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ル・ポールが有色人種の人物として歴代最多の受賞者に――今年のエミー賞のLGBTQ関連トピックを総まとめ

 テレビ界のアカデミー賞とも言うべきプライムタイム・エミー賞が9月18日(現地時間)、LAで開催されました。今年は例年に比べてLGBTQの俳優などの受賞は少なめだったものの、『ル・ポールのドラァグ・レース』が最優秀コンペティション番組賞を受賞し、ル・ポールがエミー賞の歴史のなかで最も多くの受賞をした有色人種の人物となりました。今年のエミー賞のトピックをまとめてお届けします。


 まず、プライムタイム・エミーの前に、技術部門やプライムタイム・エミーに収まりきらない細々とした部門を表彰するクリエイティブ・アーツ・エミー賞が9月12日・13日に行なわれました。
 こちらでは、クリエイティブ・アーツ・エミーの常連である『ル・ポールのドラァグ・レース』が【(構成のない)リアリティ番組】【リアリティ番組キャスティング賞】【リアリティ番組監督賞】【リアリティ/コンペティション番組司会賞】【リアリティ/コンペティション番組画像編集賞】を受賞しました。通算6回目を数える司会賞を受賞したル・ポールは、「私がテレビに出るようになったのは40年前で、アトランタの「The American Music Show」っていう小さな番組でした。みんなとても親切に、優しくしてくれて、とても感謝しています。私はそんなテレビ業界の人たちの優しさに今日ほど感謝したこはありません。最高の美徳だと思います。本当にありがとう」とスピーチしました。
 そのほか、『クィア・アイ』が【(構成のある)リアリティ番組】を受賞し、ドラマ『POSE』が、【現代衣装賞】【ヘアスタイリング賞】【メーキャップ賞】の3部門を受賞しました。
 
  
 そして18日、プライムタイム・エミー賞の授賞式がハリウッドの「L.A.ライブ」で開催されました。
 レッドカーペットでは、ノンバイナリーの俳優カール・クレモンズ・ホプキンズがノンバイナリー・プライド・フラッグのカラーリングの衣装で登場してPRIDEを表現したほか、トランスジェンダーとして史上初めて主演女優賞にノミネートされたMJロドリゲスはヴェルサーチェの水色のドレスで、ビリー・ポーターは大きなプリーツの羽根がついたAshiの黒のアンサンブルで登場しました。もちろん、「ル・ポールのドラァグ・レース」チームは突出したゴージャスさを見せていました。(レッドカーペットで目立っていたLGBTQの写真はこちら
 
 今回のプライムタイム・エミー賞では、『POSE』のMJロドリゲスがトランスジェンダーとして初めてエミー賞主演女優賞にノミネートされ、注目を集めていましたが、残念ながら受賞には至りませんでした。『POSE』はほかにもドラマ作品賞、主演男優賞(ビリー・ポーター)、監督賞(スティーブン・カナルス)、脚本賞(ライアン・マーフィ、スティーブン・カナルス、ブラッド・ファルチャック、ジャネット・モック、Our Lady J)にもノミネートされていましたが、受賞はなりませんでした(ドラマシリーズ部門は『ザ・クラウン』が総なめでした)
 PinkNewsは「3シーズンを通して『Pose』はドラマの新しい地平を切り開き、素晴らしい(トランスジェンダーの)俳優たちが業界にいることを証明した。にもかかわらず、エミー賞は1つも賞を与えることなく去った」と批判しました。また、多くの人々がTwitterなどでMJロドリゲスへのエールを贈っています(例えばベストセラー作家ジョシュ・サバラは「私は今でもMJに賞をあげたいと思ってるよ!」とツイートしています)
 MJロドリゲスやビリー・ポーターも含めてですが、今回のプライムタイム・エミー賞の12ある俳優部門では有色人種の俳優がただの1人も受賞せず、批判の声が高まっています(#EmmysSoWhiteというハッシュタグがトレンド入りしています)
 
 LGBTQの俳優として唯一、俳優賞を受賞したのは、ジリアン・アンダーソンでした(『X-ファイル』のダナ・スカリー役で有名。最近では『セックス・エデュケーション』で主人公オーティスの母親でセックス・セラピストという役を演じています)。彼女は『ザ・クラウン』でマーガレット・サッチャーの役を演じ、ドラマシリーズ部門の助演女優賞に輝きました。 
 
 LGBTQのスターとして今回、歴史的な偉業を達成したのは、ル・ポールです。クリエイティブ・アーツ・エミーでの司会賞の受賞で、編集のDonald A. Morganが持つ有色人種の人物として10のエミー賞を受賞という記録に並んでいましたが、『ル・ポールのドラァグ・レース』がこの日、最優秀コンペティション番組賞を受賞したことで、ル・ポールが11個目の賞を獲り、有色人種の人物として史上最多の記録を更新したのです(おめでとうございます)。ル・ポールは「本当にありがとう。世界中の愛すべき子どもたち。勇気あるストーリーや、現代のこの困難な人生をどう切り開いていくかってことを語ってくれるのは本当に素晴らしい。この賞はあなたたちのものです」とスピーチしました。「そして、私たちは、あなたたちを待ってる。ママ・ルゥのところにおいで!」
 
 それから、ゲイであり、エイズで亡くなったデザイナーのホルストンをフィーチャーしたNetflixドラマ『HALSTON/ホルストン』で主演を務めたユアン・マクレガーは、リミテッドシリーズ・TV映画部門主演男優賞に輝きました。ユアン・マクレガーがエミー賞で受賞するのは意外にも初のことだそう。ちなみにユアン・マクレガーは映画『フィリップ、きみを愛してる!』でもゲイ役を演じています(とても好感の持てる演技でした)
 LGBTQインクルーシブなドラマ『Hacks』は、コメディシリーズ部門の主演女優賞、脚本賞、監督賞を受賞しました。
 バラエティ・スペシャル部門で受賞した『ハミルトン』のチームのなかにはオープンリー・ゲイのジョナサン・グロフの姿もありました(ミニシリーズ/テレビ映画部門の助演男優賞にもノミネートされていましたが、そちらは受賞しませんでした)
 
 ほかにも、プレゼンターとして多くのLGBTQが活躍しました。
『シッツ・クリーク』のダン・レヴィはローズ家の他の家族と一緒に4人揃って登場し、会場を沸かせました。
 それから、中国系アメリカ人として初めてエミー賞俳優部門にノミネートされコメディアンのボウエン・ヤン(ゲイの方です)、『アメリカン・ホラー・ストーリー』のレギュラーであるサラ・ポールソン(レズビアンの方です。男女の給与の格差にチクリと言及していました)、ビリー・ポーターとMJロドリゲスもプレゼンターとして登場しました。
 
 一昨年はビリー・ポーターがオープンリー・ゲイの俳優として初めて主演男優賞を受賞、昨年は『シッツ・クリーク』がコメディシリーズ7部門を完全制覇という華々しさでしたが、今年はLGBTQの俳優の受賞も少なく、地味めだったかもしれません…が、それでもこれだけのトピックがありました(こちらの総まとめ記事でも、半分近くはLGBTQの俳優が話題になっています)
 来年はまた、新たなLGBTQのスターが登場するかもしれません。楽しみにしましょう。
 
 
 
参考記事:
RuPaul Now Has the Most Emmy Wins for a Person of Color(Out)
https://www.out.com/television/2021/9/19/rupaul-2021-primetime-emmy-win-most-emmy-wins-person-of-color
11 of the Best Dressed LGBTQ+ Stars on the 2021 Emmys Red Carpet(Out)
https://www.out.com/fashion/2021/9/19/lgbtq-best-dressed-emmys-red-carpet-bowen-yang-emma-corrin
The Emmys failed Pose and its trailblazing, talented trans cast(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2021/09/20/pose-emmy-awards-mj-rodriguez-billy-porter/
73rd Annual Primetime Emmy Awards wield few LGBTQ winners but several queer moments on stage(GLAAD)
https://www.glaad.org/blog/73rd-annual-primetime-emmy-awards-wield-few-lgbtq-winners-several-queer-moments-stage
第73回プライムタイム・エミー賞授賞式のできごとまとめ(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17482459

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