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来年度の全国学力テストの性別欄に「どちらにもあてはまらない」「回答しない」が追加されます

 文部科学省は3日、多様な性への配慮として、来年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)における性別欄の選択肢に「どちらにもあてはまらない」「回答しない」を加えることを決めました。


 全国学力テストは毎年度、小学6年と中学3年を対象に実施されているもので、来年度は毎回行なわれる国語、算数・数学に加え、3年ぶりに中学の英語が行なわれるそうです。
 3日に行なわれた有識者会議では、国際的な学力調査で同様の対応がすでに行なわれていることや、国の方針で性的少数者に配慮すべきだとされていること(政府の男女共同参画基本計画などで統計での多様な性への配慮が求められている)などを理由に、性別欄の選択肢「男性」「女性」に「どちらにもあてはまらない」「回答しない」を加えることが明らかにされました。ただし、性別による意識差などを調査するため、性別欄の選択肢自体は維持するそうです。

 出生時に割り当てられた性別と自認する性別が異なる児童・生徒は(未成年は法的性別変更ができないため)学校生活において、さまざまな困り事に直面しがちですが、これまで全国学力テストに性別を記入する欄があることでプレッシャーや苦痛を感じ、安心してテストを受けられない児童・生徒もいたはずで、今回、その障壁が一つ取り除かれることになったと言えそうです(自認するジェンダーを周囲に言えていない児童・生徒にとっては、この性別欄への回答自体がカミングアウトの強制につながる恐れもあります。性別欄自体を廃止すべきだという声も上がりそうです)

 
 性別違和ゆえにさまざまな困り事に直面するトランスジェンダーの方たちの人生。学齢期だけでなく、成人してから後も、法的性別変更が叶ったらよいのですが、そうでなければ、あるいは、自認する性別が典型的な男/女に当てはまらないノンバイナリーの方などは、ずっと男/女しかない性別欄への記入に躓き、苦痛を感じ続けることでしょう。そうした当事者の苦しみを解消するため、自治体や公立高校などで、性別欄削除の取組みが進められてきました。
 
 自治体では2010年代から、公的文書から不要な性別欄を削除する動きが広がっています(例えば東京都杉並区と世田谷区が2017年、職員採用の申込書から性別記載欄を削除しています

 高校について言えば、すべての都道府県の公立高校で、受験生本人や保護者が記入する入学願書の「性別欄」が削除されています(2019年入試で大阪、福岡の2府県が始めて以降、全国へ広がり、最後に東京都が2023年入試での廃止を決めました)

 就活でも、性別欄をなくしてほしいとの要望を受けて2020年にJIS規格の履歴書の様式例が削除され、代わりにコクヨが性別欄のない履歴書用紙の販売を始め、翌年には厚労省が性別欄に男女の選択肢がない履歴書の様式例を作成しました(性別欄にあらかじめ男女の選択肢は入れず「記載は任意」としていて、「未記載とすることも可能です」とも注記されています)
 ユニリーバ・ジャパンのように、応募フォームから性別欄を無くし、選考の過程で性別を不問とする先進的な企業も現れました。2023年には履歴書やエントリーシートで顔写真・性別記載を不要とする「ブラインド採用」が少しつずつ増えている、との報道もありました。

 
 今後も社会のさまざまな場面で、不要な性別欄がなくなっていくこと、そのような取組みが進んでいくことを願います。
 


参考記事:
学力テスト性別欄、「どちらにもあてはまらない」「回答しない」追加…多様な性に配慮(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20251203-GYT1T00378/
来年度全国学力調査 英語スピーキングテストを分散実施 性別欄四つから選択(日本教育新聞)
https://www.kyoiku-press.com/post-303848/

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