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Bリーグで初めてカムアウトしたジョシュ・スコット選手がプライドセンター大阪を訪問しました
Bリーグ「トライフープ岡山」に所属し、今年5月にカミングアウトを果たしたジョシュ・スコット選手がプライドセンター大阪を表敬訪問し、今後の協働の可能性について話したそうです。
ジョシュ・スコット選手は米コロラド州出身で、2018年に来日し、琉球ゴールデンキングスなどでプレーした後、2020年から23年までB1宇都宮ブレックスに所属し、不動のセンターとしてチームを支え、21-22シーズンのリーグ優勝に大きく貢献しました。その後、契約満了に伴い、横浜ビー・コルセアーズに移籍し、現在はトライフープ岡山に在籍しています。
今年5月3日、ジョシュ・スコット選手は自身のInstagramに英語でバイセクシュアルであることをカムアウトする投稿を行ない、その後、13日には日本語でもメッセージを投稿しました。メディアではほとんど取り上げられていないのですが(当編集部も気づかずにいたのですが)宇都宮ブレックスでの貢献に恩義を感じていたのでしょう、下野新聞がニュースにしていました。
「これが私。ありのままでいることに、ためらいはない」と題されたInstagramでの日本語のメッセージでは「周りが違和感を抱かないように、周りの人々の感覚に自分を当てはめようと、本来の自分を偽り、葛藤を抱えながら、暗闇の中で長い時間を過ごしてきました」が、でも「それももう終わりにします」と、「自分の本来あるべき居場所に身を置くために、無理に自分を抑え込んだり妥協するようなことは、これ以上したくない」と、さらに、ここ数年、「差別や脅し、ハラスメント、そしてさらに事実と違う噂に静かに耐えて」きたことも明かしながら、「本当の自分を隠さず生きるようになった」と綴られていました。さらに「誇りも、声も、努力する姿勢も、人間性も、価値観も、才能も、何一つ私は失ってはいません。むしろ、もっと深い情熱と、さらに大きな力を得ました。痛みや暗闇を経験した分だけ、それ以上の愛とサポートにも出会ってきました」「たとえこの旅の意味がまだわからなくても、確かなことが一つあります。「光は必ず闇に勝つ」ということ、そして「真実と愛は、憎しみや恐れよりもずっと強い」ということです」と語り、本来の自分を隠して暮らすことを余儀なくされている人たちへのエールも送っています。素晴らしいコメントでした。
虹色ダイバーシティの村木真紀さんのInstagram投稿によると、ジョシュ・スコット選手がつい先日、プライドセンター大阪を訪ね、選手としてのストイックな日常やカミングアウトのことを話してくれて、スポーツ環境をもっとインクルーシブなものにするための前向きな協働の可能性も見えたようです。
ジョシュ・スコット選手にお会いした感想を村木さんにお聞きしたところ、「とってもナイスな方でした。地方では自分らしくいられるコミュニティを見つけることが本当に難しかったそうで、プライドセンター大阪みたいな場所は素晴らしい、と話してくれました。カレッジバスケットボールでスター選手でしたが、キャリアに集中したいと練習に打ち込んだそうです。今のチームはとても雰囲気が良く、サポーティブだそうです」とのコメントをいただきました。
また、村木さんが別のSNSで紹介していたように、Outsports(五輪に出場するOUTアスリートの情報を発信していることで知られるLGBTQスポーツメディア)にも今年10月、ジョシュ・スコット選手のカミングアウトについての記事が掲載されていました(インタビューではなく、寄稿というかたちでした)
コロラドの保守的な地で育った彼は、大学のときに「他の男子たちと違っている」自身のセクシュアリティのことに気づき、「たぶん自分は地獄に行くだろうという思い」を抱き、また、「NBAのキャリアに影響するだろうか?」との恐怖に苛まれたといいます。20代半ばまでそんな感じで、2019年、日本でのセカンドシーズンで膝に大怪我を負ったため、手術を受けるために帰国し、そのとき、以前の大学のチームメメイトが自殺したという悲報に接しました。彼女はアラナ・チェンと言い、14歳の頃からコンバージョンセラピーを受けさせられていたのです。彼女の名前は今や、LGBTQへのメンタルヘルスケアのサポートを行う団体の名前にも冠されています。彼女の葬式の後、彼は、自身の未来への不安から、「自分が何者かをはっきりさせる時だ」と悟ったそうです。「バスケには感謝してる。けど、そこは、僕がデートしたりやなんかを必要ないこととするような場所でもあった」
怪我が治って日本に戻り、2022年、チームを優勝に導いた彼は、腐ったリンゴがロッカーに入れられていたり、間違った噂が立てられたり…といういやがらせに直面し、カミングアウトを決意しました。
すでに何人かの仲のいい友人や家族にはカムアウトしてきて、「みんなたくさんの愛で受け止めてくれた」そうです。ただ、公にカムアウトするまでには時間がかかりました。
「今はだいぶよくなっている。インスタの投稿にもポジティブなリアクションが寄せられていて、本当にありがたいことだと感じている。大学のコーチは特に素晴らしく、Rocky Mountain Equality(コロラド州の若いLGBTQの支援団体)ともつながった」
「新しいチーム、トライフープ岡山と契約した。順調だ。バスケを別とすれば、僕は19歳の少年のような気持ちだ」
「いろんな意味でエンパワーされた。大体は満足してる。以前のストレスが嘘のようだ」
記事中では、虹色ダイバーシティをはじめとする日本のLGBTQ権利擁護活動のことにも触れられています。日本では「カミングアウトしたアスリートは本当に少ない」けれども、「多くの日本の人たちはリスペクトをもって接してくれる」と彼は綴っています。
そして、自身と同様、カミングアウトへの不安を感じている人へ「怖いよね。でも、そういう不安の向こう側にたくさんの愛があるってことを知ってほしいな」とエールを送ったあと、「ついに僕は未来を見つめられる地点に辿り着いた。本当にワクワクするよ」と記事を結びました。
Outsportsの記事でも述べられていましたが、世界的に見てもプロバスケットボールプレイヤーでカムアウトしている方は本当に少なく※、そんななか、日本のBリーグで優勝経験も持つスター選手がカムアウトしたことは画期的で、歴史的なことです。しかもジョシュ・スコット選手が欧米よりももっとプロスポーツ選手のカミングアウトが難しい(現役で活躍する選手の中ではほとんどいない、特にゲイ・バイセクシュアル男性はほとんどいない)日本でカミングアウトを決意してくれたことに胸を打たれます。InstagramやOutsportsでのメッセージで語られた言葉も本当に素晴らしいです。
今後、日本のスポーツ界がLGBTQインクルーシブに変わっていくための運動において、彼が大きな貢献をしてくれるのではないかと期待されます。
※歴史的なジェイソン・コリンズ選手のカミングアウト、元選手のヒル・理奈さん、アイザック・ハンフリーズ選手など
参考記事:
「自分を隠さず生きる」 ジョシュ・スコットがバイセクシャル公表 元ブレックス 前回優勝の立役者 SNSに応援コメント(下野新聞)
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/1111352
Pro basketball player feels 19 again after coming out publicly(Outsports)
https://www.outsports.com/2025/10/10/24120125/josh-scott-basketball-coming-out-day-bisexual-gay-lgbtq-japan/


