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南アのクィア・アーティストが写真界のノーベル賞を受賞

 南アフリカの写真家・活動家のザネレ・ムホリが、世界最高峰の写真賞のひとつとされるハッセルブラッド国際写真賞を受賞しました。ムホリはノンバイナリーで、南アフリカをはじめ世界各地で暮らすクィアの黒人に焦点を当てた作品で知られます。


 写真界の「ノーベル賞」とも称されるハッセルブラッド国際写真賞は、アーティストの写真芸術における先駆的な功績と、その芸術作品が次世代のフォトグラファーにもたらした影響について称える賞です。
 ハッセルブラッド財団は、ムホリの作品を次のように評しています。「ザネレ・ムホリの写真は、構図や光の扱いといった視覚表現の面で卓越しており、モノクローム表現と照明を通じて、強さともろさの両方を宿した巧みな視覚言語を生み出している。また、偏見と差別に異議を唱えながら、オルタナティブな歴史を視覚的に表現しているポートレート作品は、ムホリをクィアの視覚文化における中心人物へと押し上げている」
 受賞に際してムホリは、公式声明の中で「この賞は、私ひとりのものではありません。私に自らの物語を託してくれた多くの存在、名前、そして歴史なくして、受賞することはできませんでした。ウムラジから、黒人のLGBTQIA+の人々が自由に存在するために闘い続けるあらゆる場所で暮らす人々へ──今回の受賞は、私たちの人生が見られるに値するものであることを示しています。統計としてでも、影としてでもなく、ひとりの完全な人間として」と語りました。

 JAPAN ARTnewsによると、ザネレ・ムホリは1972年、まだアパルトヘイト下にあった南アフリカに生まれました。繊細でありながら政治的な切迫感に満ちているムホリのポートレート作品は、抑圧の構造を背景に生まれているといいます。穏やかなモノクロ表現と、強いコントラストの照明によって写し出される被写体たちは、鑑賞者をまっすぐ見返します。「ムホリが手がける作品の多くは記念碑的な性質を帯びており、南アフリカの歴史の本流から排除されてきた物語の象徴として機能している」

 2018年、US版ARTnewsのインタビューでムホリは、南アフリカを形作ってきた多様な歴史を照らし出したいと語っている。自身の作品に参加した活動家やドラァグパフォーマー、希望を胸にする若手アーティストなど、偏見によって社会の周縁へと追いやられてきた協働者たちについてムホリは、「こうした人々こそ、歴史をつくっていくのです」と述べています(ドラァグパフォーマーのような人々こそが歴史をつくっていくという言葉、シビれますね)
「私はファインアートを作るために写真を撮影しているわけではありません。南アフリカの視覚表現の歴史に語りかけ、表現が一般とは異なるがゆえに歴史に組み込まれない人々に向けて、コンテンツを作っているのです。私自身もそのひとりだと言えるでしょう。だからこそ、“専門家”に依存することなく、当事者による、当事者のために、そして当事者について作られたコンテンツ制作に取り組んでいます」
 

 ザネレ・ムホリは日本ではそれほど知られていないかもしれませんが、その作品は各地で展示されてきました。2017年の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」でも展示されましたし、昨年秋の秋田の「ミネバネ!」展では千秋美術館がある複合施設「アトリオン」の出入口に大きくフィーチャーされていました。2021年には恵比寿映像祭で「アクティヴィズムとしての写真表現 ー ザネレ・ムホリを紐解く」というオンライン特別講座が開催されています。
 今後もどこかで展示される機会があると思いますので、ぜひご覧になってみてください。

 
 
参考記事:
ザネレ・ムホリがハッセルブラッド国際写真賞を受賞──「われわれ黒人クィアは統計でも影でもない」(JAPAN ARTnews)
https://artnewsjapan.com/article/65453

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