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エコノミスト・グループがアジア企業のビジネスコミュニティに実施した調査で、LGBTのダイバーシティ&インクルージョンに前向きな進展が見られることがわかりました

 英『エコノミスト』誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」の発表によると、中国、香港、インド、インドネシア、日本、シンガポール、台湾のビジネスパーソンに実施した調査で、アジアにおいても、ビジネスコミュニティにおいてはLGBTのダイバーシティ&インクルージョンに前向きな進展が見られることがわかりました。


 この調査は、エコノミスト・グループが2020年8月〜9月、Manulife、Barclays、野村ホールディングスの支援を受けて実施した「Pride and Prejudice: The next chapter of progress」と題する調査です。「Pride and Prejudice」は、エコノミスト・グループが主催する複数年にわたる取組みで、職場と社会全般の両方でLGBTコミュニティの権利擁護を前進させることに焦点をあて、イベントや独自の報告、支援活動、調査研究を行なっています。今回が5回目、アジアでは初となります。

 この調査では中国、香港、インド、インドネシア、日本、シンガポール、台湾のビジネスパーソンへのアンケートで359人の正社員から回答を得ました(うち44%が取締役以上、16%が経営幹部、8%がLGBT)。一部を抜粋してご紹介します。

Q. 貴社はLGBTのダイバーシティ&インクルージョンにおいて過去3年間にどの程度進展を遂げましたか?
かなりの進展13.9%  大きな進展25.3% それなりの進展23.4% いくらかの進展17.3%

Q. 次のうちどれを貴社で目にしたことがありますか?
潜在的なLGBT差別(無意識の先入観。差別が目に見えないかまたは明白な証拠がないかたちで起こる)44.6%
自社をよりLGBTインクルーシブにするための率直な討論40.7%
あからさまなLGBT差別(言語的または身体的)29.0%

Q. あなたの意見では、カムアウトすることが貴社の従業員の将来のキャリアにどう影響を与えると思いますか?
大きな足枷となる16.2%
わずかな足枷となる24.2%
足枷にも利点にもならない48.5%
わずかな利点となる6.1%
大きな利点となる5.0%

Q. 3年後を見据えた場合、次のことは今と比較してより容易になると思いますか、それともより困難になると思いますか?
・LGBT従業員が自らのSOGI(性的指向・性自認)を他のスタッフにカムアウトすること
かなり容易9.7% ある程度容易33.4% どちらでもない36.3% ある程度困難15.6% かなり困難7.0%
・LGBTの権利支援において組織が公に積極的な支援に関与すること
かなり容易12.3% ある程度容易29.0% どちらでもない40.1% ある程度困難12.3% かなり困難4.7%
・カミングアウトしたLGBTが上級管理職に就くこと
かなり容易8.9% ある程度容易26.7% どちらでもない40.9% ある程度困難15.3% かなり困難6.7%

Q. 自分の仕事仲間の集団はSOGIに関してどの程度多様性があると考えられますか?
極めて多様性がある8.9% とても多様性がある25.3% ある程度ある34.0% あまりない26.2% 全くない5.3%
(「仕事以外の社会的付き合い」や「幅広いコミュニティ」に比べて、多様性があるとの回答は少ない)

Q. 職場におけるLGBTのダイバーシティ&インクルージョンの次の各分野において進歩を遂げるため、どの程度の投資の増加または削減を希望しますか?
投資の大幅な増加13.1% ある程度の増加26.5% 増加も削減もなし46.2% ある程度削減6.4% 大幅削減0.8%


Q. 職場での効果的なLGBTのダイバーシティ&インクルージョンによってどの面が最もプラスの影響を受けると思われますか?
人材マネジメント(最高の人材・才能の呼び寄せおよび囲い込み)42.1%
従業員の生産性38.4%
職場での協力体制36.2%
企業の評判32.3%
提携機会25.9%
イノベーション24.0%
顧客体験/クライアントサービス23.4%
財務業績14.2%
マーケットプレイスでの競争力のある立場11.7%
 
Q. あなたの国のビジネス環境を考えた場合、LGBTフレンドリーな職場方針および慣行を実施することは、ビジネスチャンスになると思いますか? それともビジネスリスクになると思いますか?
ビジネスチャンス45.7%
ビジネスリスク17.3%
チャンスでもリスクでもない36.2%

Q. 以下について、どの程度まで抵抗なく受け入れられますか、あるいはどの程度まで抵抗を感じますか?
・LGBTのマネージャーや同僚、部下と働く
非常に受け入れられる26.5% ある程度受け入れられる35.1% どちらでもない26.2% ある程度抵抗がある5.8% 非常に抵抗がある6.4%
・LGBTのサポートや協力のネットワークに参加する
非常に受け入れられる18.4% ある程度受け入れられる31.2% どちらでもない33.7% ある程度抵抗がある8.4% 非常に抵抗がある7.2%
・職場でレインボーフラッグのピンなど、目に留まるLGBT支援のシンボルを身に着ける
非常に受け入れられる16.2% ある程度受け入れられる24.0% どちらでもない34.8% ある程度抵抗がある15.6% 非常に抵抗がある8.9%
・LGBT支援の集会やパレードに参加する
非常に受け入れられる16.4% ある程度受け入れられる25.1% どちらでもない31.8% ある程度抵抗がある15.9% 非常に抵抗がある10.0%
 
Q. 以下の各文についてどの程度同意または反対されますか?
同意(強く同意、ある程度同意)が多い順に、
・アジアのビジネス文化では、SOGIについて率直な議論を交わすのは難しい66.6%
・反LGBT法令が制定されている国においてLGBT従業員を守るために企業がもっと努力する必要がある66.3%
・職場のダイバーシティ&インクルージョンに関する方針および慣行は現地/地域の信念および文化を考慮する必要がある61.5%
・ビジネス界が、LGBTのダイバーシティ&インクルージョンに関する変化を推進することは基本的急務である58.5%
・LGBTのダイバーシティ&インクルージョンには他の領域における多様性よりも更に著しい文化的転換が求められる57.9%
・LGBTのダイバーシティ&インクルージョンを提唱する企業で働きたい55.4%
・アジアではLGBTが自らのSOGIを秘密にしたほうが昇進しやすい52.6%
・LGBTのライフスタイルは基本的にアジアの価値観と相いれない47.4%

Q. あなたが勤める組織が、LGBTのダイバーシティ&インクルージョンなどの広範な社会問題について社員の価値観を反映することはどの程度重要ですか?
非常に重要22.8%
ある程度重要46.5%
どちらともいえない19.2%

 日本の調査ではあまり聞かれない質問などもあり、たいへん興味深いデータとなりました。
 カムアウトすることがLGBT従業員の将来のキャリアに対して足枷となると回答した方が全体の約4割、アジアではLGBTが自らのSOGIを秘密にしたほうが昇進しやすいとの回答が過半数に上っていて、まだまだカミングアウトが難しい現状があると考える人が多い一方、LGBTの同僚と働くことに抵抗があると回答した方は12%程度にとどまり(2016年の連合の調査では「嫌だ」が35%でした。かなり低い数字と言えるでしょう)、自分自身は受け入れると表明している方が多くなっています。
 また、ビジネス界がLGBTのダイバーシティ&インクルージョンに関する変化を推進することは基本的急務であると考える方が58.5%、職場がLGBTフレンドリーな施策を進めることがビジネスチャンスとなると考える方が45.7%に上るなど、社内LGBT施策の推進が必要だ、ビジネス的にもプラスになる、賛成だと考える方が多数を占めていることがわかりました。
 実際に自身が勤める会社が過去3年間にLGBTのダイバーシティ&インクルージョンに関してかなりの進展または大きな進展があったと回答した方も4割近くに上っています(国別に見ると、中国で34%、インドで21%、台湾で18%、日本とシンガポールで10%だったそうです)
 
 レポートの結論として、このように述べられています。
「アジアのように広大で多様性に富んだ地域におけるLGBTの権利の進展は、簡単なプロセスではありません。今後、さらなる妨げに直面することは避けられませんインドネシアおよびインドでのLGBTのライフスタイルにまつわる宗教的保守主義から中国の市民社会のあらゆる面において厳しい政府の規制まで−−。この大陸のLGBTの人々の目の前には大変な課題が立ちはだかっています。しかし、欧米の同志が証明してくれているように、進展の車輪が回り始めたら、それを反対に回転させることは非常に困難なのです。
 アジアの企業は、まだ欧米の企業に比べ、LGBTイシューを議論することにおいて同水準に達するには程遠い状態ですが、それでも動きは見られます。中国のEコマース大手のアリババは遠慮がちにLGBTの権利に対するサポートを近年、表明しました。香港での有利な裁判判決は(ほとんどが多国籍企業であるとはいえ)この地域の企業の間でのLGBTフレンドリーな方針の進行に付随して起こっています。インドでも国内企業によるLGBTの人々への幅広い市民からの承認の兆候が多く見られています。
 このことは、アジア企業が、前進に向けての進展を推進し、従業員と足並みを揃える良い立場にあることを示唆しています。特に若い世代にとっては、LGBTの権利の促進は大きな優先課題です。アジアは今後も様々な対照的な側面(政治、社会、技術面、その他)を持ち続けるでしょう。しかし世界の他の国々では、LGBTイシューの次なる進展を心待ちにしており、声を揃えて力強く承認を訴えています」
(レポートの全文はこちら

 

 
参考記事:
アジア企業の経営層の4割が「LGBTであることを公表するとキャリアの障害になる」と回答-エコノミスト・グループの調査部門が最新の調査結果を発表(Digital PR Platform)
https://digitalpr.jp/r/44369

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