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公立中学校の約4割がトランスジェンダーの生徒に配慮した服装規定を導入していることが明らかに

 カンコー学生服が全国の公立中学校に実施した調査で、約4割がトランスジェンダーの生徒に配慮した服装規定を導入し、過半数の学校が制服デザインの見直しを進めてきたことが明らかになりました。
 
 
 カンコー学生工学研究所は「カラダ・ココロ・時代・学び」の4つの視点で学生を見つめ、調査研究、商品サービスの開発を行なっています。今回、学校教育をはじめ広く社会で活用してもらうことを目的に、LGBTQの生徒への配慮や授業での取組み状況、サポート体制などを調査しました。調査は2021年8月、全国の公立中学校のうち1,194校の先生にアンケートを郵送するかたちで行なわれました。

1.「LGBTQの生徒への学校での配慮」(複数回答)については、「制服(デザイン変更や女子スラックスの導入など)」が42.2%、「服装(本人が望む性の制服や体操服の着用を認める)」が41.1%で、服装に関する配慮が最も多くなりました。次いで「トイレ(職員トイレ・多目的トイレの利用を認める)」が25.4%、「更衣室(保健室・多目的トイレ等の利用を認める)」が24.3%で、設備面に関する配慮も多く見られました。

2.「LGBTQの生徒に配慮した服装規定」(複数回答)については、「自認する性別の制服・体操服の着用を認めている」が31.9%、「衣替えの期間を見直した」が19.4%と、現行制服の規定内での配慮が多く見られました。次いで、「性差の少ないデザインの制服を導入」13.5%、「体型を隠せるセーターやベストの着用を認めている」12.2%という「ジェンダーレス」な方向での対応が上がっていました。

3.「LGBTQの生徒に配慮した制服デザインの見直し・検討」(単一回答)については、「見直し・変更済み」「見直し・変更を行っている途中」「見直し・変更の予定がある」を合わせると55.8%となりました。特に、「女子のスラックス着用を認める」「ブレザー型(男女兼用ブレザー)の採用」「制服の選択制」「男女による商品名表記を避ける」といった取組みが多く見られました。

4.「LGBTQを含む、性の多様性についての授業での取組み」(単一回答)については、「すでに取り組んでいる」「これから取り組む予定」を合わせると76%に上りました。道徳、保健体育、総合的な学習の時間、学級活動、社会科が上位5教科でした。外部の有識者や講師を招いて講演会や研修を行なっているケースもあるそうです。
 
5.「LGBTQの生徒のサポート体制」(単一回答)については、「チームや組織を組んで対応している」「当事者の担任の先生が対応している」「養護教諭やカウンセラーが対応している」「担当者を決めて対応している」など、チームや体制が整備されているとの回答が49.9%になりました。体制を整えた背景や対応として「職員全員で情報を共有し、差別や偏見がないようにしている」「担任だけでなく、学んでいる先生や興味がある先生、生徒指導担当、管理職でチームを組み、多くの意見交流を重ねることで改善点や対応策がわかってくることが多くあった」といった回答が上がっていました。


 2002年に放送された『金八先生SP』でトランス男子の鶴本直(上戸彩さんが演じて話題になりました)が級友から借りた学ランを着て卒業式で答辞を述べるシーンが感動を呼んだのを記憶している方もいらっしゃると思います。あれから20年が経ち、ようやく公立中学校でのトランスジェンダーの生徒への服装面での配慮が広がりを見せるようになりました。 
 トランスジェンダーの生徒への配慮に関する国の方針としては、まず、文部科学省が2014年6月に「学校における性同一性障害に係る対応に関する状況調査」の結果を公表しており、主として配慮は個別にしているものという記載になっていました。それから2015年4月、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について」という通知が出され、支援体制や学校生活の各場面での支援等の実施が促されました。 
 こちらの記事でお伝えしたように、2018年2月、千葉県柏市の柏市立柏の葉中学校が開校と同時に制服選択制を導入すると発表したことがニュースになり、学校の制服の選択制に関する取組みが急速に広がりを見せるようになりました(なお、同じ記事でご紹介していますが、2021年にもカンコー学生服が全国の小中高校の教員を対象に今回と同様の調査を実施し、その結果を公開しています)

 今回の調査結果で、全国の公立中学校の4割〜5割にまで服装に関する取組みが広がってきたということ自体も(男子は学ラン/女性はセーラー服の時代から考えると)感慨深いですが、特に、10%を超える学校で「性差の少ないデザインの制服」や「体型を隠せるセーターやベストの着用を認める」という配慮が行なわれていることは素晴らしいと思います。トランスジェンダーは決してMTF(Male to Female)、FTM(Female to Male)だけではなく、ノンバイナリー(Xジェンダー)ジェンダーフルイド、性自認が定まっていないクエスチョニングなど、多様なジェンダーの生徒がいますが、このような体型を隠せる、性差が目立たない(「ジェンダーレス」な方向性での)服装を認める取組みがもっと広がることを期待します。
 いずれは、全国どこでも、あらゆるジェンダーアイデンティティの生徒が安心して学校生活を送れるようになるといいですね。
 
(文・後藤純一)



参考記事:
中学校におけるLGBTQの生徒への配慮に関する調査結果と取り組み。(カンコー学生工学研究所)
https://kanko-gakuseifuku.co.jp/lab/contents/lgbtq_7/

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