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今度は荒川区議。「同性カップルは子を産まない」「男女の結婚という「標準的な形」を保護すべき」などと投稿し、波紋を呼んでいます

 東京都荒川区の小坂英二区議が「同性カップルには子供を産み次世代に引き継ぐ可能性は有りません」「男女の結婚という『標準的な形』を保護し法制度に位置付けるというラインを踏み外してはなりません」などとTwitterに投稿し、波紋を呼んでいます。
 
 
 問題となる発言をしたのは、荒川区の小坂英二区議(49歳、5期目)。荒川区が4月から同性パートナーシップ証明制度の導入を予定していることに反対していて、1月13日から「古来から日本では性的少数者の尊厳は尊重しつつも、法や制度等に位置付けないという対応をしてきました。法制度への位置づけは社会混乱への道です」「男女が結婚を通し法制度に基づいて権利義務が発生し、その結果守られる。それは次世代に繋がる子供を産み育てる、経糸を引き継いでいく家庭を育む可能性が有る形だから」「同性カップルには子供を産み次世代に引き継ぐ可能性は有りません」「男女の結婚という「標準的な形」を保護し法制度に位置付けるというラインを踏み外してはなりません」などとツイートしています。

 毎日新聞の記事で、子育てしたいLGBTQを支援する一般社団法人「こどまっぷ」の長村さと子代表理事(足立区の同性パートナーシップ証明制度第1号となった方で、お二人で子育てもしている方です)が、「『標準じゃない』とされた私たちの子どもがどう思うか考えてほしい。区民の声を聞くべき議員の立場で、他人を標準的かどうかジャッジして傷つけるのはやめてほしい」と語っています。
 小坂区議のツイートにも「私ゲイですが子どもがおります」「同性カップルが結婚したり子どもを育てたりしたところで男女の結婚に脅威があるとは思えません」などのコメントが寄せられています。

 小坂区議はほかにも、同性パートナーシップ証明制度が同性カップルに「『実質的なお墨付き』を与え、不動産賃貸や病院の面会の際などさまざまな場で『男女の夫婦と同じように扱うべし』という『実質的な圧力』を加えるもの」だと述べています。
 しかし、同性パートナーシップ証明制度は、自治体が同性カップルを夫婦と同等だとして二人のパートナーシップを証明する書類を発行するもので、各方面に家族として扱うよう協力を依頼したりもしますが、罰則などの強制力はありません。長村さんは「同性カップルが入居を断られるケースはまだまだある。不動産業者などにカミングアウトをすること自体、心理的負担が大きく、制度が『圧力』になり得るほど社会の理解は進んでいない」と語っています。

 小坂区議は取材に対し、Twitterでの発信内容について「(自分は)制度として男女の結婚をきちんと保護していくのが社会のあり方として良いという考えだ。それに当てはまらない人を非難したり、存在を否定したりしているわけではない」と話しました。また、制度が「圧力」になっているとした点は「同性カップルが(制度の認証を受けた)証明書を不動産業者や病院の面会で出して、そんなもの知りませんとそっぽを向かれたら大きな問題になる。メディアも取材するだろうし、役所も差別事案として取り上げる。強制力がないというのは詭弁だ」と述べ、当事者からの批判については「法制度の話をしていて、個人を誹謗中傷しているのではない。傷ついたと言われても、心の傷は自分自身で向き合うものだ」としています。
 
 この毎日新聞の記事を受けて、Twitterでは、「差別主義者」「殴った側が「殴られて傷ついたと言われても困るから自分でケアしてくれ」などと言うのはおかしい」「あからさまな加害者ほど、加害の意図や願望を非難されたときに被害者の顔をする。そんな卑怯な態度を、自分は心の底から見下します」「こういう発言したら議員クビになる法律を作ってほしい」などの声が上がっています。
 
 『LGBTとハラスメント』『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』の著者であり、様々な媒体でLGBTQの立場から発言してきた松岡宗嗣さんは、「まず同性カップルは既に子育てしている人もいるので事実誤認」「杉田水脈議員のように「生産性」で人を「標準」「異常」と分けて排除することは差別的な考え」「小坂区議のような事実に基づかないまやかしの『標準』をもってして、その枠に当てはまらない人たちを排除することはひとつの暴力であって、その暴力を生み出し温存し続けているのは、既存の法制度であり社会の構造の問題」「存在は否定していない」と言い訳をしながら性的マイノリティを劣位に置き続けたい、平等な権利など与えたくないという立場」と批判しています。

 杉田水脈衆議院議員による「生産性のないLGBTに支援は必要ない」発言、海老名市の鶴指市議による「異常動物」発言、宝塚市の大河内市議による「宝塚がHIV感染の中心になったらどうするのか」発言、足立区の白石区議による「LGBTばかりになったら足立区が滅ぶ」発言、簗和生衆議院議員ら複数の国会議員による「道徳的にLGBTは認められない」「種の保存に背く」発言など…これまでに、公職にある議員によるあからさまなLGBTQ差別発言が何度も繰り返され、そのたびに批判の声が上がってきましたが、根本的な解決には至っていません(上記の国会議員なども、謝罪も撤回もしていません)。そして2022年の今もなお、小坂区議のような差別発言が、全国の当事者を傷つけています。このようなヘイトスピーチを防ぐためにも、LGBTQ差別を禁止する法制度が必要なのではないでしょうか。
 
 

 なお、荒川区では、レインボー荒川の会という当事者団体が活躍していて、現在、荒川区男女平等推進センターでLGBT写真展が開催されています。
 レインボー荒川の会は、今回の小坂区議の発言に対して遺憾の意を表明しつつ、「私たちはこういった荒川区の状況を変えていくためにも、やはり制度導入が必要と考えています。また、当事者の困りごとを共有する場づくりや、知っていただくための活動なども継続していくつもりです。荒川区を変えていくために、一緒に動いていきましょう」とコメントしています。
 荒川区の隣の足立区では、白石区議の「足立区が滅ぶ」発言が大々的に報道され、抗議署名の提出などとともに、#私たちはここにいるハッシュタグによるパレードのようなオンラインムーブメントも生まれ、結果、同区議は謝罪し、区長さんが率先して同性パートナーシップ証明制度を導入するという「雨降って虹が出る」的なハッピーエンドを迎えました(その後も、区民に向けて足立レインボー映画祭を開催したり、全国で2番目にファミリーシップ制度を導入したり、先進的な動きを見せています)
 荒川区もそうなるよう、みんなで応援していきましょう。


参考記事:
荒川区議、同性カップル巡るツイートで波紋(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220119/k00/00m/040/140000c

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