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ダボス会議で世界的な企業7社が「世界のLGBTIの平等に向けたパートナーシップ」を設立

 先月、スイスのダボスで行われた世界経済フォーラム(ダボス会議)で、アクセンチュア、ドイツ銀行、EY、マスターカード、マイクロソフト、オムニコム、セールスフォース・ドットコムの7社が発起人となり、「世界のLGBTIの平等に向けたパートナーシップ(Partnership for Global LGBTI Equality)」を立ち上げました。これは、グローバルサプライチェーン内を含む全従業員の人権擁護に取り組むようグローバル企業に呼びかける数年越しのキャンペーンで、グローバル企業各社が事業展開先の国々にある性的指向関連の過酷な法律や慣習に対し異議を唱えるよう促すものです。
  
 現在、世界の25ヶ国で同性婚が認められている一方、72ヶ国では同性愛が犯罪とされ、うち8ヶ国では極刑が科される可能性があります。そうした国々の多くでは、性的マイノリティの国民に対する暴力を防ぐどころか、国の指導者自らが加害者となっています。例えば、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)によると、ロシアのチェチェン共和国では2017年から、ラムザン・カディロフ首長の下で治安当局が「同性愛者に対する粛清」を行なってきました。ゲイと疑われる男性を非強制収用所に投獄し、拷問を加え、そこで死んだ人もいれば、家族の元へ返されて(一家の恥であるとして)殺された人もいたと、命からがら国外に脱出したゲイたちは証言しています。
 チェチェン以外にも、イランや北朝鮮などで死刑にされたという報告が上がっていますし、インドネシアやマレーシアのように最近、鞭打ち刑が実施された国もあります。
 こうした問題が世界の外交の場で話題に上がることはほとんどありませんでしたが、2011年12月、ヒラリー・クリントン米国務長官(当時)がジュネーブの国連支部で「同性愛者の権利と人権は全く別のものだという人もいる。しかし実際には、両者はひとつで同じものだ」「女性であること、あるいは人種、宗教、部族、民族の面で少数派であることと同じように、LGBTであるからといって人間性が損なわれるわけではない。よって、同性愛者の権利は人権であり、人権は同性愛者の権利だ」と宣言し、転機となりました。同じ年には、国連人権理事会が性的指向・性自認に基づく暴力や差別に対峙する決議を初めて採択しています。
 そこから8年が経ち、各国政府はこのメッセージを拡大させ、外交問題として頻繁に取り上げるようになっています。しかし、政府による外交だけでは世界規模の進歩を実現するには不十分であり、民間セクターもまた重要な役割を担っていることは明らかです。だからこそ、「世界のLGBTIの平等に向けたパートナーシップ」と世界経済フォーラムが果たす役割は極めて重要な意義をもつのです。
 多国籍企業は、グローバル化がますます進む今日の経済で大きな役目を負っています。こうした企業は、ビジネスを展開する国々の政府に大きな影響力を発揮するとともに、こうした差別的慣習が経済にもたらす悪影響を人々に知らしめるために一役買うこともできるからです。

 国連エイズ合同計画(UNAIDS)と医療経済学者のエリック・ラモンターニュ氏が2017年に発表した試算によると、LGBTI差別(ホモフォビア)が世界経済に与える損失は、最大で年間1000億ドル(約11兆円)に上ります。この認識は、今回のダボス会議でグローバル企業7社が協力した理由のひとつになっています。
 アクセンチュアのサンダー・バント・ノールデンドは「LGBTIの受入れは対人関係の視点から正しいことであるだけでなく、ビジネス上の必須事項でもある。なぜならCEOたちは、平等の文化が信頼やイノベーション、さらにはビジネスの成長につながることを理解しているからだ」と述べました。
 世界経済フォーラムと「世界のLGBTIの平等に向けたパートナーシップ」は、2020年までに同フォーラム参加企業50~100社の協賛を得ることを目標に掲げました。
 この取組みは、2017年に国連が発表したLGBTIに関する行動基準「Standards of Conduct for Business」に基づいています。この行動基準は、企業が従うべき人権と方針の枠組みとなるものです。
 「世界のLGBTIの平等に向けたパートナーシップ」に賛同する企業は第一歩として、グローバルサプライチェーン内の提携企業を含む全従業員に対し、LGBTIの平等と包摂(インクルージョン)を確保する必要があります。企業はこれまで、サプライチェーン内の工場や農場での労働基準の順守について無干渉主義をとり、海外サプライヤーにその責任を負わせてきました。
 さらに、難しいながらも同様に重要な問題として、自国の同性愛者を迫害するイランやサウジアラビア、アフリカ諸国などの政府に立ち向かう方法を見出す必要があります。21世紀のビジネスにおけるグローバルリーダーシップは、この重要課題にも取り組まなければなりません。
 
 
参考記事:
世界大手7社、LGBTIの人権擁護呼び掛け ダボス会議で画期的宣言(Forbes JAPAN)

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