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LGBT関連ニュース

東京新聞に「かぞくのカタチ」という、多様な家族の姿を伝える連載記事が掲載されました

記事日付:2020/09/26

 9月23日から25日にかけて東京新聞に掲載された「かぞくのカタチ」がとても良い連載記事でしたので、簡単にご紹介します。
 
 「「家族」に集計されない私たち 早い法整備願う<かぞくのカタチ㊤>」は、平野絢音さん(薬剤師)と野村茉由莉さん(打楽器奏者で派遣社員)のカップルの幸せな姿を描いています。お二人は、同性パートナーシップ証明制度があるからという理由で東京都府中市に引っ越し、パートナーシップ証明を受けただけでなく、「社会観念上の婚姻に相当する関係」との契約を書いた公正証書を作成し、「結婚」したといいます。それぞれの家族にもお互いを紹介していて、職場でも上司や同僚に伝えました。絢音さんの上司は法律婚でなくても結婚休暇を取れるように人事課にかけあってくれました。勤務する病院では、パートナーシップ証明書を提出すれば「婚姻に準じて取り扱う」との方針が出ました。近所のよく行く店では「姉妹ですか」と聞かれ、「パートナーです」と答えると、年配女性から「あら、そうなの」と笑顔が返ってきたといい、レストランで結婚のお祝いプレートが自然に出てきて祝福してもらったこともあるそうです。お二人は「思っていた以上に、私たちの周りは受け入れてくれている」と、だからこそ「人々の意識に日本の法制度が追い付いていない」と感じているそうです。

 「一緒にいると楽しくて…望むのは「結婚できる自由」<かぞくのカタチ㊥>」がフィーチャーするのは、トランス男性の間々田久渚さん(ウェブデザイナー)と田中沙織さんのカップル。久渚さんは群馬県でLGBTQ支援団体「ハレルワ」を運営し、地方の当事者の居場所づくりや交流を進めています。大学時代からホルモン治療をし、男性として社会生活を送ることができていて、「健康リスクを冒してまで手術はしたくない」と思っています。日本では性別適合手術を受けなければ戸籍性を変えられないため、久渚さんは男性として暮らしていますが、戸籍性は女性のままです。そのため、沙織さんとは戸籍上同性であり、結婚することができません。海外では手術を受けなくても出征証明書やIDの性別を変更できる国が増えてきており、お二人は、日本もそうなることを願っています。「体を傷つけなくても、戸籍の性別を変えられるように」

 「一人親で育ててくれたゲイの父に感謝<かぞくのカタチ㊦>」は、ゲイである小吹文紀さん(生命保険販売)と、その息子の小吹文貴さんのストーリー。今まで読んだことのない、驚きと感動に満ちた物語でした。
 文紀さんは結婚前、男女ともに交際経験がありました。女性と結婚し、文貴さんが生まれましたが、結婚生活は長くは続かず、文貴さんが3歳の時、父子家庭になりました。文紀さんのセクシュアリティは当時、「L、G、B、Tのどの枠にも当てはまらない感じ」だったそうですが、今はゲイと自認しているそうです。 
 物心ついた文貴さんは「うちは周りとは違うな」と気づきつつも、「それがなんだ」と思っていたそうです。思春期になり、父親の文紀さんがLGBTQ支援の活動を始めた後も、ゲイだと直接聞いたことはなく、「父は父。セクシュアリティは単なる事実。もし友達や周りの人がそれで離れていったら、それまで」と思っていたそうです(本当によくできた息子さん…感涙)
 文紀さんは江戸川区で、両親と同居しながら文貴さんを育てました。父子家庭であることを理由に息子が嫌な思いをすることがないよう、学校行事には必ず参加したそうです。「息子の同級生の人気者になろうって頑張りました」
 「イクメン」という言葉もなかった時代、子育てで早めに帰宅すると、職場で「使えないやつ」と言われたりしたそうです。一方、ゲイコミュニティでは、子どもがいることで疎外感も味わったそうです。
 4年前、保険業界に転職しましたが、勤務先の損害保険会社が配偶者の規定に同性パートナーを含める施策を実施し、喜んでくれる当事者のお客さんを間近で見て、「仕組みを変えることで楽になる人がいる」と実感、自分自身も「ふっと体が軽くなった」ように感じたそうです。
 そうした経験から、職場があった豊島区でLGBT支援団体「レインボーとしまの会」をつくり、区の男女平等推進センター運営委員としても、性的マイノリティ差別を禁止する条例の制定にこだわったといいます。
 一昨年、保険代理店に移り、レインボー・リール東京でブースを出展したりという形でLGBTQコミュニティにかかわってきましたが、今年5月、同性パートナーを受取人にする手続きを簡単にし、HIV陽性者や性同一性障害者も加入できる「パートナー共済」の募集を始めました。
 このようなお父さんの仕事や活動を見て、文貴さんは「性別やゲイかどうかなんて概念が邪魔しない社会になってほしい」と語っています。
 コロナ禍で以前より頻繁には行けないものの、文貴さんは毎月、ゲイの父に付き合い、ゲイバーに飲みに行っているそうです。「育ててくれた感謝を返すのは、当たり前だから」
 
 特に小吹さん親子の物語は、SNS上でもたいへんな反響がありました。
 異性と結婚し、お子さんがいらっしゃる同性愛者の方はたくさんいらっしゃいますが、あまり公に語られることがありませんでした。文貴さんのように、父親がゲイであるということを(グレたりせず)まっすぐに受け止め、受け容れ、さらにはゲイバー飲みにまでつきあってくれるというのは、前代未聞で、本当に素敵!と感じる方が多かったのです。 


 LGBTQの人々のリアリティに迫ったルポとして高く評価された新聞の連載といえば、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞(草の根民主主義部門、2010年度)および第29回ファイザー医学記事賞優秀賞を受賞した毎日新聞の丹野恒一記者による「境界を生きる」が思い出されますが、今回の東京新聞の奥野斐記者による「かぞくのカタチ」も、いまのLGBTQ+Allyのリアリティを伝える、たいへん良質な記事でした。どの回の出演者の方たちもとびきりの笑顔で写真に写っていたということも、特筆に値します。これまで、当事者はこれだけ困っている、苦しんでいる、というルポが多かったなかで、幸せな姿を見せながら、当事者もそうでない人も素敵だと思えて、それでいてLGBTQの社会的課題のこともきちんと伝えるというのは、なかなかできることではありません。素晴らしかったです。

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