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カール・ナッシブ選手がNFL現役選手として初めてカムアウトし、歴史に名を刻みました

 米プロフットボールNFLで活躍するカール・ナッシブ選手が21日、ゲイであることをカムアウトし、歴史に名を刻みました。これまで、現役引退後にカムアウトした選手や、ゲイであることをオープンにしてドラフト指名を受けたマイケル・サム選手などがいましたが、NFLの現役選手のカミングアウトは初めてです。


 ラスヴェガス・レイダースのディフェンスであり、5年間活躍してきたベテランであるカール・ナッシブ選手は、インスタグラムに動画を投稿し、ゲイであることをカムアウトしました。
「私はカール・ナッシブ。今はペンシルベニア州ウェストチェスターの自宅にいます」
「手短に言いたいのですが、私はゲイです。しばらく前からカムアウトしようと思っていましたが、やっと打ち明けてもいいと感じるようになりました」
「これ以上はないというほど最高の人生、最高の家族、友人、仕事に恵まれています」
「私はあまり自分のことを話すタイプではありません。注目されたくて言っているわけではないことをご理解ください。ただ、リプレゼンテーションとビジビリティ(可視化)がとても大事だと思っています」 
「いつか、こういう動画やカミングアウトが不必要になることを願っています。それまでは、受容と思いやりみ満ちた文化を発展させるため、自分にできる最善のことをやっていきます」
 彼はさらに、LGBTQユースの自殺防止のための24時間ホットラインなどを運営する支援団体「トレヴァー・プロジェクト」に10万ドル(約1100万円)を寄付する、とも発表しました。「LGBTQの若者が非常に高い自死のリスクにさらされていることは非常に悲しいことです。恵まれている立場にいる者として、できる限りのことをすべきだと責任を感じました」 
 
 6月はプライド月間であり、ナッシブ選手はその中で歴史的な発表を行ないました。最初の声明に続き、彼はより長いメッセージによって、この決断に至るまでどれほどの時間がかかったかということや、LGBTQの自殺を減らすための闘いについて語っています。
「やあみんな、ハッピー・プライド! 今、私は感謝や安堵の気持ちの中にいます。悲しいことに、私は過去15年の間、この瞬間についてずっと悩んできました。最近になってやっと、家族や友人、特にコナーやカーソン、フランシスのおかげで、公の場で誇りをもって自分がゲイだとカムアウトできると思えるようになったのです。それに、NFLや私のコーチ、仲間の選手たちの応援に、とても深く感謝しています。彼らがいなければできなかった。思い切ってカムアウトしてから、最大限の敬意と受容をもって迎えられてきました」
「私は本当に自分の人生を愛していて、なぜこんなにも恵まれているのかわからないくらいです。特に、前は多くの人が――今でも多くの人が――得られなかったような、こんなにもたくさんのサポートがあったことをありがたく感じています。私は巨人の肩に乗る存在です。人々が信じられない努力で道を切り拓いたおかげで、この機会が与えられました。勇敢なLGBTQコミュニティの背後にある歴史のすべてを知っているわけではありませんが、私は学び、平等と受容に向けた闘いを助けていきたいと強く思っています」
「ビデオメッセージで触れたように、私はLGBTQコミュニティでの自殺を防止するという彼らのミッションを知り、トレバー・プロジェクトと提携しています。LGBTQの子どもたちが自殺を考える確率は、彼らのストレートの友人たちの5倍以上です。とても幸運で、毎日を大事にしている私のような人間にとって、LGBTQの若者たちがそんなにも高い自殺のリスクを抱えているのはものすごく悲しいことです。自分にできるどんな方法でも、それを助けなければいけないという大きな義務感を感じています。それは、みなさんにとっても同じです。受け入れてくれる大人が一人いれば、LGBTQの子どもが自殺を試みるリスクが40%減少することが研究でわかっています。友人でも、両親でも、コーチでも、チームメイトとしてでもいい。みなさんもその一人になれるはずです」
「最後に、みなさんが、私も一人の人間に過ぎないということを理解してくれることを願っています。私は自分の夢を生きている、ひょろ長い一人の通行人です。自分のスポーツで偉業を達成するために私にできることは限られていて、チームやコーチ、レイダースファンのためにしっかりと集中し、次のシーズンに自分のベストを尽くす義務があります。私は目立ちたがり屋ではないので、自分の人生のなかでもエキサイティングなこの時を進んでいく最中、報道の人々はどうかそっとしておいてほしいです。もし私がインタビューを拒否したり、質問に答えられなかったりしても、個人的な反感とは受け取らないでください。みなさんのサポートに感謝しています」
(素晴らしいコメントですね!)

 NFLコミッショナーのロジャー・グッデル氏は、このカミングアウトを称賛しました。
「NFLのファミリーは、カールが勇気をもって真実をシェアしてくれたことを誇りに思う。リプレゼンテーションは大切だ。われわれも彼と同様、社会がLGBTQ+コミュニティの完全な平等に向けて前進していき、近い将来、彼のような発言が大きく報じられなくなることを望んでいる。今シーズンのカールに幸運を」との声明を発表しました。
 

 NFLではこれまで、引退後にカムアウトしたり、カムアウトしたうえでNFL入りしようとしてうまくいかなかった選手は何人もいました。その歴史は、とりもなおさず米国のアメフト界でオープンリー・ゲイとしてプレーすることがどれだけ困難であったか、ということを物語っています。
 1972年までサンフランシスコ49ersなどで活躍したデヴィッド・コペイ選手は、引退後の75年に初めてゲイであることをカムアウトした選手となりました。彼は「Gay and Lesbian Athletics Foundation」のボードメンバーとなり、2006年のシカゴでのゲイゲームズの際にはアンバサダーを務めました。
 ジェリー・スミスは1960年代から70年代にかけて活躍したNFLのスター選手で、ワシントン・レッドスキンズで1977年までプレーし、オールスター試合であるプロ・ボウルに2回出場、同チームの殿堂入りも果たしています。現役引退後は、法律を学び、NFLの選手協会のエグゼクティブ・ディレクターを務めました。彼は生涯カミングアウトはせず、1986年にエイズで亡くなりました。その生涯を描く映画が製作されようとしています。
 2014年、学生リーグで活躍していたマイケル・サム選手が、ゲイであることをカムアウトしたうえでセントルイス・ラムズからドラフト指名を受け、史上初のオープンリーゲイのNFL選手になると華々しく報道されました(オバマ大統領らが応援していた一方、地元ミズーリではアンチLGBTQのグループから叩かれたりしました)。マイケル・サム選手はセントルイス・ラムズでプレシーズンの練習試合には出場したものの、最終的には採用されず、ダラス・カウボーイズの練習生となりましたが、芽が出ず、2015年5月にモントリオール・アルエッツに所属し、CFL(カナダ)で1シーズンプレーしました。しかし、同年9月、メンタルヘルスの不調を理由に引退を発表しました。
 それから、今年4月、元NFL選手で恋愛リアリティ番組『バチェラー』シーズン23で主役を務めて有名になったコルトン・アンダーウッドがカミングアウトしています。
 
 カール・ナッシブ選手は、自身もそう語っているように、そうした数々の先人たちの苦悩や葛藤、努力の積み重ねの上に、彼らがなしえなかった偉業を、ついに達成したのです。心からの拍手、祝福をお送りします。
 
 
 
参考記事:
レイダースDLナッシブが現役選手として初めて同性愛を公表(NFL公式サイト日本語版)
https://nfljapan.com/headlines/65182
アメフト現役選手で初めて同性愛を公表 ナッシブ選手(BBC News)
https://www.bbc.com/japanese/57563563
NFLのカール・ナシブ選手、同性愛を公表 現役選手で初めて(CNN)
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35172709.html
NFL現役選手、初の同性愛公表 レイダースのDEナッシブ(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3352813
NFL初、現役選手がゲイを公表。「可視化するのが大切だと思った」(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/nfl-carl-nassib_jp_60d11f54e4b00425580c5588

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