REVIEW

LGBTとハラスメント

「SOGIハラ」について解説した本の決定版とも言うべき一冊です

 LGBT法連合会については弊社のニュースでも度々言及してきました。LGBT差別禁止法の制定を、という主目的に沿って、全国のLGBTが具体的にどんな困難に直面しているのかという膨大な実例を集め、リスト化したり、法の制定を求めて運動し、国に対して提言も行うなど、(同性結婚式や自治体の同性パートナーシップ証明制度などの華やかなニュースに隠れてしまっていたかもしれませんが)地道で実直な、最も信頼性や正統性の高い仕事をしてきた組織です。神谷悠一さんは、その事務局長を務めています。昨年のLGBT-Allyサミットにもご登壇いただきました。
 2020年6月から施行されたパワハラ防止法にSOGIハラとアウティングも盛り込まれたということは再三にわたってお伝えしてきましたが、具体的にどういうことがSOGIハラに該当すると考えればよいのか、企業としてどういう取組みが求められるのか、という話は、なかなかわかりやすくまとめるのが難しいものがありました。(後藤も携わらせていただいた)『はじめよう! SOGIハラのない学校・職場づくり』が、学校も含めてSOGIハラの基本的な捉え方や豊富な事例をまとめた本でしたが、パワハラ防止法関連で言うと、この『LGBTとハラスメント』が決定版となるでしょう。神谷悠一さんと、今やLGBTQのトップ・インフルエンサーである松岡宗嗣さん、LGBTQの未来を担う「次世代のホープ」が放ったホームランのような作品です。
  
 特筆すべきは、ストレート・シスジェンダーの方たちが職場でやってしまいがちな「勘違い」のパターンを的確に整理し、リスト化している点です。(『職場のLGBT読本』も含めて)これまで、LGBTQの基礎知識について、職場でのLGBTQ施策の考え方と実践、内外の先進事例、企業の担当者へのインタビューといった事柄について書かれた本はいろいろありましたが、あからさまな差別だけでなく、よかれと思ってやってしまうような「勘違い」についてもうまくまとめた本は、ほとんどなかったと思います。日頃からたくさんの事例を把握し、当事者としての問題意識をもった優秀なフィルターを通して分析できたからこその成果だと思います。
 特に、LGBTの話をすると「いやいや、私は特に差別しないし、気にしてないよ」とおっしゃる方が、実は「かなり対応が難しい人」だという指摘は、とても鋭いと思いました。気にしていないから「何もしなくていい」「困難の原因になっている職場の問題を変えるつもりはない」というスタンスの表明になっている、一見ポジティブですが、無関心の表れだったりするというのです。
 
 厚労省の調査でも職場でカミングアウトしているLGBTは約1割と出ていましたが、職場でSOGIハラが横行し、制度的にも守られていないうちは、カミングアウトは困難であり、アウティングは恐怖であるという当事者のリアリティは、ストレート・シスジェンダーの方にはなかなか伝わりにくいものがあります。そういう「伝わっているようで伝わっていない」ところに、よくある「勘違いのパターン」という切り口から挑戦したのがこの本である、と「おわりに」で述べられていますが、その挑戦は見事に成功を収めていると言えます。

(後藤純一)


LGBTとハラスメント(集英社新書)
著者:神谷悠一、松岡宗嗣

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