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トランスジェンダーの受入れが始まった奈良女子大で、当事者学生を支援するサークルが活動

 MtFトランスジェンダーの学生を4月から受け入れ始めた奈良女子大で、当事者の学生が心地よく過ごせるキャンパスづくりを目指すサークル「ならてぃぶ」が活動しています。

 奈良女子大は、お茶の水女子大に続き、昨年6月にMtFトランスジェンダーの学生を受け入れる新方針を表明しました。
 奈良女子大学院生・かーりんさん(仮名)は、その3ヵ月前に、仲間と2人で「ならてぃぶ」を立ち上げたそうです。サークル名は英語で「物語」という意味で、「それぞれの人生の物語を理解したい」との思いが込められているそうです。茶話会やランチ会を催し、当事者の学生の方たちの不安や悩みの相談に乗ったり、性の多様性に関する啓発をしているようです(現在はオンラインで活動している模様)。代表のかーりんさんは、「多様な性の在り方を問い直し理解を深める機会を提供したい」と語っています。
  
 昨年8月のcococolorの記事「令和を生きる若者たちへ~奈良女子大学トランスジェンダー受け入れに込めた思い~」によると、奈良女子大学の今岡春樹学長は、トランスジェンダーの学生の受入れに際して在学生・保護者・教職員らからの意見を聞き、「基本的にはこの取り組みに対して好意的な意見をいただいています。それは、どんな人にとっても、令和のダイバーシティの時代を生きていく中で、その価値観や経験を得られる環境がまさに今求められているという背景があるからだと思います」と語っています。
「実際に入学される学生の方々との意思疎通ができる相談システムを用意し、勉学に限らず、彼女たちの学生生活をより充実し、トラブルや不安のないものにできるようなサポートを、大学として用意していきたいと考えています」
「最も配慮しなければならないと考えているのが、カミングアウトとアウティングの問題です。指導している先生たちとの連携をとりながら、外部の有識者を交えた事前相談や想定を綿密に行っていきます」
 
 こうした大学側の理解や支援体制の整備とともに、「ならてぃぶ」のような支援サークルがあることは、当事者の学生にとって本当に心強いことと思います。素晴らしいです。
 

 なお、日本初として大きな注目を集めたお茶の水女子大では、決定に至るまでに学内で何度も話し合いが持たれ、合意形成がなされているうえ、「相互理解、学習環境の維持」を旨とするトランスジェンダー学生の受入に関する対応ガイドラインが策定され、当事者学生へのきめ細かな支援体制が整えられています。(cococolor「違いはあって当たり前。お茶の水女子大学に根付くダイバーシティ・インクルージョン」、withnews「「女子大は必要?」Xジェンダーの女子高生が、お茶大に聞いてみた」、「女子大学におけるトランスジェンダー学生の受入れ」)
 また、昨年9月には、私立大学として初めて、宮城学院女子大もトランスジェンダー学生を受け入れることを発表しました。すでにFtMトランスジェンダーの学生が複数在籍していたそうで、戸籍と異なる通称名を認めてきたそうです。こうした経緯も踏まえ、2021年度からの受入れを決定しました。性別を問わないトイレや一人で着替えができるスペースなどを整備すること、本人がトランス女性だと開示するかどうかは自己決定を尊重するということも発表されました。
 ほかにも、これまでに日本女子大学や津田塾大学、神戸女学院大学などでトランスジェンダー学生の受入れを検討するという報道がありました。きっと今後も受入れを決める大学が増えていくことでしょう。
 
 一方、お隣の韓国では今年、性別適合手術を終えて性別訂正も済んだトランス女性が淑明女子大学法学部に合格したものの、激しい誹謗中傷を受けて「心がぼろぼろに」なり、入学を断念するという悲劇がありました(詳しくはこちら
 日本も例外ではなく、お茶の水女子大での決定以来、一部の人々から誹謗中傷がなされ、当事者を傷つけています。学校側が受入体制を整えるだけでなく、社会的課題としてトランスジェンダーを守り、支援していくような取組みが広く行われることが大切です。
 そういう意味でも、今回の支援サークルのお話は、とても意義ある(当事者を勇気づける)活動だと言えるでしょう。
 


参考記事:
性の多様性に理解深めて 奈良女子大で院生らサークル活動(共同通信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200524-00000032-kyodonews-soci

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