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同性婚訴訟団体がTRPとコラボ、また、女性と戸籍性別未変更のトランス男性のカップルが新たに訴訟に参加

 一般社団法人「Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」(以降、MFAJ)は、2月13日(木)に記者会見を行い、2019年2月の活動開始から1年が経過したことを報告し、2020年のキャンペーンについて発表しましたが、その中で、女性と戸籍性別未変更のトランス男性のカップルが新たに原告に加わる(東京で追加訴訟を行う)ことも発表されました。


 MFAJ は「結婚の自由をすべての人に」訴訟の弁護団に所属する弁護士の一部と、社会課題の解決に取り組む様々な専門家によって設立され、性のあり方にかかわらず、すべての人が、結婚するかしないかを自由に選択できる社会の実現を目指しています。2019年2月14日、「同性カップルが結婚(法律婚)できないのは憲法違反である」として日本全国で一斉に提訴した「結婚の自由をすべての人に」訴訟と連動し、日本での同性婚実現に向けたキャンペーンを行い、全国に支持の輪を広げてきました。
 今年は、「FOR ALL」をテーマに、「同性婚は日本のすべての人々に関わる活動であること」をアピールするキャンペーンを行います。同性婚はLGBTのみならず、その家族や友人、仕事や趣味、地域活動、SNS等を通じて関わる人々にも関係するイシューであるとして、同性婚を願う人々の声を改めて広めていくことで、日本全体を巻き込む大きなムーブメントを作りたいと考えている、とのことです。
 具体的には、4月25日(土)26日(日)に開催される「TOKYO RAINBOW PRIDE 2020」との連携企画を実施する予定で、裁判所に提出する「同性婚に関する陳述書」の募集キャンペーンを、合計100通を目指して開始します。全国の同性カップル、LGBT、運動を応援してくださる方々などから幅広く集めたい、とのことです。4月29日には全国で、同性婚に関する映画の上映会とトークイベント「しゃべろう同性婚」を実施し、世界の動きと当事者の声を広く人々に届けていくそうです。


 そして、この訴訟では初となるトランス男性の方およびパートナーの女性が、東京で追加提訴を行う予定であることが発表されました(提訴の日程は未定です)
 原告となるのは、都内で暮らすトランス男性の一橋穂(いちはし・みのる)さん(仮名)。性別適合手術を受けていないため、戸籍が女性のままで(現行の性同一性障害特例法では、性別適合手術を受けることが戸籍変更の要件とされています)、パートナーの女性・武田八重さん(仮名)と結婚できません。一橋さんは涙で声を詰まらせながら、会見に臨みました。
 一橋さんは大学生の頃、手術をして男性に戸籍変更をしたいと親に話しましたが、反対にあい、手術を受けられなかったそうです。
「健康な体にメスをいれるなんてとんでもないと、親の理解が得られませんでした。20年以上、女子として振る舞い続けてきたため、突然(性自認が男性であることを)カミングアウトしても、親には受け入れられなかったのでしょう。将来を描けずに何度も『死んでしまいたい』と思いましたが、なんとか生き延びることができ、パートナーと出会うことができました」
 しかし、一橋さんが武田さんと結婚することを告げると、他のきょうだいが結婚した時と同じようには両親は喜んでくれなかったといいます。
「それでも、両親を責める気にはなれませんでした。両親は男尊女卑の色濃く残る田舎で育ち、多様な性のあり方についての教育は受けていません。ですから、トランスジェンダーである我が子が、戸籍上同性の女性と結婚することを素直に喜べなくても仕方なかったと思います」
 トランスジェンダーとしての苦しさから、時にパニックに陥ることもあるそうです。武田さんが支えてくれて、何とか気持ちを取り戻すことができるといいます。
「病める時も、健やかなる時も、一緒にいることを誓いました。他の異性カップルと同じように、私たちが夫婦であると認めてもらうことは、そんなに特別なことなのでしょうか?」

 一方、武田さんも、法律上の性別が同じであるために受けた差別について、語りました。
 お二人は数年前、結婚式場を探そうと、他の異性カップルと同じようにウェディングフェアに参加し、会場の雰囲気が気に入って、あとは契約書にサインするだけというところまでいきました。でも、「正直に話したほうがいいのではないか」という思いから、戸籍上同性であることを伝えました。すると、担当プランナーが、上司に確認すると言ってその場を去り、1時間ほど待たされ、結局、契約を断られたそうです。納得がいかなかったので、支配人を通じて本社に問い合わせました。すると、「当社では同性カップルの結婚式は引き受けない方針だ」という回答がきたそうです。
「これが差別ということなんだとはっきりと感じました」
「私は以前結婚をしていたことがありますが、以前の生活と今のパートナーとの生活は何ら違いはありません。むしろ、今の生活の方が、夫婦としてより固い絆を結べていると感じています」
 でも、私たちは夫婦として生活していても、結婚している他の夫婦のようには守られていないことを強く感じます。例えば、パートナーの具合が悪くなり、病院に付き添った時、何度も二人の関係性を聞かれました。前の結婚ではそのようなことはありませんでした。でも今は、彼が未治療トランスジェンダーであるために、夫婦として扱ってはくれません。
 具合が悪いなか、余計なところに神経を使わなければいけないことは理不尽だと感じました。
 また「事実婚状態のパートナーがいる」と職場の同僚に話をすると、なぜ籍を入れないのと繰り返し尋ねられます。私のことを心配して言ってくれているのはわかるのですが、私たちは、籍を入れたくても入れられないのです。本当のことを話せばいいと思うかもしれませんが、職場でLGBTに対する差別的な発言を耳にするたび、それが自分に向けられるのではないかと思い、怖くなります。
 こんなふうに、日常のちょっとしたことで、心が削られていきます。戸籍の性別が同性であっても、異性であっても、誰もが平等に結婚できることを求めます」

 一橋さんは今回、原告となることを決意した理由について、「学校に行けず、仕事も不安定な人が少なくない。自分も一歩間違えばそうだったかもしれない姿です。今、本当にたまたま生き延びることができて、たまたま素敵な人と出会うことができました。もし自分にできることがあるならやってみようと思い、決めました」と語りました。

 弁護団の上杉崇子弁護士は、戸籍の性別変更に必要な条件とされている性別適合手術は、身体に重大な影響を及ぼし、健康面に負担をかけるために、手術を望まない人も多いと述べました。そして、「現行法では法律上異性のカップルの婚姻しか認められていないため、戸籍を変更していないトランスジェンダーが異性のカップルになっても、戸籍上は同性であるため、婚姻できない事態が生じます」と指摘、あらためて、同性婚実現を訴訟で訴えていくとしました。
「同性婚の実現は、トランスジェンダーを含むLGBTすべてに関わる問題であり、ひいては同性婚を求める当事者を家族や友人、知人にもつ異性愛者や、シスジェンダーも含むすべての人にとって切実な課題である、ということを訴えたいと思います」
 
 なお、ハフィントンポストがお二人へのインタビューを掲載しています。
 武田さんはかつて「家族は闇だと思っていた」と言います。「大切にされていることは感じるけれど、一緒にいるのは苦しい、今までずっとそういうものでした。でも、一橋と一緒になって初めて、家族っていいなと思えるようになったんです。家族って自分で作ることができる、そういう意味ですごくいいものなんだなって思えるようになりました」
 一橋さんも、「彼女に出会って、長生きしたいと思うようになりました。それは家族ができたから。自分一人の体ではなくなって責任感も生まれました。相手を悲しませたくない、幸せな時間を一緒に過ごしたいという感情が強くなりました」と語っています。
(全文はこちら
 
 
 
参考記事: 
日本最大級のLGBTQイベント「TOKYO RAINBOW PRIDE 2020」との連携企画実施決定 日本での同性婚実現を目指す団体「Marriage For All Japan」が設立1年(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000001.000054117
「異性愛カップルなのに結婚できない」 トランスジェンダー男性ら同性婚訴訟を提訴へ(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_3/n_10769/
同性婚はLGBTQすべてに関わる問題だ。トランスジェンダーカップルが婚姻を求めて国を提訴へ(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-transgender_jp_5e44c59ec5b62b85f82e8b21
「異性愛カップルなのに結婚できない」同性婚訴訟でトランスジェンダー男性のカップルが提訴へ(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/marriage-for-all-07

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