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米連邦最高裁が同性婚を認めた2015年の判決を維持
米連邦最高裁判所は10日、同性婚を憲法上の権利と認めた2015年の判断に対する異議申立てを退けました。却下の理由は明らかにされていませんが、以前の判決が覆される可能性も危惧されていたなか、結婚の権利が維持されることになり、歓迎の声が上がっています。
2015年6月26日、米連邦最高裁は「オバーゲフェル対ホッジズ裁判」について同性婚をすべての州で認める判決を下し、全米で婚姻の平等が達成されました。しかしその後、事務官が宗教的信条を理由に同性カップルへの婚姻証明書の発行を拒否するケースが相次ぎました。ケンタッキー州ローワン郡の元郡書記官キム・デイビス氏もそうで、拒否したことに対して憲法に定められた権利を侵害していると訴えられ、36万ドル(約5500万円)の支払いを命じられましたが、判決を不服として最高裁に上告し、最高裁が憲法上の権利を誤って容認したとして2015年の判決を見直すよう主張していました。
最高裁は、2015年の判決で多数派にいた(同性婚を支持した)判事5人のうち3人がすでに退任あるいは死去しており、そのうち2人の後任はトランプ大統領が1期目に保守派の判事を任命し、結果、9人の判事のうち6人を保守派が占めるかたちになっています。そのような状況で2022年、最高裁は人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆しており、そのときトーマス判事が「オバーゲフェル対ホッジズ」判決を再検討すべきだとの補足意見を述べていて、いずれ同性婚を認める判決が覆される時が来るのではないかと危惧されていました。今年に入ってからはトランスジェンダーの米軍入隊禁止などトランプ政権側の対応を追認する判例が相次いでいました。つい先日、6日には、パスポートに出生時の性別の記載を義務付けるトランプ政権の措置は違憲だとして原告側に自認する性別でのパスポートの発給を命じていたボストン連邦地裁の処分について司法省が一時差し止めを要請していたのを承認し、当面、トランプ政権の措置を容認する判断を示していました。※
しかし今回、最高裁は(論争を呼ぶ訴訟の審理を避けるかたちで)判決に関する意見書を出さず、下級審判決を維持しました。
デイビス氏を訴えた原告側の弁護士は、今回の最高裁の姿勢について「同性婚合法の判決はすでに米国に浸透しており、80万組近い同性婚カップルが米国に住んでいる」「同性カップルには憲法上の結婚する権利があり、デイビス氏が判決に反して結婚許可証の発行を拒否したのはその権利を明らかに侵害していた」と述べ、これは結婚の権利に基づいて家族や人生を築いてきた全ての同性カップルにとっての勝利だと付け加えました。
米国最大の人権団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンは最高裁の判断を歓迎し、「今日、愛が再び勝利した。結婚の平等は依然として国の法律として認められている」とのコメントを発表しました。
※バイデン前政権は2021年、出生時と異なる性別でのパスポート申請を可能にするとともに、ノンバイナリーなどの人々への対応として性別欄にM/F以外の「X」を記載することを認めましたが、トランプ政権はこうした取決めを覆し、パスポートに出生時の性別を記載することを定めました。
これに対し、6人のトランスジェンダーやノンバイナリーの人たちが全米自由人権協会(ACLU)を代理人として異議を申し立てる裁判を起こしました。ボストン連邦地裁はこの訴えを支持し、トランプ政権の措置はトランスジェンダーへの不合理な偏見に基づいており、合衆国憲法の平等保護原則に違反すると認定し、原告側に自認する性別でのパスポート発給を命じていました。その後、控訴裁判所は地裁命令を覆そうとしたトランプ政権の申立てを却下し、司法省は最高裁に緊急停止命令を要請していました。
そして今回、最高裁は、「パスポート所持者の出生時の性別を表示することは、出生国を表示するのと同様に、平等保護の原則に反するものではない。どちらの場合も、政府は単に歴史的事実を証明しているだけであり、誰かを差別的に扱っているわけではない」として、継続している下級審での審理が続く間、トランプ政権のパスポート方針を当面維持できると判断しました。ただし、リベラル派の判事3人は全員、「適切な(というより、いかなる)正当化もなしに、再び即座に損害が生じる道を開いた」として、この決定に反対を表明しています。ジャクソン判事は「最高裁はもっとも脆弱な集団に危害を加える政府の介入を容認した」「トランスジェンダーの米国人が、自身の性自認に合ったパスポートを取得できないようにすることで、政府は単にトランスジェンダーの存在は『偽りである』との信念を表明しているだけでなく、そのパスポート政策は原告たちが経験してきたような詮索や時に屈辱的な好奇の目を招くものでもある」と述べています。
参考記事:
米連邦最高裁 同性婚を合憲とした判断に対する異議申し立て“審理しない”(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2280556
同性婚判決覆す要請を却下 合憲判断を維持 米最高裁(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025111100222
米最高裁、同性婚合法化判決の撤回申し立てを却下(ロイター)
https://jp.reuters.com/world/us/ON47BX4CCRJWPNYT5UMQ4D4SVQ-2025-11-10/
同性婚はなお合法、米最高裁が2015年の判決維持-見直し要請審理せず(Bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-10/T5J5P7T9NJLY00
出生時の性別をパスポートに記載 米連邦最高裁判所、トランプ政権の方針を当面認める(日テレ)
https://www.youtube.com/watch?v=5QyFkVcYcpI
アメリカ最高裁 パスポートに記載する性別は「出生時の性別」トランプ政権の方針を認める(TBS)
https://www.youtube.com/watch?v=jQPyHhepCKE
パスポートの性別選択を禁止するトランプ政権方針 米最高裁が容認(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20251107/k00/00m/030/070000c
米最高裁、旅券記載の性別選択禁止を当面容認 トランプ政権方針支持(ロイター)
https://jp.reuters.com/world/us/N6GOMPLC5FKKZIAIFIJOLBIV7U-2025-11-07
米最高裁、パスポート性別記載めぐりトランプ政権の方針容認(The Wall Street Journal)
https://diamond.jp/articles/-/376566


