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台湾で同性婚をめぐる住民投票が実施されることになりました

 国民投票、9件を一斉実施へ=11月の統一地方選と同時に/台湾台湾 統一地方選にあわせ9件の住民投票実施へなどのニュースをご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、台湾の中央選挙委員会が10月16日、市民団体が実施を求めていた同性婚の是非を問う(ほか、学校教育で同性愛について教えることの是非を問う)国民投票について、実施に必要な数の署名が集まったとして、来月24日の統一地方選挙と合わせて実施することを決めました。「台湾ってもう同性婚が認められたはずでは…」と疑問に思った方もいらっしゃることでしょう。どういうことなのか、台湾でいま何が起こっているのか、この間の経緯を整理してお伝えします。
 
 今年のGW、東京レインボープライドに合わせて来日した「台湾伴侶権益推動聯盟」をはじめとする台湾の活動家のみなさんが、日本のLGBT自治体議員連盟や鈴木賢明治大学教授らと記者会見を兼ねた会合を開き、台湾の現状について語りました。
 彼らの報告によると、2017年5月に最高裁が、同性婚を認めないのは違憲であるとして、2年以内の法制化を政府に対して求める(法制化されなければ自動的に結婚が認められる)という判決を下したことに対し、同性婚に反対するキリスト教系の団体が、(1)あなたは民法の婚姻規定が一男一女の結合に限定されるべきであることに同意しますか?(2)あなたは民法の婚姻規定以外の方法によって同じ性別のカップルの永続的共同生活にかかわる権利を保障することに賛同しますか?(3)あなたは義務教育の段階(小中学校)で、教育省および各レベルの学校がジェンダー平等教育法※1 の規定に基づいて生徒に対してLGBT教育を実施していることに反対しますか?という3つの国民投票案を提出し、今年4月に公布されました※2。結婚は従来通り男女に限定し、同性カップルには別のパートナー法で対応しよう、ついでに義務教育でLGBTについて教えるのをやめさせようとするものです。
 台湾伴侶権益推動聯盟の簡さんは「憲法秩序を破壊する暴挙」だと述べていますが、そもそも最高裁の判決もジェンダー平等教育法にも反するような国民投票案であり、人権の観点から許されないような内容であるにもかかわらず、審査を通過した(政府が容認した)ということがオドロキです。
 国民投票は、有権者の1/4以上が投票し、過半数が賛成すれば採択されるのですが、統一地方選挙という多くの有権者が投票に行くタイミングでこれが実施された時、(例えば2008年の米大統領選に際して、カリフォルニア州で同性婚を禁止するかどうかの住民投票が行われ、わずかに賛成が上回って採択されてしまった、ということがあるように)採択されないとも限りません。台湾伴侶権益推動聯盟の許さんは「採択の実現は難しいと思うが油断はできない」と語っています。アンチ派はガンガンお金を使って、ネガティブキャンペーンを展開しているそうです。
 LGBT自治体議員連盟と台湾のみなさんは今後、LGBTの人権擁護などに向けて連携を進める方針を示しました。許理事長は会見後、「今回の交流で、日本の議員も台湾の状況に関心を持ってくれていることに感動した」とし、さらに、日本ではカミングアウトしているLGBT議員が多々いる(台湾では未だ誰もカミングアウトしていない)状況にふれて「両国違う状況のなかでそれぞれの発展がある。今後は互いに見習い合っていくべきだ」と語りました。
 
※1 台湾では、2003年にジェンダー平等教育法が成立し、男女平等とともにLGBTへの差別の禁止を法律に盛り込んだことで、学校教育でLGBTのことを学べるようになり、社会の意識が大きく変わりました。同性婚を支持するかどうかという世論調査で、台湾は世界的に見ても高水準な(6割〜7割の)賛成の声を得ています。
※2 この国民投票が実施されるためには、2段階の審査を経る必要があり、内容がおかしくないかをチェックする第1審査を通ると公布され、6ヶ月以内に有権者の1.5%に当たる30万人の国民の署名を提出することが求められます(第2審査)。今回のニュースの「実施に必要な数の署名が集まった」は、そういう意味です(ただし、同性婚反対派の投票案ではなく、支持派の案についてです。このあと、お伝えします)

 blogにじいろ台湾 の記事によると、その後、「国民投票には、国民投票で!」ということで、同性婚支持者が対抗するための3項目を案として提出しました。(1)民法の婚姻の規定を改めることによって同性二人が婚姻関係を築くことを支持しますか?(2)ジェンダー平等教育法に明記されているように、義務教育の各段階において、感情や多様性、LGBTに関する課程を盛り込んだ性別平等教育を実施し、子どもたちの性別平等意識向上を図ることを支持しますか? (3)神聖婚姻特別法を増訂し、男女の永続的な共同生活関係をより強く保証することを支持しますか?
  (1)と(2)は先に提出された項目へのアンチテーゼですが、(3)は、今回の反動的な国民投票を主導したのが主にキリスト教系団体であることへの皮肉を込めたものなんだそうです(なんとゲイテイストな運動でしょう)
 結局、(3)は一次審査を通過せず、(1)と(2)、つまり、アンチ派が出してきた国民投票案と真反対の質問項目が、一次審査を通過し、無事に多くの署名が集まり、来月24日の統一地方選挙と合わせて実施されることになりました、というのが、冒頭のニュースの内容でした。
 
 結果的に、来月24日の統一地方選挙の際は、全部で9件の住民投票が行われ、その9件のうち5件が、同性婚の是非をめぐって真っ向から対立する内容を含む、同性愛者の権利をめぐる問いになっているという、なんとも異例な事態になったのです。
・民法の婚姻規定が一男一女の結合に限定されるべきであることに同意しますか?
・民法の婚姻規定以外の方法によって同じ性別のカップルの永続的共同生活にかかわる権利を保障することに賛同しますか?
・義務教育の段階(小中学校)で、教育省および各レベルの学校がジェンダー平等教育法※1 の規定に基づいて生徒に対してLGBT教育を実施していることに反対しますか?
・民法の婚姻の規定を改めることによって同性二人が婚姻関係を築くことを支持しますか?
・ジェンダー平等教育法に明記されているように、義務教育の各段階において、感情や多様性、LGBTに関する課程を盛り込んだ性別平等教育を実施し、子どもたちの性別平等意識向上を図ることを支持しますか?
 
 今年の台湾同志遊行(Taipei LGBT Pride)のテーマは「性平攻略由你説、人人18投彩虹」(18歳になったら投票に行こう)ですが、この国民投票を踏まえて、このようなテーマになっています。
 この国民投票の結果は政策に影響を与えます(当局は2年間は住民投票の結果を尊重した政策を進めることが求められる)ので、同性婚賛成!という結果になれば、法制化も前に進むでしょう。11月24日、台湾の有権者が同性婚支持を表明してくれることを信じます。
 
 
参考記事:
台湾 統一地方選にあわせ9件の住民投票実施へ(NHK)
国民投票、9件を一斉実施へ=11月の統一地方選と同時に/台湾(フォーカス台湾)
台湾、同性婚承認の民法改正に不穏な空気。反対派が「3つの国民投票案」を提出。(ハフィントンポスト)
台湾における「LGBT」の現状〜同性婚は果たして認められるのか〜(台湾新聞)

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