。
 彼は、ほかのたくさんのトランスピープルと同様、もしロシアに支配されたら、自由に生きる権利や安全が危険に晒され、苦境に陥ると感じています。しかし、まだあきらめていません。彼はウクライナのLGBTQコミュニティの達成が失われることを望んでいません。
「僕は純粋にLGBTQを取り巻く状況は良くなり続けると信じてきました。何年か前は、よその国のほうが生きやすいと思ったこともあったけど、今は違います。ウクライナを離れたくありません。だってここが僕の国だから。友達はみんなここにいます」
 オレクサンドラが住んでいる街は、比較的静かで、安全に過ごせています。それでも、ロシアの侵攻は、彼のメンタルヘルスに大打撃を与えています。
「最初の数日間は最悪でした。僕の人生の中で最も長い3日間でした。今はマシになってるけど、もし大学が無くなったら、OKとは思えなくなるだろうな。トラウマになるような状況だと思います」
 多くのLGBTQのウクライナ人はロシアの支配下に置かれたらどうなるのかという不安を口にしています。その最悪のシナリオを、オレクサンドラは望んでいません。
「あらゆる意味で、ロシアは良くない。恐ろしくクィアフォビックな国だから。それは事実。友達はロシアに真っ先に殺されるんじゃないかと心配してくれました。ソーシャルメディアから、クィアの活動に関わっている痕跡を全部消し去ったほうがいい、とも言われました」
 彼はトランスピープルが、パスポートと見た目が異なるせいで、国外に出ようとした時に直面する困難のことも心配しています。
「この問題に直面している人を何人も知っています。キーウの友達は、2018年に医療的な性別移行を始めましたが、IDは変更できませんでした。就職も困難で、銀行の取引もできないんです」
 状況は深刻ですが、オレクサンドラは、未来を見据えています。たとえ状況が深刻だとしても、彼は希望を失っていません。
「僕は楽観的なんだ。恐ろしいよ。でも、僕らはやれる。ウクライナのクィアピープルは状況をより良くしていける。怖いし、不安だけど、この国に希望を感じてもいます」
「ウクライナでの自分自身の未来が見えます。戦争が終わったら、みんなでこの国を立て直していきましょう。そして僕は念願の性別変更をしようと思っています」


 一日も早くウクライナに平和が戻り、復興が始まり、LGBTQの権利回復が途切れることなく進み、オレクサンドラやZi Faámeluのようなトランスジェンダーの方たちが法的な性別変更を認められることを祈ります。
 
 
参考記事:
Kyiv Pride boss tells global LGBT+ community ‘we need you’ after Russia invades Ukraine(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2022/02/25/ukraine-lgbt-kyiv-pride/
Armed thugs ransack headquarters of Ukrainian LGBT+ group in ‘humiliating’ raid(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2022/03/01/ukraine-russia-war-lgbt-human-rights-nah-mir-center/
Ukrainian trans women ‘trapped in Kyiv’ as Russian forces advance on capital(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2022/03/02/ukraine-trans-women-kyiv/
Defiant Ukrainian teen ‘optimistic’ for the future: ‘It’s horrible, but we will make it’(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2022/03/04/russia-ukraine-transgender-lgbt/

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