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【特例法非婚要件】一審に続き高裁も「合憲」との判断
昨年7月、女性と結婚しているトランス女性の方が戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう求める家事審判を京都家裁に申し立て、性同一性障害特例法の非婚要件の違憲性を問うていた裁判で、大阪高裁が一審に続き、訴えを棄却したことがわかりました。申立人は不服として最高裁に特別抗告しています。
申立人のみきさん(仮名・50代)は小学生の頃から性別違和を覚え、中学生以降、ときどき女性の装いをして過ごしてきたトランス女性で、そのことを妻に交際中から打ち明け、2015年に結婚した後、病院で性同一性障害の診断を受け、戸籍上の氏名も女性名に変更し、女性として暮らしてきました。しかし、性同一性障害特例法では現に婚姻している人に戸籍上の性別変更を認めない2号要件(非婚要件)が課されているため、みきさんは戸籍上の性別を女性に変更することができません。
非婚要件について最高裁は2020年3月、「異性間のみ婚姻が認められている秩序に混乱を生じさせないための配慮で、合理性を欠くとは言えない」などとして合憲と判断していますが、その後、「結婚の自由をすべての人に」訴訟で異性間にのみ婚姻を認めている現行法は違憲だとする判決が相次いでいます。みきさんは、自認する性が尊重されるべきで、現行制度は離婚を強制しているとし、幸福追求権を定めた憲法13条や婚姻の自由を保障した24条1項に反していると訴え、婚姻関係を続けたままでの性別変更を求めたのです(詳細はこちら)
しかし、今年3月、京都家裁はこの申立てに対し、「直ちに憲法に反して無効と解することはできない」として申立てを却下する決定を出しました(詳細はこちら)。みきさんはこの決定について「少数者の権利を守る司法の役割を事実上放棄しているといわざるをえず、極めて不当」だとして大阪高裁に即時抗告していました。
その大阪高裁は、9月25日付で即時抗告を棄却しました。一審の京都家裁に続き、申立てを退けたかたちです。
代理人弁護士によると、大阪高裁は非婚要件について、現在の婚姻秩序に混乱を生じさせかねないなどの理由で設けられており、合理性を欠くとはいえず、憲法に違反しないと判断し、変更後の性で異性と婚姻できるため、婚姻の自由を直接制限しないと判断したそうです。
オンラインで記者会見したみきさんは「私が受けている不利益について一言も触れていない」と怒りをあらわにし、代理人弁護士は「結論ありきで無理のある理論構成だ」と述べました。
当事者団体「TNET」は今回の裁定に関し、「この決定に抗議するとともに、婚姻しているトランスジェンダーの人びとについて、法的な性別変更の道が開かれるよう求めます」と訴える声明を発表しました。
「性同一性障害特例法は、法的な性別変更を認める要件の1つとして「現に婚姻していないこと」を定めています(以下「非婚要件」)。
しかし、戸籍の登録上は「異性婚」の夫婦であって、その一方が性別を移行しているというカップルは少なからずいます。そうした状況にある当事者は、法的な性別変更のために離婚するか、婚姻を続けるために性別変更を諦めるかという、二者択一を強いられています。
今回の決定において、大阪高裁は、非婚要件は異性間の婚姻のみを認めている現在の婚姻秩序に混乱を生じさせかねない等の配慮に基づき設けられたものであり、憲法に違反するものとはいえないと判断して、婚姻している当事者の法的な性別変更の申し立てを棄却しました。
この決定には、以下のような問題が含まれます。
・現時点で、全国5つの高裁が、同性間の婚姻を認めない現行の婚姻秩序を違憲と判断しています。今回の決定はこの点については検討を行わず、現行の婚姻秩序を維持することを前提に申立てを棄却しました。
・今回の決定では、法的な性別変更をした人が変更後の性で異性と婚姻することは可能であるため、婚姻の自由が制約されているとは言えず、したがって、この非婚要件と、2020年に最高裁で違憲と判断された生殖不能要件とでは、権利などの侵害の程度が異なると判断しています。しかし、この論理には、すでに婚姻して家族関係にある二人がその解消を迫られるという苦痛や困難が考慮されていません。
これらの点から、Tネットは、今回の決定を不当なものと考えます。性的少数者が家族との絆を育み維持することを認めない現行の婚姻秩序の妥当性について判断を避け、当事者の権利よりも、現行秩序のもとでの非婚要件の合理性を優先する判断がなされたことは、遺憾と言わざるを得ません。」
裁判はこの後、最高裁へと進みます。最高裁判事のみなさんが、すでに婚姻して家族関係にある二人がその解消を迫られる苦痛や困難を考慮し、みきさんの性別変更を認める適正な判断を行なってくださることが期待されます。
参考記事:
「結婚したまま性別変えたい」“妻のいる女性”の訴えを大阪高裁が棄却 同性婚が認められていない日本で女性になるには『離婚』しか…(MBS毎日放送)
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20251113/GE00069677.shtml
大阪高裁、既婚で性別変更請求退ける(共同通信)
https://news.jp/i/1361507211283907546?c=1179248089549373591
高裁も非婚要件「合憲」 1審に続き性別変更認めず〔京都版〕(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20251114/ddl/k27/040/163000c
【声明】非婚要件を是認した大阪高裁の決定について(TNET)
https://tnet-japan.com/20251113-2/


