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レポート:香川プライドパレード

11月3日、高松で初となる香川プライドパレードが開催されました。シンボルタワー1階のホールで制服の問題や当事者の居場所作りをテーマとしたトークセッションが行なわれた後、高松駅前広場から市内中心部をパレードしました。レポートをお届けします

 香川県では2019年に中四国初となる丸亀レインボーパレードが開催され、2022年には宇多津町でまんで!さぬきレインボーパレードが開催されましたが、今年、プラウド香川が設立30周年を迎えるのを記念して、高松でプライドが初開催されることになりました。
 プラウド香川の代表の藤田博美さんは(みんなには「おうじ」と呼ばれています)1995年に香川でレズビアンとバイセクシュアル女性のグループ「ハート・ショット」を立ち上げました。その後、ゲイやトランスジェンダーやアライも参加するようになり、名称も「ハート・ショット」→「プラウドin香川」→「プラウド香川」と変わってきました。LGBTQのQOLの向上(メンタルヘルス、家族・友人関係、仕事、法律、教育など)を目的として、当事者の立場から支援、啓発、交流、発信をしてきて、現在は性の多様性に対応できる社会づくりに向けた交流や啓発活動を中心的に行なっています(詳細はこちら)。藤田さんはまた、2005年から香川レインボー映画祭を主催してきました(日本で2番目に長く続いているレインボー映画祭です)。昨年は草の根で活動する女性リーダーを讃える「チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞」の5人の入賞者のうちの1人に選ばれています。
 藤田さんは昨年の岡山レインボーフェスタのステージで高松でのパレード開催を発表し、1年かけて、香川のみなさんと準備を進め、この日を迎えました(なお、以前の「まんで!さぬきレインボーパレード」の実行委員会はその時に解散し、残った資産をすべて香川プライドパレードに寄付したそうです)
 

 そうして岡山レインボーフェスタの翌日の11月3日(月祝)、香川プライドパレードが初開催されました(すぐ近くの街で1日違いで開催されたのは本当によかったです。おかげで両方とも取材できました)。11時半、高松駅前の、たぶん市内でも有数の高層ビルではないかと思われるシンボルタワーの1階にある多目的ホールが会場となりました。
 レインボーカラーに飾り付けられた会場には、いくつもの団体や企業のブースが出展され、県知事からのメッセージも展示されていたり、いろんなパンフレットやチラシが置かれていたり、Marriage For All Japanが展開する「国会議員に手紙を書こう」コーナーも設けられていたりしました。
 全部でなくてすみませんが、出展ブースの紹介をさせていただきます。






 12時にステージイベントが始まりました。
 トランス女性でビューティカウンセラーとして活躍する高野さんが司会を務めます。
 最初に藤田さんがご挨拶し、開催に至るまでさまざまに協力してくれた方たちに感謝を述べるとともに「私たちは誰かを説得するためではなくここにいるということを示すために歩きます」「次の世代にここにいていいんだと思える社会を」と語りました。
 それから、高松市市民局長の中谷氏が市長のメッセージを代読しました。
 高野さんは、香川県は全市町村が同性パートナーシップ証明制度を導入した全国で初めての県ではあるものの、まだまだ当事者の子たちは悩んでいるし、親に言えないものがありますと、なぜパレードが必要かということを物語っています、と語りました。




 最初のトークセッションは「制服×LGBTQ+」。あしたプロジェクトの代表の谷さん、副代表の福井さん、一社)教育コミュニティの三木さんが登壇しました。あしたプロジェクトは香川県のトランス男性2人が中心となり、香川県の教育現場や企業、医療機関などに向けて講演会や研修会を行なったり、学校の制服の問題について活動したりしてきた団体です。以前の岡山レインボーフェスタでも壇上で制服を持って訴えていた姿が印象に残っています。福井さんは小学校に上がる前から性別違和を抱いてきたと、谷さんは学校に通う間、毎日が挫折だったと自身の体験を語っていました(福井さんは、セーラー服を着て悲しそうにしている写真なども見せていました)。香川県では全ての学校が(小学校も全部)制服なんだそうですが、男子は詰襟の学ラン、女子はセーラー服と決められるよりも、選択の幅があるブレザーのほうがいいなど、ジェンダーにかかわらず着やすい標準服についてさまざまなお話が繰り広げられました。


 次のトークセッションは「地方の状況と当事者の居場所づくり」というテーマで、あしたプロジェクトの谷さんがモデレーターを務め、藤田さん、三豊にじいろ研究会の田中さん、えにしの大澤さんが登壇しました。藤田さんは22歳のときに女性が好きだと気づき、バイセクシュアルの女性と知り合って団体を立ち上げ、岡山のグループにも参加していて、そこが居場所だったと語りました(現在はノンバイナリー&パンセクシュアルを自認しているそうです)。田中さんは、三豊市には何もなく、プラウド香川でゲストを呼んでの勉強会があり、そこで勉強した、ハーヴェイ・ミルクにカミングアウトの意義を教えてもらったと語りました。大澤さんは初めは居場所がなかったけれども、島に移住者が増えて雰囲気が変わってきたと語りました。とても興味深かったのは、高松、三豊、小豆島それぞれにある「隣保館」という人権センターで「にじまちカフェ」というお茶会を開いて居場所づくりをしているというお話でした(地元のおじい・おばあもお茶に飲みに来ているそう)。香川はほかにも観音寺に「虹LAB」という団体があるそうです。感心したのは、谷さんの司会がとても上手かったことです。笑いもとりつつ、ソツなく、的確で。


 この回の締めの言葉で高野さんが、香川のみんなが、初めは至らないところもあったけれども、頑張って一緒に成長してきたんです、と感慨深げに(そして涙ぐみながら)語っていらして、ジーンときました。

 トークセッションの後、14時に高松駅前広場に集合してパレードをします、それまでトイレに行ったり休憩しましょう、とアナウンスされました。
 
 14時前、駅前広場に行くと、高松市役所の吹奏楽団の方たちが演奏していました。(浜松の駅前でこういうふうに楽団が演奏しているのを見たことがあったので)たまたま演奏する場面に出くわしたのかなと思っていたら、このパレードのためにわざわざ来て演奏してくださっているとのことで、感激しました。「ダンシング・クイーン」などLGBTQコミュニティのアンセムとなっている曲で見送ってくださいました。パラっと一瞬、雨が降ったりもしたのですが、みなさんとても晴れやかな笑顔で演奏を聴いていました。素敵なサプライズでした。


 演奏が終わると、駅前広場から大きなホテルの横を通って高松城や琴電高松築港駅の方へと歩きはじめ、パレードがスタートしました。
 歩道を歩くかたちのパレードなので、フロートの車もなく、警察官の方もいません。
 先頭のほうで、パレードについて、性の多様性についてアナウンスしながら進みます(話す方が交代していくので、それぞれ個性が感じられてよかったです。プロみたいな方もいました)
 国道30号線沿いに南下し、中央公園の交差点のところで階段を降り、金色のオブジェがある光の広場を通って再び地上に出て、国道11号線沿いに東に進み、ライオン通商店街に入りました。お店の前に出てレインボーフラッグを振ってくれる方もいたり。逆に商店街にいた方たちのなかには怪訝そうな顔で見ている方もいたり。昭和を感じさせるお店がたくさんあって、趣がある商店街でした。
 ライオン通商店街を抜けて、三越の横を通り、弁護士のみなさんがフラッグを振ってくれている香川県弁護士会館の前を通り、RNC西日本放送とヨンデンの間(金毘羅街道)を通り、玉藻公園が見えたところで左折し、公園沿いに(ジュリアン・オピーの彫刻作品を右手に見ながら)再び駅前に戻ると、今度は高松中央高校の吹奏楽部の方たちが「おかえりなさい」の演奏をしてくれていました。たまたま駅前を通りかかった方たちも含めて、大きな拍手が沸き起こっていました。
 最後に藤田さんがご挨拶し、みんなで集合写真を撮りました。(その後、再びシンボルタワー1階のホールに戻って閉会式が行なわれ、終了後はアフター交流会も開催されました)
 パレード参加者は約120名と発表されましたが、応援したり見に来てくれた方を合わせると200人は超えていたようです。



















 

 
香川プライドパレードを振り返って

 まずはパレードの開催と成功、おめでとうございます。
 香川県では、藤田さんの香川レインボー映画祭のほか、三豊市の川田中家のカップルが「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告として活躍していたり、全国で初めて全市町村で同性パートナーシップ証明制度導入を成し遂げたということは知っていたのですが、今回、あしたプロジェクトのみなさんや高野さんなど、もっといろんな方が(小豆島でも!)活動し、同じ県の仲間としてつながり、こうして力を合わせて香川プライドパレードを開催したのだということがよくわかり、そのコミュニティ的な姿に胸を打たれました。
 
 午前中に讃岐うどんを食べてから高松城のある玉藻公園や高松港の辺りを散策したのですが、そういう観光地にアート作品もとけこんでいたりして(瀬戸内芸術祭も開催されていました)、駅前にこんなに魅力的なスポットが集まっている街ってなかなかないなぁと思いました。そんな高松の街でプライドパレードが行なわれ、レインボーフラッグやいろんなフラッグが旗めいたこと、本当に素敵でした。美しいとさえ思いました。
 
 つい最近まで四国って行ったことがなくて、あまり縁がない土地だったのですが、徳島に行き、松山に行き、今回、高松にも行って、それぞれの街のコミュニティのみなさんとふれあうなかで俄然、親しみが湧いて、いい所だなぁと思うようになりました。
 そして、岡山や愛媛や香川のパレードに参加してみて、瀬戸内の人々の、のんびりしたおおらかな雰囲気が、とても心地よく感じられました。過去にすごく傷ついたり、都会でのいろいろに疲れたりしたLGBTQの方が四国に移住し、傷を癒したり、ゆったり暮らしているという話をちらほら聞きます。今回、そういう移住者の方が島の空気をLGBTQフレンドリーに変えることに貢献してくれていると歓迎する声も聞かれました。LGBTQにとって香川県はただの「地方」ではなく、新しい人生を始めたりできるような、未来の可能性を秘めた土地なんじゃないかと思いました。

 こうしてパレードを開催してくださったおかげで、LGBTQとしても人間としても視野が広がるような体験をすることができました。香川県の素敵なコミュニティのみなさんに感謝申し上げます。

(後藤純一)

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