NEWS

与党議員の差別発言に対する抗議集会が行なわれました

 LGBT法案をめぐる自民党の会合で山谷えり子議員が「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを獲るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」などと発言した問題で21日、自民党本部前で抗議集会が行なわれました。

 
 こちらのニュースでお伝えしたように、LGBT理解増進法案について山谷えり子議員が「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを獲るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」などと発言したことに対し、憤ったアライの方が20日夜にTwitterで呼びかけ、21日19:30から永田町の自民党本部前で抗議集会が開かれました。急だったこともあり、雨模様だったこともあり、集まった方は(杉田議員の時に比べると少なく)100名ほどだったそうですが、ハフポスト日本がレポートしてくれたように、何人ものトランスジェンダーの方たちが声を上げました。

 トランスマーチの開催も企画していた当事者グループ「TRanS(トランス)」や、精神疾患や依存症などの問題を抱えるLGBTQを支援する「カラフル@はーと」の代表であり、当事者ドキュメンタリー映画『I Am Here ー私たちはともに生きているー』の監督でもある浅沼智也さんは、「自分の性自認で生きる。なぜそれが許されないのか」「3年前に杉田水脈議員が『LGBTは生産性がない』と発言をして、自民党では未だにこのようなことが起きています。その時より、さらにひどいと思います」 「自分もトランスジェンダーの一人としてずっと苦しんでいた時がありました。誰にも言えないまま密かに暮らしてきて、やっと生きやすい社会になったと思えば、議員がこのような発言をしている。また傷付いて、死にたいと思ってしまう当事者がいるかもしれません。差別発言をしている自民党の議員たちには、その気持ちを考えてほしいと思います」と語りました。
 集会でマイクを持ったトランスジェンダー女性も、ヘイトを社会に一般化させ、人の命を奪いかねない発言だと訴えました。「脆弱な状況で日々働いている人々や、理解がない家庭で過ごしている子供たちには逃げ場がない。そういった環境で苦しんでいる人たちをさらに苦しめるような社会に私はしたくありません」
 署名キャンペーンの呼びかけ人の1人でご自身も当事者である時枝穂(ときえだ・みのり)さんは、トランスジェンダーの人たちが生きやすい社会にしたいと思って声を上げました。「私自身、これまで自分が社会不適合者なのか、生きていていいのかと悩んだ時期がありました。今でも自分らしく生きられているかというと100%そうとはいえません」「トランスジェンダー当事者が性暴力といった、問題やトラブルを起こす存在であるかのようなレッテルを貼られて排除されるのはすごく悲しいです。そういったことで傷ついて、命を落としてしまう当事者もいるので、ヘイトや差別発言にはきちんとNOと声をあげていきたいです」
 
 この抗議集会の記事について、取材した坪池順さんは「強い怒りだけでなく、深い悲しみも感じました。差別は人の尊厳や未来を奪い、命に関わりかねない」と、東ちづるさんは「自分の性自認で生きる。なぜそれが許されない? 許しを乞うことでもない。自分の性自認が自分の普通。それが自然の摂理。認めるか否かではなく、わたしたちはもうすでに一緒に生きています」と、早稲田ゆき衆議院議員は「衝撃の差別発言が相次ぐ。権力者がマイノリティを抑圧する行為は許されない」とコメントしたほか、LGBTQの方からも「行きたかった」「離れていても、魂はともにあります」などのコメントが寄せられました。
 
 なお、トランスジェンダーのスポーツ参加に関し、東京2020大会組織委理事である中京大学スポーツ科学部の來田享子教授は「現代ビジネス」に寄稿し、「政府与党の議員として、性別および性的指向にもとづく差別を助長するような発言は、五輪憲章の根本原則に違反すると言わざるをえない。東京2020大会組織委の森元会長がジェンダー平等に反する発言を行った際にも、これへの違反が問題となった」と述べました。
「身体が関わるスポーツという文化では、性別や性的指向をめぐる問題は複雑であり、スポーツ界でも選手、専門家など多くの関係者が「スポーツから誰も排除しないために何をなすべきか」を考え、取り組んでいる問題なのだ。人権の観点から性別に対する古い考え方を改め、スポーツ界がこの問題に向き合いはじめて、すでに15年以上が過ぎている」
「山谷議員が発言したような「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろ」という言葉からは、要望の背景に、当事者一人一人が抱えてきた人生をかけて闘ってきた困難があるという現実が切り取られてしまっている。知識のなさゆえに単純化されてしまった発言だといえるだろう」
「性別や性的指向にもとづいて人をカテゴリーで束ね、見当違いのラベルを貼り、思い込みで語る態度は、東京2020大会組織委の森元会長の発言と根っこが共通する。ジェンダー平等は、男性と女性の数あわせの問題だけではない。誰も排除されない社会を目指し、性別や性的指向をめぐる私たちの思考の見直しを迫る問題なのだ」
 來田享子教授はさらに、2018年3月に公表されたIOCの「ジェンダー平等再検討プロジェクト報告書」の「女性と男性の距離,競技区間の長さ,ラウンド数などに関する競技形式ができる限り同じであることを確認する」「可能な限り,男性と女性の間のスポーツ固有の機器と用具は同じでなければならない」という提言を紹介し、「スポーツに対する捉え方を土台から、柔軟に見直せば、性を区別せず競技する道は模索できる、ということだ。そのための科学的なデータを示すことも、「その人がありのままで関われる、誰も排除しないスポーツ」を目指すためのスポーツ科学の役割のひとつになろうとしているのだ」と述べています。
 
* * * * * *

 5月23日には、一連の差別発言に対して、ろう者でありLGBTQでもある方たち7人による抗議行動が行われ、全国の仲間53人から寄せられたメッセージを手話で訴えました。後日、字幕をつけた動画が公開される予定です。
 呼びかけたのは、2018年「Deaf LGBTQ Fukuoka」を設立し、2019年には「ろう×セクマイ全国大会in福岡」の実行委員長を務めるなど、ろう者のLGBTQに関する活動をしてきた野村恒平さん。野村さんは、国会議員による差別発言を受け、当事者の声を目に見える形で届けようと考え、永田町の自民党本部近くで、全国の53人の当事者から寄せられた声を、手話で読み上げました。
「発言の撤回と謝罪を求めます。そして、LGBTQへの差別を禁止する法律の成立を強く求めます」
「当事者たちは傷つきました。人はそれぞれ違う。違っていい。LGBTQ+の人でも生きやすい社会を作ってください」
「私たちは、大事な「命」だから。人間だから。差別は許せない。ありのままで生きたい」
「やっといろんな企業や団体がLGBTのコミュニティにサポートをし、声をあげて少しでも差別のない世の中を築いていこうとしているのに、それを崩そうとするのが国のリーダーのやることなのでしょうか?」
「私は子どもを産むことはできなくても、子どもを育てることはできます。ちなみに私は里子でした。血のつながりがない家庭で育ちましたが愛されていて幸せでした。私にも生きやすい居場所をください。突き放さないでください」
 ほかの参加者の方たちも、「トランスジェンダーに対する差別をなくしてほしい」「愛に性別は関係ない」などと書いたプラカードを手に、抗議の思いを示しました。
 野村さんは「(差別発言は)生きる力もなくなってしまいます。でも、声をあげ続けていきます。カミングアウトできない、社会からの抑圧で声をあげられない当事者もたくさんいます。当事者の想いや声を届けたいと、自民党本部前にきました」「これまで、たくさんの差別発言を受けるたびに、ろうLGBTQ当事者たちの状況を心配していました。ろうLGBTQはダブルマイノリティのため、地域性の影響からカミングアウト出来ない人も少なくありません。性自認・性的指向が揺らいでる方、情報がうまく得られない方は、(差別発言によって)間違った認識を持つなど、様々な影響を受けてしまいます」と語りました。
 参加した40代のトランス男性・エイトさんは、「議員の心ない発言は、私たちを見ていないからだと感じた。知識が足りないことを反省してほしい。私たち、ろうのLGBTQ当事者はダブルマイノリティで、情報を得られないなどの困難がある。議員は私たちの声に関心を向けてほしい」と手話で訴えました。
 同じく参加者のShotaさんは、自民党議員による差別発言で傷ついたり、不安に思ったりしたLGBTQの子どもや若者に対して、「LGBTは病気じゃない。自分らしく生きていればいい。一人じゃない。私たちがいるから大丈夫」と語りました。
 毎日新聞の記事には動画も上がっています。野村さんが手話で訴える姿に、思わず目頭が熱くなります…。ぜひご覧ください。
 
 
参考記事:
「女子の競技に、男性が心は女性だからと参加して」山谷議員のトランスジェンダー発言に当事者側が反論(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/185452
「トランスジェンダー女性を犯罪性と結びつけるな」自民党本部前で抗議集会。会合で相次いだ差別発言を受けて(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60a85018e4b031354797192f
LGBTQめぐる自民議員の発言は「“無知が招く恐ろしさ”の象徴」 オリパラ組織委理事が直言(現代ビジネス)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83400
「差別は許せない」自民議員発言に手話で抗議 LGBTQ当事者ら(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210523/k00/00m/010/132000c
「わたしたちは大事な命。人間」「差別許せない」自民党本部前で伝えた思い(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/ldp-lgbtq-signlanguage?bffbjapan&utm_term=4ldqpgp#4ldqpgp

ジョブレインボー
レインボーグッズ