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「足立区が滅びる」発言の白石区議が謝罪し、問題発言を議事録から削除しました

 発言撤回と謝罪を求める3万3000筆超の署名が提出され、白石区議が20日本会議で謝罪することになりましたのニュースでお伝えしていたように、「同性愛が法律に守られているという話になれば区は滅ぶ」などの発言が問題視されていた東京都足立区の白石正輝区議(79)が10月20日、区議会本会議で謝罪しました。

 東京新聞の記事(動画)によると、謝罪のコメントは以下の通りです。
「まずもって9月25日の私の一般質問において、議員として私の差別的な表現と受け止められる発言があり、不快な思いをされた方、傷つけたすべての皆様に対しまして、この場を借りてお詫びを申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」
「一般質問を振り返りますと、LGBTと少子化問題を結びつけた私の価値観を主張した部分が2点、また結婚においては、『普通の結婚』という自分の価値観を押しつけるような不適切な表現があった点、『足立区は滅びる』といった点につきましては差別的な発言と受け止められる表現であったとあらためて認識しております。これらの部分については発言の撤回をさせていただきたいと思います」
「このたびは私の認識の甘さにより、たくさんの方々の心を傷つけ、苦しめてしまったことに対して深くお詫び申し上げますとともに、今回の発言の重さを反省し、今後はLGBTでお悩みになられている方々への性の多様性を受け入れられるよう、努力して参りたいと思います」
「最後になりますが、私の発言により不快な思いをされた方々、傷つけたすべての皆様、また、ご心配とご迷惑をおかけした足立区民の皆様方に対して心からお詫びを申し上げます」 



 ハフィントンポストによると、この日は朝から足立区民が区役所前で抗議のスタンディングを行ない、議会の傍聴席は定員オーバーに。抽選に外れた傍聴希望者が区役所1階に設置されたモニターで議会の様子を見守ったといいます。
 傍聴券を求めて議会を訪れた足立区在住の高校生は、白石区議の発言は学校でも話題になっているといい、「白石議員が何を話すか直接聞きにきたかった」「本当に心から謝罪をするのか、議会の人に言われて謝罪をするのか、しっかり見たいと思った」と語ったそうです。
 差別問題に取り組む学生団体「Moving Beyond Hate」も、傍聴に訪れました。報道で白石区議の発言を聞き、メンバーからもすぐに「許せない」「何かアクションを」と声が上がったそうです。代表の東京大学2年生・トミー長谷川さんはLGBTなどに関する差別発言を行ってきた自民党の杉田水脈衆議院議員に言及し、「ああいった発言が許されてきたことが、今回の白石議員の発言につながった部分があるのではないか」「謝罪だけでなく、今後こうした発言がされないよう、自民党には対策を求めたい」と党としての対策を求めました。


 白石区議は、問題となった9月25日の区議会本会議の一般質問での発言について、「L(レズビアン)やG(ゲイ)が足立区に完全に広まってしまったら、子どもは一人も生まれない」「LだってGだって法律で守られているじゃないか、なんていう話になったのでは足立区は滅んでしまう」など述べた主に3箇所の発言の取消しを議会に申請しました。異性間で結婚して子どもを産むことを「普通」と表現した箇所も、「普通の」のみ取り消すよう求め、いずれも認められました。
 白石区議が議長宛てに取消しを申し出た発言は以下の【】内です。

【しかも加えてですね。性の多様化だとか、LGBTと言われて、性の自由は尊重しようという地方自治体があちこちに今生まれつつある。私は人間の生き方ですから、本人の生き方に対して干渉しようとは思いません。LであろうとGであろうと、本人の生き方に干渉しようとは思いませんけれども考えてください。こんなことはあり得ないことですけれども、日本人が全部L、日本人の男が全部G、次の世代生まれますか。一人も生まれないんですよ。1000年とか200年じゃない。次の世代を担う子どもたちが1人も生まれない。本当にこんなことでいいんだろうか。】

もう一つ、これは教育長にお伺いしたいんですが、【先ほど取上げたLGBTの問題。BとTについては、これは生まれつきのこともありますから、必ずしも、ここでいろんなことを言うべき事ではないのかもしれません。でも、L、レズとG、ゲイについてだけはもしこれが足立区に完全に広がってしまったら、足立区民いなくなっちゃうの、もう100年とか200年の先の話じゃない。私たちの子どもが一人も生まれないということですから。もう次の時代、30年後か40年後にいなくなっちゃう。そのことを考えたときに、】性の多様性とか性を尊重する、そのことはわかります。そのことはわかりますけれども、これを学校教育の中で取上げたときには、【普通の】結婚をして、【普通に】子どもを産んで【普通に】子どもを育てることがいかに人間にとって大切なことであるか。

【いやLだってGだって法律で守られてるじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう。】


 発言の議事録からの削除については、「消してしまうのではなく、残して、二度と起きないようにするべき」といった意見も上がっています。

 メディア上ではその後も、白石区議の発言に対して様々な声が上がっていました。

 ジャーナリストの古田大輔さんは、「異性愛者に対して「同性婚が法制化されました!」と言っても、異性愛者が「じゃあ俺、明日からゲイになろう!」とはなりませんよね? 逆もそうです。ゲイの方たちが、「やっぱり俺、女の人を好きになろう!」とは、ならないですよね。だから、少子化とはまったく関係ない話です」「今は同性パートナー同士や、同性婚をしている人たちの間で子どもを育てている方が増えてきている。むしろ少子化を改善していくためにはプラスなのでは?」と、いいことを言ってくれています。

 ライターの赤木智弘さんは、少子化の抜本的な対策を取らずにきたのに、LGBTにその責任を押し付けている、と指摘しています。

 長年ジェンダー問題に取り組んできたジャーナリストの治部れんげさんは、「こういう人に意思決定を任せていたら、地域が滅びますよ。『「男女格差後進国」の衝撃』という本の中にも書いたんですけど、人口が減っていたり、経済的に立ち行かなくなったり、労働力が減っている地域って、昔ながらの保守的な価値観を残しているところが結構ある。そうするとやっぱり、若い人が嫌になって出て行ってしまうんです。若い女性が戻ってこないとか、男らしさを押し付けられることに違和感を覚えるような男性が「ちょっと無理」みたいな感じになったり。多分、この区議の発言ってそういうことと同じ枠組みにあると思う」と指摘しています。虹色ダイバーシティの村木真紀さんとの対談で、「同性愛者が増えると少子化が進む」論への反証としてもデータが必要なのに国勢調査でカウントすらされない、といった多岐にわたるお話になっています(詳細はこちら

 タレントでエッセイストの小島慶子さんは『AERA』の連載で、白石区議への批判について「多様性が大事だという人たちは、『性的少数者は受け入れ難い』という意見を多様性の一つとして認めようとしない。それは独善的だ。正しい知識を学べと言うのは上から目線だ」などと叩く人たちについて、「批判は「上から目線」ではありません。なぜこんなに抗議の声が上がるのかを知ろうとしない態度こそ独善的で傲慢です」「こういう時に必ず出てくる「差別に反対する者こそ差別をしているのだ」という意見は、差別を傍観し、少数者の口をふさぐ態度です。本気で分断に橋をかけたいなら、必要なのはまず川にたたき落とされて溺れている人を助けることです。突き落とした者を擁護することではありません。自分は差別と無関係だという傲(おご)りに強い憤りを覚えます」と語っています。

 一方、同じ『AERA』では、再生数13億回のママYouTuberによる「今回の件で多様な価値観を認めていないのは、区議ではない」「白石区議は、性の多様化やマイノリティについての教育と同様に、ノーマルな結婚や出産の意義も教育しないと少子化に歯止めが効かないという話をしています」と擁護するような記事が掲載され、新たに炎上しています(現在は削除されていますが、「性的な趣向」という言葉も出てきたそうです。「ノーマルな」という言い方も、現在は「一般的な」に修正されていますが、本質的には同じことです)
  
 謝罪、撤回(議事録からの削除)で「一件落着」とするのではなく、まだまだ世の中には白石区議と同種の発言をしてしまう人が(公人や影響力のある人の中にも)大勢いるわけですから、セクハラやパワハラのように防止策を講じることを義務付けるとか、やはり何か、社会に広くLGBT差別を禁じるような仕組みが必要なのではないでしょうか。そういう意味でも、LGBT平等法の早期制定が望まれます。

 

参考記事:
LGBT“差別”発言、東京・足立区議が撤回し謝罪(TBS)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4106364.html
「LGBT足立区滅ぶ」区議謝罪(共同通信)
https://www.47news.jp/5396174.html
性的少数者差別、足立区議が発言を謝罪 「多様性を…」(朝日新聞)
http://asahi.com/articles/ASNBN4DWDNBMUTIL04F.html
「足立区滅びる」発言を謝罪 自民区議「傷つけたすべての皆様、足立区民にお詫び」(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/62991
足立区議、同性愛への差別発言を謝罪、撤回。「認識の甘さによりたくさんの方々を傷つけた」(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f8d7fc5c5b66ee9a5f1ef33
足立区議の性的マイノリティ差別発言で読み取れる時代の変化(NEWSポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20201014_1603956.html/2
小島慶子「性的少数者への差別や偏見は『多様性の一つ』ではない」(AERA)
https://dot.asahi.com/aera/2020101500019.html
再生数13億回のママYouTuber「本当の意味での多様性とは?」(AERA)
https://dot.asahi.com/dot/2020101400046.html

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