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企業PR動画にゲイを侮辱するようなキャラクターが登場していることに批判の声

 お笑いタレントの宮迫博之さんが、ゲイを面白おかしく誇張した「轟さん」というキャラクターで、靴・ファッション通販のロコンドという会社でバイトを始めるというていで職場の様子をレポートし、企業PRをする動画をYouTubeに掲載し(動画はこちら)、当事者の方を中心に批判の声が多数、上がっています。

 「轟さん」はもともと2000年代前半に『ワンナイR&R』(フジテレビ)という番組の中で人気を博した、宮迫博之さん扮するキャラクターです。(フレディ・マーキュリーを彷彿させる)白いタンクトップとタイツという姿で、眉毛を異様に太くするなどしたメイクをして登場し、男性に触りたがり、女性を嫌う(ロコツに冷たくする)、シュワちゃんのことが大好き、という設定です。
 宮迫さんは3ヶ月くらい前から自身のYouTubeチャンネルでこのキャラクターを復活させており、今回は、以前からPRに協力していたロコンドの職場に「轟さん」として潜入したかたちです。
 
 2017年、保毛尾田保毛男というゲイを侮辱するキャラクターを放送して非難を浴び、フジテレビの社長さんが謝罪するという事件がありました。今回はテレビではなくYouTubeですが(今やYouTubeのほうが影響力があるのではないでしょうか)、昔人気だった(許されていた)キャラを(おそらく、もう1回やったらウケるだろう、というねらいで)復活させてしまったという点で、似たような構図であると言えます。
 
 一般社団法人fairの松岡宗嗣さんは、「同性愛をカリカチュアライズ(戯画化)し嘲笑する。いつまでこういうの続くんだろう」「影響力のある人による同性愛を嘲笑する表現が再生産し続けられることで当事者は抑圧されてきた。その構造を変えるためには一つ一つの表現への批判が必要」「おそらく当人もロコンドも"悪気"はない。だからこそ問題が根深い。ようやく2017年の保毛尾田の時に当事者だけでなく多くの人から"問題だ"と声が上がり始めた。この一連の流れを追っていないのだろうか。若い世代も多く見るような媒体でこうした笑いが再生産し続けられることには懸念」と述べ、問題点を指摘しています。

 Twitter上では他の方からも「当時これが流行ったことを今責める必要はないけど、いま復活させるのはダメだよ。。」「恥ずべき芸だと思います。昔に比べLGBTQ+がこんなに言われてる中でもやるっていう精神がさらに理解できません。こういう嘲笑はだれも幸せにならないし、誰かを悲しませるような笑いはエンターテイメントじゃないと思います。嘲笑の先にいる多くの人が悲しむことを再認識するべきですね…」「せやろがいおじさんが『結局、「これやらないとお笑いなんて成立しなくなるじゃん!」って言っている人は、ただ『ラクしたいだけ』だと思いますね』と言っている。「僕たちは「誰かを見下ろす笑い」のままでいいのか」をぜひ、多くの人に読んでほしいと思う」などの声が上がりました。オープンリー・ゲイの長岡京市議、小原明大さんは「これゲイ差別だって話になるのも当然ですが、性欲を丸出しで人に向けるのを笑いのネタにする自体がもう企業PRとしては得にならないと考えるべきですよね。女〜!女〜!触りてえ〜!とか言ってたら即アウトでしょう」とコメントしています。

 その後、ロコンドの田中社長から「保毛尾田保毛男と轟さんが同じ構図という批判があるみたいだけど的外れですよ。保毛尾田が批判されたのは同性愛自体を嘲笑の的にしたから。轟さんはマッチョ好きだけど同性愛を嘲笑の的にしていない」「LGBTを腫れ物のように扱う事が実は一番の差別なんだよね」「僕自身もサンフランシスコに2年以上住んで、たくさんのLGBT友達と遊んでた」「LGBTを特別視するのはやめよう」などと主張するツイートがありました。これに対して、「私は当事者です。轟さん知らなかったけど試しに見てみて、”わたしは“もう見ないなと思った。そして、いろんな意見があるだろうけど、“わたしは”もうロコンドを使わなくていいやと思った。「特別視をやめる」ではなく「差別をしない」と言ってくれた方がよいです」とか、「わかってないですね。轟さんは同性愛を嘲笑の的にしてないというけど、その轟さんのゲイを模した言動にみんな笑ってるよね。サンフランシスコで流れたら一発アウトですよ」などのコメントが付きました。
 上記の松岡さんも、こちらから始まるツイートで、田中社長のコメントに反論しています。「当事者はこうした社会の偏見により”異常””気持ち悪い”などのスティグマを貼られ続け、周囲にカミングアウトすることはできず、学校でのいじめや職場でのハラスメントを経験したり、さらに希死念慮の割合は異性愛者よりも6倍高いという調査結果もあります」「『LGBTを腫れ物に扱うべきではない』という反論されることが多々ありますが、既にLGBTは、例えばカミングアウトしても腫れ物として扱われたりまたはいじめやハラスメントを受けることが少なくない状況です」「こうした侮蔑的な表現が再生産され続けることで、上記のような生きづらい状況が続いていることも事実であり、LGBTを特別視しないことは、こうした事実を無視することとは違うのではないかと思います」「『I have black friends論』というものがあります。『私には黒人の友人がいるから差別意識はない』と言いながら『黒人の多くは犯罪者だ』など差別的な言動をすることを指します」「『轟さんは差別じゃない、そんな風に扱うことが差別だ』と憶測で断言するのではなく、LGBTを取り巻く社会の現状について適切な知識や認識を持っていただけますと幸いです」
 ほかにも、ゲイの方(「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告の方)から「同性愛者をキャラクターにしちゃいけないんじゃなくて、“まだ”笑いに出来る段階まで社会が成熟していないんだよ。なぜ日本では多くの同性愛者がカミングアウトできない・しなくていいと思うか、少しは考えてほしい」などの声が上がっています。

 企業のみなさんには、特定の性的指向や性自認(や性別、人種、民族、出自、身体的特徴、年齢など)の属性を持つ人々を偏見やステレオタイプでもって面白おかしく誇張したキャラクターを企業PRに採用した場合、当事者の方たちにどのように受け止められるのか、ということを今一度お考えいただければ幸いです。

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