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ブラジルで同性婚が顕著に増加
ブラジル日報によると、昨年の同性婚の件数が前年比8.8%増の1万2187件に上り、過去最高を記録しました。そこには婚姻に対する考え方の多様化が影響を与えていると同日付『オ・グローボ』紙などが報じているそうです。
地理統計院(IBGE)が10日に発表した「民事登録統計2024年版」によると、ブラジルにおける結婚生活の平均期間が、2010年の16年から2024年には13.8年に短縮されましたが、離婚件数は初めて減少に転じ、同性婚の件数は過去最高を記録しました。
結婚生活が短縮された背景には、再婚の増加や、結婚そのものに対する価値観の変化があると見られます。過去には結婚生活の継続が重要視されていましたが、現在では離婚後の再スタートを選ぶ人が増えているようです。
離婚件数が減少に転じた理由としては、共同親権の増加や、離婚後も共同で育児を行うケースの増加が寄与していること、また、離婚に対する受容度の高まりもあるようです。
同性婚の増加が顕著で、2024年には前年比8.8%増の1万2187件が記録され、女性カップルの結婚がそのうち64.6%を占めています。ブラジルでは2013年に最高裁の判断により同性婚が認められるようになりましたが、それ以来、最も高い数値となっています。地域別では中西部(28.2%)と北東部(16.4%)が増加率が高く、全体的には都市部を中心に同性婚が広がりを見せているそうです。
ちなみに年間1万2187件という数字は、対人口比で言うと(ブラジルの総人口は2億1200万人〜2億1300万人)約0.0057%です。台湾が約0.0137%(台湾では昨年3205組が同性婚、総人口は2340万人)、イングランドとウェールズが約0.0128%(2022年の統計ですが同性婚が7800件(出典はこちら)、総人口が6085万人)なので、決して多いとは言えません。まだまだのびしろがあるはずです。
2021年のブラジル映画『神はエイズ』によると、ブラジルでは毎年400人のLGBTQがヘイトクライムで殺されていますが(件数だけで言うと世界一です※)、その10倍の3800人が毎年、エイズで亡くなっているそうです。しかし、そのことはメディアにも取り上げられず、HIV/エイズに対するスティグマは40年前のままです。
同性婚は認められているものの、“ゲイの天国”とか“LGBTQ先進国”などとは言い難いものがあります。
※そもそもブラジルの殺人件数は世界全体の約10%を占めるほど多く、2024年には35,010件と報告されています。そのうちの1.14%がLGBTQというのは、ものすごく多いわけではありません。また、LGBTQに対するヘイトクライムとして報告が上がるというのは、法律できちんとLGBTQが保護されているおかげでもあります(ヘイトクライムに重罪を科す法律があるため、警察もきちんと対応します)。クィアフォビアの強い国では、そもそもLGBTQへのヘイトクライムが数字として上がってきません(LGBTQが殺されても問題にならず、警察もきちんと捜査しなかったり取り合ってくれなかったりします)
そんな深刻な状況がありながらも、やはり、法的に結婚の権利(や差別禁止法など)が認められていることは大きいですし、同性婚が認められて10年が経った今になって結婚する同性カップルが過去最高を記録したというのは、(ブラジルはもともと同性婚に不寛容なカトリック教徒が大多数を占める国ですが)社会がだんだん同性どうしの結婚を受け入れるように変化してきたということを物語っているように思われます。
参考記事:
《ブラジル》IBGE=多様化する結婚の考え方=結婚期間短縮、同性婚増加(ブラジル日報)
https://brasilnippou.com/ja/articles/251212-42mangekyou


