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横浜のSHIPがDV被害男性やLGBTQの一時保護所を開設へ

 先月、「男性やLGBTQのためのDV・性暴力・虐待被害電話相談」を開設した神奈川県のNPO法人SHIPが、DVなどを受けた男性やLGBTQなどのための一時保護所(シェルター)を開設することが報じられました。
 
 
 SHIPの代表・星野慎二(シンジ)さんは、2002年12月に任意団体「横浜 Cruise ネットワーク」を設立して以降、ゲイ・バイセクシュアル男性向けのHIV予防啓発に取り組み、2007年には神奈川県の助成を受けてコミュニティセンター「かながわレインボーセンターSHIP」を開設し、HIV検査、カウンセリング、電話相談、LGBTQの居場所づくりなどの活動を行なってきました。2012年にはNPO法人化して団体名を改称し、「SHIP にじいろキャビン」を設立、当事者支援だけでなく、教職員向けの啓発資材を作成したりという活動も行なってきました。2015年に横浜弁護士会人権賞を受賞しています。
 そのようにしてさまざまな方たちから相談を受けてきたシンジさんですが、ときにはDVや性暴力の被害に関する相談を受けることがありました。特にトランスジェンダーの方の被害が深刻だそうですが、しかし、そういう方を保護するだけの経済的な余裕はなく、シンジさんは「何もできなかった。性的少数者は家族と関係が悪化するケースが多く、経済的に自立できないと逃げる場所がない」と語っていました。
 
 都道府県は困難女性支援法やDV防止法で「女性相談支援センター」の設置が義務づけられ、これらの施設でDV被害者らの一時保護をしていますが、神奈川県によると、対象は文字通り(シスジェンダーの)女性に限られ、これまで男性を受け入れたケースはなく、性的少数者の利用もなかったそうです。「男性の声の上げづらさ」という問題もあり、内閣府が23年に実施した調査では、配偶者からDV被害を受けたことがあると回答したのは男女ともに25%前後と大差がなかったにもかかわらず、どこかに相談したとの回答は男性が女性の2/3程度にとどまっていたそうです。シンジさんは、その背景に「男は強く、一家の大黒柱であるべきだ」という性規範が潜んでいるといい、実際、亡くなった知人の男性もそのような性規範に縛られたのではないかと考えられるふしがあったといいます。制度があっても性規範で利用をためらってしまうという現状に問題意識を持っていたシンジさんらは、県の基金事業に応募し、補助金を得て、DVや虐待などを受けた男性や性的少数者への総合支援に着手しはじめました。先月には社会福祉士や臨床心理士に無料で相談できる専用窓口を開設し、電話や対面で相談を受け付けることにし、今は被害者の自立を支援するために一時保護所(シェルター)を作ろうと、物件探しなどに奔走しているところです。
 シンジさんは、亡くなった知人のことなども思いながら「性別や性自認に関わりなく、誰もが自分らしく安心して暮らせる社会になってほしい」と語りました。

 


参考記事:
【横浜市】NPO「SHIP」、性的少数者の一時保護所開設へ LGBTQや男性の暴力被害支援で電話相談開始〈横浜市中区・横浜市西区・横浜市南区〉(タウンニュース)
https://www.at-yokohama.net/news/4840

DV被害男性や性的少数者の保護所、来年2月開設へ 横浜のNPO(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20251228/k00/00m/040/308000c

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