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1月1日、「国際疾病分類」が改定され、トランスジェンダーの非病理化が達成されました

 2022年1月1日は、単に年が明けたというだけでなく、世界のトランスジェンダーにとって特別な日になりました。
 WHOが性同一性障害を「精神障害」の分類から除外しましたとのニュースでお伝えしていたように、世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類」改定版(ICD-11)で性同一性障害が「精神障害」の分類から除外され、「性の健康に関連する状態」という分類の中の「Gender Incongruence(性別不合)」に変更されることになり、出生時に割り当てられた性別への違和が「病気」や「障害」ではないと宣言されることになりました。このICD-11が2022年1月1日に発効されたのです。
 
 同性愛については1990年5月17日にWHOが国際疾病分類(ICD-10)から除外しました(総会で採択されたました)が、これを記念して5月17日が国際反ホモフォビアデー(現在は国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日)と定められたのでした。

 ジェンダー&セクシュアリティ史の研究者である三橋順子氏は1月1日、Twitterに
「2022年になり、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類・第11版(ICD-11)が発効されました。
 これによって、性別の移行を望むことは、疾患ではなくなり、19世紀以来続いた精神疾患の軛(くびき)からついに解放されました。
 おめでとう! 世界のトランスジェンダーの仲間たち」
と投稿し、3000近い「いいね」がつきました。
 同氏によると、「今回の性別移行の脱精神疾患化は、欧米の当事者の「disorder(障害)だけは止めてくれ!」という20年以上におよぶ切実な運動の結実」です。「性別の移行を望む人を「精神疾患」として囲い込むことは止めるということ」であり、「実質的には「性同一性障害」の継承概念が「性別不合」で、医療が必要な方のアクセスポイントは確保される」とのことです。
 
 性別移行を望む方のための性別適合手術という医療行為は今まで通り実施されますが、これまでの「障害」「精神疾患」という概念がなくなり、性別違和や性別不合という「性の健康に関連する状態」に再定義された(非病理化が達成された)ということです。

 日本では「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」に基づいて戸籍上の性別の変更が実施されてきましたが、「性同一性障害」という概念がなくなった今、この法律をどのように世界基準に当てはめて変えていくのか、精神科医は「性同一性障害」という診断をしてよいのか、といった議論が進められるべきでしょう。しかし、それ以前に、戸籍上の性別を変更するためには世界に類を見ない「子なし要件」をはじめとする厳しい要件をクリアしなければならない(しかもいまだに最高裁で合憲と判断されている)、ホルモン治療への保険適用も認められない、性別適合手術は保険適用となったものの健康上の理由などで手術を受けられない方たちもいて、見た目とID上の性別が異なることで日常生活での困難に直面しがちである、といった厳しい現実があります。近年、トランス女性へのヘイト、バッシングも急増しており、生きづらさを苦にして自死を選ぶ方も…深刻な状況です(そのため、昨年11月には当事者+アライの方たちが様々な運動を展開しました)
 今回の改定を機に、国をはじめ社会全体で、わが国のトランスジェンダーの方たちがどうすれば生きやすくなるのか、どのような制度を作っていくべきなのかということを考えていけたらよいのではないでしょうか(なお、日本学術会議は2020年に「性同一性障害特例法」の廃止と「性別記載変更法」の制定を提言しています)

 
 なお、これは4月1日からですが、性同一性障害特例法に関する制度変更があります。
 成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることに伴い、性別の取扱いの変更の審判も18歳から認められることとなったのです。つまり、18歳で性別適合手術を受け、戸籍上の性別の変更をすることが可能になるのです(こちらのp4をご覧ください)
 もし18歳のうちに性別移行が終われば、自身の望む性で大学に進学することも可能になりますし、人生の選択肢が広がることでしょう。当事者にとって2歳の違いは大きいのではないでしょうか。
 

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