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米国のLGBTQの権利擁護に多大な貢献を果たしたルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が亡くなりました

 米連邦最高裁のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が9月18日、87歳で亡くなりました。
 アメリカで最も尊敬される女性の代表であり、法曹界や政界だけでなく、あらゆる世代の女性やLGBTQからも絶大な尊敬を集め、RBGの愛称で親しまれ、キャラクターグッズも販売されるほどの人気でした。
 彼女の死を悼み、世界で最も有名なLGBTQマガジン『Advovate』は「革命的な最高裁判事」「LGBTQや女性にとっての公民権のチャンピオン」と、英国の『Pink News』は「平等の権利のパイオニア」「猛烈なLGBTQのチャンピオン」と讃えています。RBGは男女平等のための闘いだけでなく、LGBTQの権利擁護にとってもヒーローと呼ばれるような貢献を果たした方だったのです。
  
  
 今年公開された映画『ビリーブ 未来への大逆転』『RBG 最強の85才』にも描かれていますが、RBGは1956年、夫より1年遅れてハーヴァード大学のロースクールに進学、500人の学生の中で女性は9人しかおらず、当時の学長は彼女たちに対し、「男性の入学枠を奪ったことへの正当な理由を述べる」よう要求したといいます。その後、コロンビア大学のロー・スクールに移動し、首席で卒業しましたが、女性であるという理由で、あらゆる法律事務所に断られ、弁護士の道をあきらめざるをえませんでした。彼女は1963年にラトガース大学のロースクールで教授となり、アメリカ自由人権協会(ACLU)の「女性権利プロジェクト」を共同創設し、ACLUの会長として多くの女性差別事件を手がけ、6つの歴史的な最高裁判決に弁護士として関わり、そのうち5つで勝訴しています。
 1980年にはカーター大統領からワシントンD.C.の連邦控訴裁判所の判事候補に指名され、そして1993年、クリントン大統領の指名を受けて、史上2人目の女性の最高裁判事となりました。
 
 最高裁判事としてRBGは、1996年のローマー裁判(コロラド州が同性愛者保護を禁止する(同性愛差別を容認する)州憲法修正を行ったことに対し、無効宣言と執行差し止めを求めた裁判。同性愛者の原告の訴えを認め、コロラド州に違憲判決を言い渡しました)を皮切りに、LGBTQに関するあらゆる審議で、その権利を支持する票を投じてきました。
 2003年のテキサス州のソドミー法(同性間の性行為を禁じる法)をめぐるローレンス裁判では、テキサス州だけでなく残りのすべての州に残るソドミー法を無効化しました。
 2013年には、ウィンザー裁判で結婚防衛法を無効とし、カリフォルニア州の提案8号(同性婚禁止に賛成する住民投票)を終結させました。この時RBGは口頭弁論で、結婚防衛法が同性カップルの結婚を禁止していることに対して「アメリカは人々に2種類の結婚を課している」と述べました。「完全な結婚。そして、スキムミルクのような結婚だ」
 2015年のアメリカ全土での同性婚の実現、そして今年の性的指向・性自認に基づく解雇を違法と認める歴史的な判決においても、RBGの果たした役割は決して小さくなかったはずです。
 近年、トランプ政権が(強引に)2人も保守派の判事を入れてきたことで最高裁は保守派が優勢になりましたが、RBGは(がんと闘いながら)多勢に無勢のなか、舌鋒鋭く、説得力のある反対意見を述べ続けました。
 
 RBGの訃報に接し、「私たちの国は、歴史的な法曹家をたったいま失いました」と、ジョン・ロバーツ最高裁長官は声明を発表しました。「最高裁の私たちは、大切な同僚を失いました。今日はみんな悲しみにくれています。しかし、ルース・ベイダー・ギンズバーグの記憶は、未来まで続くと確信しています。私たちが知っていた通りの彼女を。疲れ知らずで決然として正義を守る彼女のありのままの姿を、未来の世代も記憶し続けると」

 多くのLGBTQのセレブも、追悼のコメントを発しています。
 初のゲイの大統領になるかもしれないと言われたピート・ブティジェッジは、すべての政治家の中で最も心のこもった追悼を捧げています。「RBGは正義の巨人だった。彼女の法理学は、全アメリカ人の権利を拡張し、私たちの生活をより良いものに形づくった。そして彼女の判例は、今やこの国の歴史の中で輝きを放ち、後の世代をも鼓舞している」
 オープンリー・レズビアンのサッカー選手、ミーガン・ラピノーは、「これは壊滅的で、計り知れない損失だ。私たちは多くを彼女に負っていた」とコメントしました。
 全米最大のLGBTQ団体であり、企業のLGBTQ施策を評価していることで有名な「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」のアルフォンソ・デヴィッド代表は、「私たちは、無条件で議論の余地のないヒーローを失った。ギンズバーグ判事は、ただのアイコニックな判事ではなかった。彼女は、善なるものへの止めることのできない力だった。私たちは彼女のレガシーと、すべての人への正義、公正、平等を求める未曾有の闘いを讃えなければならない」と述べました。
 メディアにおけるLGBTQの描写が公正かどうかを監視する団体「GLAAD」のサラ・ケイト・エリス代表は、「私たちは深く悲しんでいる。彼女はLGBTQの平等の真のチャンピオンだった。私たちは永遠に、『法の下の平等』という精神に照らしてアメリカの最高の理想に向けて尽力した彼女の生涯を讃える」と語りました。
 トランスジェンダーの俳優ラヴァーン・コックス(『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』)は、「あなたの仕事と人生のおかげで、私たちはたくさんのことが可能になった」と感謝しました。
 バイセクシュアルの俳優アンソニー・ラップ(ミュージカル『RENT』で最初にマーク役を務めた俳優)は、「失意のどん底にいる。正直言って、怖いよ。RBGは最も偉大な女性、最も偉大な人間の一人だった。彼女を失ったら、どんなことが起こるか、怖いんだ」と語りました。
 『ルポールのドラァグレース』もTwitter公式アカウントで「RBGはすべてのアメリカ人に自由と平等の権利への与えようと努め、あらゆる世代に勇気を与えた」とコメントしています。
 
 ちなみにRBGは、歴史的なアメリカ全土での同性婚実現の前に、少なくとも3組の同性カップルの結婚式の司祭を務めていたそうです。女性やLGBTQなどあらゆるマイノリティの自由と平等のために生涯を捧げたと言っても過言ではありません。彼女はマイノリティにとっての希望でした。
 心から感謝するとともに、ご冥福をお祈りいたします。

 


参考記事:
Revolutionary SCOTUS Justice Ruth Bader Ginsburg Has Died(Advocate)
https://www.advocate.com/news/2020/9/18/revolutionary-scotus-justice-ruth-bader-ginsburg-has-died
Tributes flood in for justice Ruth Bader Ginsburg, an equal rights pioneer and fierce LGBT+ champion. Thank you, RBG(Pink News)
https://www.pinknews.co.uk/2020/09/19/ruth-bader-ginsburg-death-tribute-supreme-court-lgbt-rights-barack-obama-hillary-clinton/
RBG Fought Like Hell for LGBTQ+ Equality. It’s Our Turn to Fight For Her Legacy(them.)
https://www.them.us/story/ruth-bader-ginsburg-death-legacy-tributes
【ギンズバーグ最高判事死去】アメリカでもっとも尊敬された女性RBGの生涯(BUSINESS INSIDER)
https://www.businessinsider.jp/post-188622
全米が哀悼に包まれる。RBG・ギンズバーグ米最高裁判事はなぜ時代のアイコンとして尊敬を集めたのか。(Yahoo)
https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20200919-00199056/

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