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住宅ローンの配偶者の定義に同性パートナーも含める金融機関が、全国で続々と増えています

 4月に楽天銀行と三好不動産がLGBT向け住宅ローンで提携とのニュースをお伝えしましたが、それだけでなく、今年に入ってから全国各地で続々と同性カップルの住宅ローン利用に門戸を開く金融機関が増えています。


 広島銀行(広島市)は3月19日、同性パートナーを持つ人にも、2人分の年収を合算してローン審査を受けられる「収入合算」などを認める取扱いを始めました。自治体が発行する同性パートナーシップ証明書などの提出が必要になります。
 今年1月から広島市で同性パートナーシップ証明制度が導入されたことを受けた取組みで、同行がLGBT向けの商品を用意するのは初めてのことです。広島県内の金融機関としてもおそらく初めてです。

 
 めぶきフィナンシャルグループ(FG)傘下の常陽銀行(水戸市)と足利銀行(宇都宮市)は3月29日、連帯債務での借入、住宅ローンやリフォームローンの審査での収入合算、夫婦連生がん団信への加入における配偶者の定義に同性パートナーを含める取扱いを開始しました。収入合算が認められると、これまであきらめざるをえなかった物件の購入も可能になるなど、同性カップルがローンを組みやすくなり可能性が広がります。
 茨城県では2019年に「いばらきパートナーシップ宣誓制度」が導入されており、常陽銀行は「ダイバーシティへの関心が高まる状況に対応し、より幅広い人々が商品を利用できるように」したそうです。申込みの際は、常陽銀行では茨城県の宣誓受領証などが、足利銀行では各自治体の発行する同性パートナーシップ証明書などが必要になります(栃木県では鹿沼市と栃木市で同性パートナーシップ証明制度が導入されています)


 京都信用金庫(京都市)は4月5日、住宅ローンを利用する際の配偶者の定義に同性パートナーや事実婚の相手を含める取扱いを開始しました。連帯債務での借入れや、二人で借入額を分割するペアローンの利用が認められることで、それぞれが住宅ローン控除を受けられるほか、団体信用生命保険にも加入できるようになります。
 同性パートナーシップ証明書(京都市では昨年9月から制度が導入されています)や「未届の妻(夫)」などの記載がある住民票の提出が必要になります。
 京都信金の榊田隆之理事長は「SDGsでもある平等確保の観点から取扱いを始めた。私たちが取り組むことにより、自治体側にも対応を促す一助になればうれしい」と語りました。
  
 
 富山銀行(富山県高岡市)は4月14日、住宅ローンの収入合算などの配偶者の定義に同性パートナーも加えることを発表しました。北陸地方では初の取組みです。
 地方自治体が発行する同性パートナーシップ証明書を提出するか、同行が用意する誓約書に署名することが必要になります。現状、北陸3県では(昨年12月に金沢市で同制度導入を検討中であると報じられましたが)未だに同性パートナーシップ証明制度を導入した自治体がありませんが、それでも今回のような取組みを先行させたのは「SDGsの一環」だと、富山銀行営業統括部の作田裕一次長は語ります。2021年1月、SDGsに関するプロジェクトチームを立ち上げ、SDGsの目標の一つである「ジェンダー平等の実現」に従って議論し、具体策を検討してきたといいます。作田次長は「自治体の『同性パートナーシップ』を模した独自の誓約書を提出してもらい、住民票で『1年以上の同居実績』を証明できれば認めることにした」と語っています。
 なお、富山銀行の取組みが開始されてから6月までに問合わせが2件寄せられたといい、同行営業企画グループの担当者は「こんなにすぐに反響があるとは思わず、驚いた。自治体のパートナーシップ制度が広がれば利用者も増えるのではないか」と語っているそうです。


 浜松いわた信用金庫(浜松市)は4月22日、住宅ローンの連帯債務者や所得合算者の配偶者の定義に同性​パートナーを加える改定を行なうことを発表しました。静岡県内の金融機関では初めてです。
 浜松市の「パートナーシップ宣誓制度」で証明書を受け取った方が対象となります。
 また、法的な相続要件を満たさない同性パートナーに財産を残すための助言も強化し、一般社団法人はままつ資産承継相談所を紹介し、パートナー双方が遺言書を作成する場合は費用の「家族割引」が受けられるようにするとのこと(こうした取組みは初めてではないでしょうか。当事者に寄り添う姿勢、素晴らしいです)
 浜松いわた信金はジェンダー平等などをうたったSDGsを経営理念として掲げていたこともあり、規定の改定が必要と判断したそうです。

 
 auじぶん銀行(東京都中央区)は4月23日から、住宅ローンにおいて同性パートナーを連帯保証人および担保提供者とした申込みを可能にする取扱いを開始しました。
 同行は2020年9月にSDGs宣言を行い、ダイバーシティへの取組みを推進するなかで、多様性を尊重すべく、あらゆるお客様にサービスをご利用いただける環境の実現に向けてサービス拡充の検討を進めてきました。
 同一物件に対して一定の条件のもと、2人がそれぞれ住宅ローンを組む「ペアローン」と、2人の収入を合算する「収入合算」について、同性カップルでの利用が可能となります。また、借入対象の土地・建物を同性パートナーと共有する場合も、同性パートナーを担保提供者として借入れることが可能になりました。
 申込みにあたっては、東京都渋谷区が発行するパートナーシップ証明書、東京都港区が発行するみなとマリアージュカードの写し、または「任意後見契約にかかる公正証書」「合意契約にかかる公正証書」の写しのいずれかが必要となります。

 
 長野銀行(松本市)は4月27日、住宅ローンの商品内容を見直し、連帯債務者や連帯保証人に同性パートナーを含めることを発表しました。長野県内に本店を置く金融機関では初めてです。
 自治体が発行する同性パートナーシップ証明書か、任意後見契約の公正証書を提出すれば利用できます。
 松本市でこの4月から「パートナーシップ宣誓制度」が導入されたことを受けて、同行の「女性活躍推進チーム」と商品開発を担う部署が実現したものです。同行は「多様性に対応し、暮らしやすい社会を実現する」としています。
 
 八十二銀行(長野市)も5月26日、同性パートナーも連帯債務・所得合算・連帯保証の対象者とする取扱いを開始することを発表しました。自治体が発行する同性パートナーシップ証明書か、任意後見契約の公正証書を提出すれば利用できます。
 性的マイノリティでも安心安全に暮らせる環境づくりにつなげていくねらいだそうです。


 京葉銀行(千葉市)は6月10日、住宅ローンの連帯債務者、連帯保証人、物上保証人の対象に、主債務者の同性パートナーを加える取扱いを開始しました。 
 自治体が発行する同性パートナーシップ証明書か、「任意後見契約にかかる公正証書」「合意契約にかかる公正証書」を提出することが条件となります。
 千葉県内では、(千葉市で2019年から同性パートナーシップ証明制度が導入されたのを受けて)千葉銀行が2020年7月から連帯債務の融資対象者の定義を同性パートナーにも拡大する取組みを行なっており、今回、京葉銀行にも広がったかたちです。


 沖縄県労働金庫(那覇市)は6月15日、住宅ローンの収入合算の対象に同性パートナーも含める取扱いを開始しました。
 沖縄県では2017年、琉球銀行が住宅ローンの「夫婦連帯債務」制度の対象を同性のカップルにも拡大し、みずほ銀行に続く全国2例目、地銀としては初の取組みとなりました。2019年には沖縄銀行が、借入れの際の連帯債務者や連帯保証人に同性パートナーも含める取扱いを開始しています(同性パートナーシップ証明制度や公正証書がなくても、同居の事実を証明できれば利用できるという、全国的にも珍しい対応でした)
 沖縄県労金でも、「昨今の多様な性を尊重する社会情勢および企業としてのSDGs達成への貢献等に鑑み」、また、当事者の方から要望があったことを受けて、取扱いを開始しました。沖縄銀行と同様、同性パートナーシップ証明書がなくても、同居していることを住民票で確認できれば利用を認めるそうです。


 武蔵野銀行(さいたま市)は6月18日、同性カップルで利用可能な住宅ローンの取扱い「LGBT特例」を開始することを発表しました。埼玉県内の金融機関では初めてです。
「近年、同性であるカップルに対し婚姻と同等のパートナーシップであることを承認する「パートナーシップ制度」の導入が各自治体で進んでおり、埼玉県内における導入自治体は12市町に及んでいます。
 当行ではこうした社会的な背景のもと、LGBTの方々について住宅取得時の選択肢を拡大すべく、住宅ローンにおいて一定条件のもと、同性パートナーお二人での借入れ(ペアローン)や収入合算の取扱いを可能といたします。
 当行では、SDGs宣言に掲げる「全ての人々が自分らしく、健康で幸福に生活できる社会」の形成を目指し、積極的に取り組んでまいります」(プレスリリースより)
 利用条件は「合意契約」と「任意後見契約」の提出となっています(自治体の発行する同性パートナーシップ証明書が使えないケースはたいへん珍しいです)


 こうして見ると、全国で同性パートナーシップ証明制度の導入が広がっていることに呼応して同性カップルも配偶者と同等に取り扱うようにした金融機関が多いことがわかります。
 レインボーさいたまの会が、武蔵野銀行の取組みに関して「埼玉県内でLGBTQの取組みが今後加速することが見込まれる。LGBTQ当事者が「いる」ことを前提とした企業の取組みを歓迎」とコメントしているように、地元に密着した企業がLGBTQのための商品・サービスを提供するケースがまだ少ないような地域では、こうした取組みがLGBTQコミュニティに歓迎され、励みになり、さらに自治体や企業に施策を求めていく後押しにもなると言えるのではないでしょうか。
 
 また、SDGsというキーワードも目立ちました。富山銀行のように、まだ同性パートナーシップ証明制度が導入されていない、他の企業の動きもほとんどない地方であっても、「SDGsの一環として」取組みを実現した金融機関もありました(しかも、予想外に早く問い合わせがあり、銀行の方も喜んでいたというお話も、とてもよかったです。LGBTQマーケティングの好例ですね)
 たとえ国や自治体がLGBTQ差別禁止や同性カップルの権利保障に消極的であったとしても、SDGsという、より大きな、普遍的な理念に則ってLGBTQへの取組みを進めることができるし、進めてよいということが示されたかと思います。金融業界に限らず、どんな企業にも当てはまることですね。

 
 
参考記事:
広島銀、LGBT対応の住宅ローン(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70204100S1A320C2LC0000/

めぶきFG、ローン審査での配偶者 同性パートナー含む(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB302KK0Q1A330C2000000/

同性カップルも住宅ローンのペア利用可に 京都信用金庫が「配偶者」認定、事実婚もOK(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/542248

富山銀行、住宅ローンをLGBT対応に(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC149FK0U1A410C2000000/

銀行がLGBT向け住宅ローン SDGsに対応、「市場もある」(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/01028/

LGBT広がる配慮 富山銀行 「配偶者」に追加 富山の旅館 「男湯・女湯」廃止(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20210618-OYTNT50104/

浜松いわた信金、同性パートナーも追加(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71419400X20C21A4L61000/

浜松いわた信金が県内初ルール改定 同性カップルに住宅ローンを(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/241602

長野銀、住宅ローンで同性パートナーに対応 性的少数者を支援(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042701037

同性パートナー、連帯保証人OK 長野銀行、住宅ローンで(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/housing/news/2021/0428HS027651..html

京葉銀の住宅ローン、LGBTに対応(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB08AXA0Y1A600C2000000/

同性パートナーの収入合算 労金、住宅ローンで開始(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1339721.html

武蔵野銀行、同性パートナー同士で利用できる住宅ローンの取り扱いを開始(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP612786_Y1A610C2000000/

武蔵野銀、 LGBT対応の住宅ローン開始へ 埼玉の金融機関では初(財経新聞)
https://www.zaikei.co.jp/article/20210619/626212.html

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